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刻一刻と変わりゆく自然の表情を写しとめる
〜α7R IIIで奏でる風景の旋律〜

写真家 高橋良典氏

α Universe editorial team

地元、奈良県を活動の中心にして、自然がほんの一瞬だけ見せる奇跡的な美しい表情を追い求める風景写真家・高橋良典氏。今回の撮影で選んだカメラは、α7R III。発売時から使い続けてわかったこと、α7R IIIのポテンシャルを引き出す撮影方法などを語ってもらった。

高橋 良典/写真家 1970年、奈良県生まれ。「自分が生まれ育った奈良を写真に残し、その魅力を数多くの人に知ってほしい」との想いから、大阪のフォトライブラリーで勤務する傍ら撮影に励む。2000年よりフリーの写真家として独立、写真事務所「フォト春日」を設立。風景写真を中心とした作品をパンフレット・カレンダー・観光ポスター等へ提供。また、写真雑誌や出版物への写真提供及び原稿執筆を行う。奈良県の撮影と併行して国内各地にて自然の織りなす旋律をテーマに撮影を続けている。(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員
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明暗部のディテールや階調は引き戻せる。
類まれなダイナミックレンジの広さ

――α7R III発売以来、愛用されているそうですが、使い続けて気づいた魅力はありますか? 最初に使ったときには感じられなかったことが見えてきました。まずは、ダイナミックレンジの広さです。当初から、「広いな」とは漠然と思っていたのですが、使っていくうちに思っていたよりも何倍も広いことを実感しました。風景写真では、明暗差の激しいシチュエーションがよくあって、自分としては、明るい方は白飛びすれすれ、暗い方は黒つぶれ寸前まで追い込んで撮影するわけですが、仕上がった画像を後処理すると、飛んでると感じていたハイライト部分には粘りがあってディテールが残っているし、シルエットになっていそうなシャドー部分にも階調が豊かに表現できていることが多いんです。これだけ幅広いダイナミックレンジをもつカメラはほかにありません。イメージセンサーと画像処理エンジンを自社で開発しているソニーだからこそ、表現できるダイナミックレンジの広さです。

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 25mm,F8,1/8秒,ISO100

例えば、こちらの作品。雲海狙いで出かけて行ったら、偶然に虹が現れました。虹はもたもたしていると、すぐに消えてしまいますから、これはミラーレスの機動性の良さに助けられた一枚ですね。虹の輪郭と雲海のディテールを表現するために、ハーフNDフィルターを使って、ピントは奥の稜線付近に置いています。明暗差の大きい状況でしたが、ハイライト側を虹の明るさに合わせて撮っても、右下の山肌が真っ黒につぶれることなく表現できていました。ただでさえ広いダイナミックレンジを、ハーフNDフィルターを使ってさらに有効活用した作品になりました。

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 37mm,F8,20秒,ISO400

――こちらも明暗差が大きいように見えますが、どのように撮ったのですか? このときはハイライト部分を飛ばしたくなかったので、露出の基準はハイライトに合わせます。すると、当然、暗い部分はより落ちます。ハーフNDフィルターだけでは追いつかないと思ったので、「Dレンジオプティマイザー」をLv2に設定しました。後処理で暗部を起こすと予想通り、ディテールが立ち上がりました。谷底の建物がしっかり出ていますよね。A3サイズにプリントしても破綻はなし。α7R IIIの底力を感じました。 立山黒部アルペンルートで出合った一瞬だったのです。直前まで雨が降って霧に覆われていたのが、突如、晴れ間が現れて雲海も見えてきた。立ち上る噴煙は、地獄谷から湧く温泉です。この地球のエネルギーを感じるような風景を前に、なんとしてでも撮りたいと。でも、明暗差が大きすぎる。昔ならば、諦めていた状況をこのように表現できたのはうれしいですね。

