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商品情報・ストアコンポーネントオーディオSS-NA2ES 開発者インタビュー

SS-NA2ES 開発者インタビュー

01 「AR」のコンセプトを受け継いだお手頃スピーカー

「AR」から「SS-NA2ES」へ。妥協しないためにすべてを見直した

質問

「AR」の発売後、次のスピーカーのコンセプトは決まっていたのですか?

加来

「SS-AR2」の後、開発陣で次期モデルについての話し合いをしました。その中では「AR」のブックシェルフタイプといった意見もでましたが、「AR」はその贅沢さから高価な商品になってしまうので、お客様をどうしても限定してしまいます。結果、「AR」のコンセプトをもう少し手頃な価格のスピーカーで実現しようという意見で一致しました。

SS-NA2ESには北欧産のバーチ(樺)材を採用している
SS-NA2ESには北欧産のバーチ(樺)材を採用している

日本の職人の手で木工加工から組み上げまで一貫して行なっている
日本の職人の手で木工加工から組み上げまで一貫して行なっている

質問

これもまた、難しそうな課題ですね。「AR」でできた贅沢はできませんよね?

加来

コストを下げるには、材質や加工に関わるコストを下げる必要があります。結果、もはや木材とはいえないMDFや、生産コストの安い海外生産などを検討しなくてはなりませんでした。実際に試作をしましたが、やはり、そこから得られる音に納得できませんでした。そこで、材料は妥協せずに使えるよう資材調達の方法からすべてを見直す事にしました。たとえば、エンクロージャーに使う樺材は「AR」と同じなのですが、大まかなサイズ加工を海外に移し、最終的にエンクロージャーをつくる胆の工程のみ日本にするとか、ビス1本についても、他カテゴリー製品の部材と一緒に発注するなど、調達方法や調達先を工夫しています。もちろん、多くの関係会社の協力なくしてはできなかったことです。

質問

コストの限界に挑戦しつつ、音は妥協していないスピーカーですね

加来

はい。自信をもって言えますよ。とくに海外調達に際しては、メカ担当者が頑張りましたから(笑)

"自然な発音"の探求。"指向性"へのアプローチ

質問

そんな、「SS-NA2ES」では、新たなアプローチもされていますね?

加来

はい、「SS-NA2ES」では、指向性に対するアプローチを試みています。世の中の多くのスピーカーは、スピーカー・ユニットに使われている振動板の素材の開発や磁気回路の工夫による広帯域化や低歪化などのアプローチは行なわれてきましたが、指向特性についてはほとんど議論がされていません。一般的にスピーカーの指向性はユニットの口径によって決まると考えられているからです。

質問

そんな、指向特性に対してアプローチするきっかけは何だったのですか?

加来

「SS-AR1」の設計を進めている時期に別の開発部門が試作していたスピーカーの音の自然さに驚いたんです。そのスピーカーが「Sountina」(サウンティーナ)の原型でした。水面に水滴が"ポチャン"と落ちる音をデモで聴いたのですが、まるで本当にその場で水滴が落ちているかのように自然に聴こえたんです。これは普通のスピーカーで聞ける音とは別世界な気がしました。自然界の発音と同じように発音元から音があらゆる方向に広がる(無指向性)ことによる自然さなのだと思います。一方で無指向性のスピーカーを2本使用して普段聴きなれたステレオ音源の音楽を聴くと、なんとも不思議な感じに聴こえます。これは、自然界の発音原理とステレオ再生の違いによるところで、ステレオ再生装置で再生されることを前提にマスタリングされているからだと考えられます。そこで、全方位に発音するスピーカーで感じる自然さを、ステレオ音源の再生を歪めることなく、付加することができれば、音楽はより生き生きと再生できると考えるようになりました。

 

スピーカーの指向特性は、低音は広く高音は狭くなっています。自然音はそんなことはなく、すべて同じです。自然さとステレオ再生を両立するには、単に広い指向を目指す(究極が無指向性になります)のではなくて、指向角の狭い高域特性を改善し、指向角の広い低域特性に合わせることが重要と考えられます。低域から高域まで指向角をそろえることで、自然な発音に近づけられると考えました。その実現のために開発段階では、色々な案を検討しました。

質問

今の形の方向になったのはどんなことからですか?

加来

トゥイーターの指向特性を広くするには、ユニットの口径を小さくすればよいのですが、それでは音圧が低くなるので、ウーファーやミッドレンジとのパワーバランスがとれません。そこで、メイントゥイーターをそのままにして、指向角を広げるための小口径アシストツィーターを併用することを考えました。といっても、単純にユニットを並べるだけでは、ユニット間の位相干渉でピーク・ディップが起きることは容易に想像ができます。賢明なエンジニアであれば、やらない方法ですね。(笑)この種の方法でつくられたスピーカーが存在しない理由かも知れません。

音響解析チームの協力が開発の大きな力に

質問

この新しいツィーターの開発は大変だったのではないですか?

I-ARRAY(TM)システム。3つのトゥイーターユニットを適切な位置に配置し広い指向性を確保
I-ARRAY(TM)システム。3つのトゥイーターユニットを適切な位置に配置し広い指向性を確保

加来

色々のレイアウトの試作を繰り返しましたが、思うような特性が得られませんでした。そこで、設計技術センターに協力してもらうことにしました。一眼カメラ「α(アルファ)」のシャッター音等、社内のさまざまな音設計にシミュレーションを通じて参画している部門で、コンピューターシミュレーションの専門集団です。半導体部門に在籍していたころから良く知るエンジニアが在籍していたので、「ユニット間の干渉を解析できない?」とダメ元で相談してみたところ「解析できると思う」と言ったのが協力をお願いしたきっかけです。シミュレーション、試作、実測、試聴を繰り返して、「I-ARRAY (TM) SYSTEM」と呼んでいる、縦に配列した3つのユニットがあたかも1つのユニットのように機能するトゥイーター・システムを開発しました。良く見ていただくとツィーターフレームがフラット面ではないのが分かると思います。微妙な形状により特性を得ているのです。音楽制作者の意図しない特性を加えることなく、自然で心地よい音楽再生をしてくれます。

 

ソニー内に音響解析を専門にする部門があったことは、時間的な短縮も含め開発の大きな力になりました。それから、辛口のコメントをするオーディオ評論家からも、音の自然さ、生き生きとした音楽再生について評価してもらえたのはうれしかったですね。自然な音楽再生が部屋中の空気を音楽で満たしてくれる、そんなスピーカーを実現できたからだと思います。それは、コンサートホールに満たされる音楽を聴いているかのような心地よさだと思います。

音楽製作者の想いをそのままに伝えたい

質問

最後に、「SS-NA2ES」をどんな風に楽しんでもらいたいですか?


加来

「SS-NA2ES」は、音楽を聴くことが好きな方に満足していただけるスピーカーに仕上がったと自信を持っています。幸いなことに、仕事柄、多くの音楽製作者と接する機会があります。1枚のCDには演奏者や収録するエンジニアの音楽に対する情熱がたくさん入っています。私は、この「作品」を奏でるオーディオ機器に、自己主張は必要なく、ディスクに入っている素晴らしい音を、そのまま正しく自然に再生することが大切だと思っています。それは、製作者側の思いを伝えるために、オーディオ機器は存在しているからです。ぜひ「SS-NA2ES」を通じて、ひとりでも多くの方に音楽で得られる喜びや感動を味わっていただければうれしいですね。

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