SONY

BE MOVED RX cyber-shot

Photographer's interview 写真家インタビュー

対談 Photographer × 開発者

写真家 福田健太郎

ソニー株式会社 RX100 IVプロジェクトリーダー 皆見利行

静止画専門の私も魅了された、スーパースローモーション(福田)

思いのままに静止画を撮影することを目指して開発したセンサーが、動画の大きな進化もまたもたらしたのですね。

皆見 そうです。開発を始めた当時、動画カメラマンが一眼レフカメラで動画を撮り始めていて、私たちはその需要はもっと伸びていくだろうと予測しました。そこでRX100 IVは、次世代のプレミアムコンパクトとして、静止画の進化だけではなくて、動画に関する高画質化や高機能化も実現し、一眼レフカメラで動画を撮るカメラマンや映像クリエイターの方にも動画のサブカメラとして使ってもらおうという新しい考えを持って開発をスタートさせました。それを実現するための技術も今回のイメージセンサーの開発に盛り込み、スーパースローモーション機能を実現できました。

福田 RX100 IVには、動画を革新的に提案していこうという姿勢を、ひしひしと感じます。私は静止画を専門にやっていましたので、どうしても動画には腰が引けるというか、未知な部分があるのですが、これはやってみたくなりますね。スーパースローモーションにはびっくりしました。撮るのが楽しくなる機能です。スローモーションで撮った世界を見てみたいという単純な欲を喚起させてくれます。

今回、チョウが羽ばたく姿を撮ってみましたが、すばらしい動感です。現実なのに肉眼では見えない世界。このカメラではじめて見えてくる世界を発見する面白さがありますね。カメラが小さいので、手を伸ばして撮ればチョウがすぐ逃げることがないのもRX100ならでは。例えば、アリの歩いている姿も観察できたりします。ひとつの新しい表現手段を得たという感じです。

皆見 動画撮影においてもこれまで機材が大きくて持って行けなかったところに簡単に持って行けて撮影できるようになると思います。RXの新しいユーザーがもっと増えていってほしいです。

スーパースローモーションの開発で苦労された点はありますか?

皆見 RX100 IVでは撮影時間が2秒と4秒です。すごく短いと感じるかもしれませんが、使い方も考えて提供しています。撮りたいのはどんな場面かというとやはり決定的瞬間ですので、それはいつ起こるかわからない、常に撮り続けるわけにもいかない。決定的瞬間が起こってから録画ボタンを押しても間に合わず、それでは結局使いこなせないのではと思いました。  ではどうやってその2秒、4秒の間にいつ起きるかわからない決定的なシーンを撮るのか。今回導入したのはエンドトリガーという機能です。これは、被写体をフレームに入れておけば、撮りたい瞬間が起こった後に「あ、今のシーンを撮りたかった」と思ったら、そこからRECボタンを押すことで、時間をさかのぼって記録してくれる機能です。

福田 このチョウの動画もまさに、エンドトリガーで撮っています。ずっと構えていて、飛んだ後にRECボタンを押したわけです。

皆見 やみくもにシャッターを押してもチョウが飛ばなかったら失敗です。ですから飛んだシーンを確認してから押す。さかのぼって記録できる。これは安心感があります。このエンドトリガー機能は、実はソニーの業務用ビデオカメラに搭載されているもので、そのノウハウと知見を業務用ビデオカメラの設計チームから伝授してもらったことで実現できました。

ちょっと不思議な機能ですね。
どういう仕組みなのですか?

皆見利行

皆見 動画は常に撮影して内部メモリーに上書きしていきます。そしてユーザーの方がRECボタンを押したタイミングで、その前を録画するのか、後ろを録画するのかをソフトウェアで制御して完成させるわけです。

福田 撮りたいイメージでエンドトリガーとスタートトリガーを使い分けてあげれば良いかな。たとえば、スタートトリガーの場合は、被写体が人間で「せーの」って撮る場合に向いていますね。

業務用カメラだったら分かりますが、この小さいボディーにこの機能を入れるのは難しかったのではないでしょうか。

皆見 そうですね。ソニーの業務用ビデオカメラFS700に搭載されたスーパースローモーション機能が大きな評価をいただきましたが、それに肉薄する機能をRX100 IVの手のひらサイズで実現できたことは本当に良かったと思います。これはソニーがレンズ、イメージセンサー、プロセッサーの基幹部品に加えて、それらの性能を100%引き出すソフトウェアも内製で行っているからだと思います。

福田 自分で撮ってみて意識するようになると、スーパースローモーションは、CMなんかでもたくさん使われていることに気づきますね。

皆見 よく目にしますね。そういった撮影にもRX100 IVを使って頂けると大変うれしいです。

福田健太郎

福田 これをうまく使えるか使えないかで、動画の質は変わってきます。その映像表現の可能性をこの小さなRX100 IVで広げられるというのは、すごく価値のあるものなのではないでしょうか。われわれが見ている時間の流れがまったく変わってしまう世界です。