高感度撮影でも階調がなめらかな、
高解像表現

α7R III,FE 16-35mm F2.8 GM 16mm,F8,1/10秒,ISO1600

――こちらは森の中で暗く、撮影条件が厳しそうに見えますが。 霧が立ち込める杉木立の中で、エビネランという花を撮りました。この可憐な花の高さは20〜30cmしかなくて、それでも杉林に向かって伸び上がっていく雰囲気を表現したかったので、カメラの底が地面に付くかつかないかのぎりぎりの位置で構えました。もちろん、三脚は使えず、手持ちです。しかも、1/10秒というスローシャッターで押せたのは、5軸ボディ内手ブレ補正のおかげでしょうし、チルト式液晶モニターがなかったら撮れない構図です。あと、ISO感度は「1600」ですが、ノイズが乗りやすいシャドー部分もすっきり。これまではISO400までが常用感度だと思っていましたが、α7R IIIを使うようになってからはISO1600でも普通に使えますね。

α7R III,FE 70-200mm F4 G OSS 180mm,F16,1/30秒,ISO2000

――さらに上回るISO2000でも撮影されていますが、どのような状況だったのでしょうか。 枝から水面に垂れたつららを近いところから撮りました。絞り込まないとピントが不安になるケースで、絞り値はF16に。つららが複雑に絡みあっている曲線とともに揺れ動く水面の模様を描きたいので、シャッタースピードは1/30秒がぎりぎりのところ。そうすると、ISO2000の高感度に設定するしかない。この写真表現も、α7R IIIでなかったらあきらめていたものです。あとで、全紙サイズ(457×560mm)に伸ばしましたが、ISO400で撮ったものと画質は変わりませんでした。ISO2000でこのように、階調表現が豊かでノイズも発生しない写真を撮るなんて、ひと昔前までは考えられなかったことです。

風景撮影にも「連写」は生かせる。
新たな目で風景を切り取る楽しみが増えた

――ほかにもα7R IIIを使い続けて撮り方や表現が変わったなと思うことはありますか? 最近、連写をよく使うようになりました。じっくりと構えて撮影する風景写真に、速効性勝負の連写機能は必要ないと思われがちなんですが、α7R IIIの秒間10コマの連写機能は使わないと損です(笑)。川面を流れる葉っぱや風に揺れる枝など、自然の中には動いている題材が結構あるんです。従来だったら、カメラの性能的に動いているものにピントを合わせて撮影するのは困難なので、被写体対象からはずしていました。でも、α7R IIIだったら撮れるんですよね。それは、連写性能だけでなく、AF追随性能も優れているから。そういう意味で、α7R IIIを知ってからは、今まで撮れないと諦めていた被写体にも積極的にカメラを向けるようになりました。

α7R III,FE 70-200mm F4 G OSS 200mm,F4,1/90秒,ISO640

――こちらが川面を流れる葉っぱを連写で捉えた作品ですね。 そうです。夏の終わり頃、渓谷で撮りました。水面は日陰で、水面に映りこんでいる木の緑が日向側にあるという条件が、こうした鮮やかな映り込みを実現してくれます。葉っぱはそれなりのスピードで動いているし、水面に映り込む緑の揺らぎの模様も刻一刻と変わるので、2〜3秒の連写で20〜30枚撮りました。AF追随の優秀さもあって、イメージ通りの写真が撮れました。これ、葉っぱの手前側がめくれていてまるで舟みたいでしょ。葉が平べったいと水面の緑に溶け込んでしまって面白くないので、この葉っぱが流れてきたことも含めて奇跡の一枚だといえます(笑)。 下の作品も連写を使って撮影しました。崖の先端から谷底を見下ろして出っ張った岩なんですが、海抜1400mくらいで、高所恐怖症の人はちょっと立てないような場所です(笑)。風がとても強くて、状況が一瞬一瞬で目まぐるしく変わっていく本当にドラマチックな日でした。

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 30mm,F11,1/90秒,ISO400

わたしの狙いは、岩に光が当たり背景がやや影になって、なおかつ雲がいい感じになる瞬間。岩場で踏ん張りながらカメラは手持ちで、連写で200枚くらい撮っています。シャッタースピードは1/90秒ですが、なにせ足元は不安定でしかも強風の中での撮影ですので、ボディ内手ブレ補正がずいぶん助けてくれたと思います。 背景の谷底が真っ黒につぶれると高低差の表現ができなくなるので、どうしても残したかったんですが、α7R IIIだったら、確実にシャドー部分の階調は出るだろうと思っていました。このカメラじゃなかったら、谷底はつぶして暗いところに岩が浮かび上がっている画しか撮れませんでしたね。解像度のすごさは、プリントするとよくわかります。写真展では全倍(600×900mm)に引き伸ばすこともあるのですが、しっかりと解像度は保たれている。ギラギラというか、ぎすぎすした感じは一切なくてクリア。シャープでやわらかい画質が生きています。

