映像制作機材

正ちゃんの即効!カメラテクニック講座

カメラテクニック講座トップ
臨場感のある映像を作る"被写界深度"の使いこなし方
正ちゃん 今回のテーマは「被写界深度」です。
被写界深度をうまく使いこなすと、映像に深みが増し、被写体に強い印象を持たせるなどの視覚効果が期待できます。特にシネマなどの作品を制作する場合は、この被写界深度の効果と撮影方法を理解することで映像表現の幅が広がります。今回はその基本をご紹介します。

シネマライクに撮れる機能を使っても、平面的な映像になってしまう

タクがビデオ作品の撮影を行っていますが、思うような映像が撮れなくて困っているようです。
タク うーん、HVR-Z1Jのシネマ風に撮影できるという"シネフレーム"という機能を使って、雰囲気のある作品に仕上げようと考えているのですが、撮影した映像を見てみると、なんだかどれをとっても奥行き感のない平面的な感じなんです。全体にピントが合っていることが原因なのかな?
タクがシネフレームの設定で撮影した映像
正ちゃん どれどれ、なるほど、どれもきれいに撮影されているけれど、シーンによっては主題の被写体以外をぼかした方が良いものもありそうだな。つまり、被写界深度を浅くした撮影だ。
ではこの機会に、被写界深度の話をしよう。
被写界深度とは用語解説にあるように、ピントの合う範囲のことをいうんだよ。
以下の映像は、被写界深度の浅い映像と深い映像の例だよ。
被写界深度が深い映像 被写界深度が浅い映像 被写界深度が浅い映像
<被写界深度が深い映像>
ピントの合っている幅が広い
<被写界深度が浅い映像>
手前の被写体にピントが合っている
<被写界深度が浅い映像>
奥の被写体にピントが合っている
3つの映像はシーンとしては同じだけれど、被写界深度を浅く撮ることで、見せたい部分が強調されているんだ。
タクの撮影した映像は、一定して被写界深度が深いんだ。

それぞれを被写界深度の浅い撮影と比較してみよう。
●被写界深度が深い映像。全体にピントが合っている

●被写界深度が浅い映像。手前・奥方向の一部にピントが合っている
それでは、被写界深度はどのような条件で浅くなったり深くなったりするのか、まとめてみよう。

被写界深度が変化する条件

被写界深度が変化する条件
つまり、被写界深度は「レンズの絞り」「被写体までの距離」「ズーム位置」の、3つの条件を組み合せてコントロールするんだ。
ポイントとして、被写体の明るさで変化する「レンズの絞り」を一定にするために、〈NDフィルター〉〈ゲイン〉〈電子アイリス〉など、明るさコントロール機能を使いこなすことも大切だね。
さらに被写体の明るさも、撮影場所の照明条件や、屋外なら撮影の時間帯・天候なども考慮しておくと、狙った被写界深度に近付けることができるんだよ。

被写界深度を浅く撮影する方法

被写界深度を浅く撮影する方法 花だけにフォーカスが合った被写界深度の浅い映像例
花だけにフォーカスが合った
被写界深度の浅い映像例
例えば、日中の明るい屋外で季節の花を強調した被写界深度の浅い映像を撮影する場合、オートで撮るとアイリス(レンズ絞り)が絞り込まれ被写界深度は深くなってしまうので、次の順で被写界深度が浅くなる条件を作るんだ。
●NDフィルターを使用し、絞りが開放寄りになるようにする
NDフィルターを使っても、絞りが開放寄りにならない場合は、電子シャッターを1/60秒より速い値にし、絞りを開放寄りにする。
●ズームをテレ(望遠)側にして焦点距離を長くする
●被写体に近づく

被写界深度を深く撮影する方法

被写界深度を深く撮影する方法 画面全体にフォーカスの合った被写界深度の深い映像例
画面全体にフォーカスの合った
被写界深度の深い映像例
被写界深度を深くすることで、フォーカスミスの少ない撮影を行いたい場合は、アイリス(レンズ絞り)をできるだけ絞る条件を作るんだよ。
●ノイズが気にならない程度まで、ゲインを上げる
●ズームをワイド側にして焦点距離を短くする
●被写体から離れる
基本的に、感度の高いカメラはこのような被写界深度の深い撮影にも適しています。

複数カメラの撮影で、画柄を統一する方法

複数のカメラを使った撮影では、同じ被写体を撮影してもそれぞれのカメラの感度が異なる場合はレンズの絞り値も異なるために、被写界深度が同様にならず、映像切換え時に画柄が統一されない場合があるんだ。
このような時は〈ゲイン〉、〈NDフィルター〉を使って、カメラの感度をいずれか1台に合わせることで、カメラ切換え時もイメージの統一性が保てるよ。
●カメラ1の感度(F5.6)に、カメラ2と3を合わせた例
カメラ1   カメラ2   カメラ3
カメラ1   カメラ2   カメラ3
感度:F5.6   感度:F11

ND1/4
  感度:F8

ND1/2

感度:F5.6


感度:F5.6


感度:F5.6
タク 正ちゃん先生、ありがとうございます。
絞りを開け、ズームアップするとピントの合う幅が小さくなり、狙った被写体が強調されることがわかりました。
正ちゃん それだけでも覚えて使いこなせば、作品の魅力が増すはずだよ。
今回は被写界深度という少し難しいテーマでした。ぜひ、実際に試して画作りの効果を実感してください。フォーカスが絞られることで、イメージの伝達力が高まると思います。
さらにズーミングなどの効果をあわせることで、さらに映像の表現の幅が広がります。きっと、思い描いた表現が作り出せるでしょう。
正ちゃん
次回 "被写界深度"の講座はいかがでしたか。皆さんの作品づくりに、ぜひお役立てください。
次回は、設定編として"ガンマカーブ"をお届けする予定です。HVR-Z1Jのガンマカーブの設定と、DSR-450WSLのさらに細かい設定などをご紹介します。
ガンマカーブの設定はシネマ映像の基本の一つです。今回に続いて作品づくりに関連する重要な講座ですので、お見逃しなく!
カメラテクニック講座トップ