作品性を高める解像とぼけの相乗効果
「G Master」レンズが必要不可欠

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 70mm,F4,1/350秒,ISO100

――鳥取砂丘の風紋がとても幻想的に表現されていますね。 台風が来る直前、風が強く吹いていて、砂がささっーと駆け抜けて風紋もころころ変わるんですね。ファインダーをのぞいていると、風景全体が動いている不思議な感じがしました。レンズは「G Master」の「FE 24-70mm F2.8 GM」。ピントは、奥の地平線の光の幅に合わせて、絞りはF4、ほぼ開放にしていますが、α7R IIIの解像度の高さが際立つ絵が撮れました。まずは、ピントが合っている部分のシャープさ。砂粒のひとつひとつが識別できる解像度。そして、手前のぼけ側のやわらかさがいいんですよね。手前側から奥の方まで、砂のグラデーションがしっかり生きているでしょう。シャープさとやわらかさの相乗効果が、作品のクオリティを高めてくれるんですね。まるで砂粒がダンスしているような雰囲気を再現してくれました。

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 28mm,F16,1/30秒,ISO100

――花畑を照らす朝陽が印象的に描かれていますね。 太陽の中心が飛んでしまうのは当然ですが、見ていただきたいのは太陽の周りです。周辺の階調がどれだけ残せるかが大事で、だいたいのカメラやレンズでは太陽の周囲はぼわーっとなって締まりのない写真になってしまいがちです。それでも「FE 24-70mm F2.8 GM」は太陽の周辺から、しっかりと階調表現ができていますし、フレアやゴーストが少ない。今回のような霧のシーン、かつ逆光でも問題ありませんでした。ハーフNDフィルターを使用していますが、α7R IIIとの相性がとてもいいんですよね。フィルターで明部を減光、さらにα7R IIIのダイナミックレンジの広さがカバーしてくれる。明暗差の激しい撮影には難しい状況も、α7R IIIと「G Master」レンズ、ハーフNDフィルターがあれば、きれいに表現できるのです。

光ですら美しく表現できる
「FE 70-200mm F4 G OSS」の威力

α7R III,FE 70-200mm F4 G OSS 111mm,F6.7,1/200秒,ISO100

「G Master」レンズに引けを取らないと、個人的に惚れ込んでいるのが「FE70-200mm F4 G OSS」。光の入り方がすごく好きなんです。光の撮影ってとても難しい。焦点距離、絞り値、そしてレンズの角度がちょっとズレるだけで見え方が変わってしまう。α7R IIIにしてから光を入れ込んだ写真を積極的に狙うようになったのは、EVFのおかげです。少しの違いを確認しながら撮れるのはうれしいですね。ちなみに、このときはレンズフードを外しています。後処理でコントラストをちょっと上げています。

ときには思い切って露出をマイナスに。
αを使っていると新たな表現を探求したくなる

α7R III,FE 70-200mm F4 G OSS 200mm,F16,1/30秒,ISO400

――アジサイの花が暗闇に浮かび上がっているようですね。どのように撮影したのですか? こちらは背景を真っ黒につぶして、妖艶な雰囲気を出したいと思いました。でも、暗部の階調表現に長けたα7R IIIで黒くつぶすには、大胆な補正が必要です。EVFで変化が見られるので、今までだったら、つぶすならば「-1.7EV」くらいでよかったけれど、「-3EV」でやっとイメージに近づいて、「-3.5EV」で、「これだ!」と。この作品も、α7R IIIによって開発された新しい表現のひとつですね。

自然が見せる壮大で素敵な光景を目の前にしても、今までのカメラだったら撮るのを断念していたけど、α7R IIIならば撮れる! α7R IIIだからこそ撮影できた作品を何点か紹介しましたが、わたし自身の中の引き出しはだいぶ増えたし、これからもまだまだ増えそうです。この年齢になって撮影する原初的な喜びを取り戻したこともうれしいですね。自分の写真の世界をさらに広げてくれたα7R IIIとともに、これからも目の前の風景に感じた感動を捉え続けたいです。

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