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トラベルフォトグラファーKYON.J氏が捉える
砂漠とサバンナの国・ナミビアの神秘
〜後編/野生動物編〜

Travel Photographer KYON.J 氏

α Universe editorial team

久しぶりの海外への撮影で、アフリカ南西部にあるナミビアに向かったKYON.Jさん。今回の撮影旅ではライフワークとしている「世界の絶景」の一貫として、野生動物の撮影にもチャレンジしたいと初めて「α1」を手にした。今回は、前編の「風景編」に続き、後編としてナミビアで出会った動物たちのありのままの姿を綴った「野生動物編」をお届け。作品とともに、撮影時のエピソードや役立った「α1」の機能などを語っていただいた。

KYON.J/Travel Photographer 中国広東省生まれ。2008年に来日。映画「LIFE!」に心打たれ、インドア派からアウトドア派に。2015年に北海道の雪原で出会った、光り輝く自然の美しさに魅了され、その感動を人に伝えたいと風景写真を撮り始める。 まだ見たことのない世界を求めるうちに次第に世界へとレンズを向けるようになり、2016年は「Beauty of China」、2017年からは「Exploring the World」をテーマに、働きながら大自然の光が織りなす美しい一瞬を追いかけ続けている。 個展・全国巡回展「Amazing Moments」(2017年) 、「Grace of Light」(2019年)をソニーイメージングギャラリー等で開催。写真集『GRACE OF LIGHT』(日経ナショナル ジオグラフィック社)。 目の見えない子供たちに光を届ける寄付プロジェクト「Save the Sight, Share the Light」に取り組んでいる。 https://www.kyonj.com/

フォーカスポイントを捉える速さに驚愕。 動物対応のリアルタイム瞳AFは圧巻の追随性

――海外での撮影をライフワークとしていたKYON.Jさんですが、コロナ禍で長い間、海外旅行ができない状況が続きました。その間はどのような思いで過ごしていましたか? 海外に行かなければ自分の撮りたい作品が撮れないので、写真家としての活動はほぼ休止していました。そんな時だからこそできることをしようと、次の旅の向けての体力づくりや趣味の登山などをして楽しんでいましたね。あとは、過去の作品の振り返り。「この作品はこんな思いで撮ったな」「この写真はもっとこう撮ればよかった」といった感じで振り返ったり、撮影を再開した時はどんな作品を撮ろうかな、と考えたりするきっかけにもなりました。 そう考えると、この期間がなければアフリカには足を踏み入れなかったかもしれません。海外に行けなかった2年半でいろいろな出来事があったので、行動制限などが解かれて真っ先に「行きたい」と思ったのがナミビアでした。決心が鈍らないように、すぐにエアーのチケットを購入。チケットさえ取ってしまえば、後は旅に向けて突き進むだけですからね。そこからナミビアについていろいろ調べながら、旅のプランニングを始めました。 ――ナミビアでは動物撮影のために初めて「α1」を使ったそうですが、率直な感想を聞かせてください。 連写スピードは「こんなに速いの?」と思うくらいの速さで驚きました。私は高速連写にあまり慣れていなかったので、正直なところ「α1」の連写性能にはついていけずにわざわざ連写速度を遅いモードに設定していたくらいです。しかもブラックアウトフリーなので、動物撮影のためにサイレントシャッターにするとどのくらい撮れているのかまったくわからなくて。撮影後に確認すると、恐ろしいくらい「すごい!」と思いました。 とても便利だったのは動物対応のリアルタイム瞳AFです。瞳にピントを合わせたらトラッキングで追随してくれるので、ライオンにチーター、鳥や小さいキツネも目にピントがバッチリと合って、動いても常に目にピントを合わせ続けてくれました。追随するたびに「お〜!」と感動の声を上げるほどでしたね。

飛んで来たペリカンは鳥対応のリアルタイム瞳AFを使って撮影を試みたが、追いかけていくフォーカスポイントに感心しすぎてシャッターを押し忘れたそう。

動いている動物でもしっかり捉えてくれる機能は、動物撮影初心者の私にはとても助かります。動物や鳥に対応したリアルタイム瞳AF、そして最高約30コマ/秒の高速連写で、自分が撮影していることを忘れてしまうくらい集中できたので「すごいモンスターカメラをつくっちゃったな」という感じです。

動物撮影初心者を勇気づけてくれた ファインダー越しに見るクリアな瞳の輝き

――ここからはナミビアで撮影した野生動物の作品を見ながら話を聞かせてください。このかわいい子は鹿ですか? ガイドさんによると、南アフリカに生息しているウシ科の動物、Dik-Dikだそうです。これは大人のDik-Dikですが、大きさが30〜40cmくらいとかなり小さいので、腰を低くしてワンちゃんを撮るような感じで撮影しました。

α1,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II + 2X Teleconverter 400mm,F5.6,1/800秒,ISO320

私の目の前をぴょんぴょん走り回っていて、まるで「遊ぼうよ!」と言っているようでした。敵意はなさそうだと判断して、距離を詰めてしゃがみ、ローアングルで狙った1枚です。光が顔の右側に当たるいい位置に来てくれたタイミングで撮影したのですが、大きな瞳にも光が入って、とても印象的な作品になりました。 瞳をファインダー越しに見ると本当にキラキラ。ファインダーの解像度の高さからか、実物よりもファインダーの中に映っている動物たちの瞳がクリアで、ビックリするほどきれいに見えました。このファインダー性能によって「いい写真が撮れた」と直感でわかり、「もっといい写真が撮れるかも」と勇気づけられるというか、後押ししてくれるような存在だと感じましたね。この作品を撮った後もファインダー越しの瞳の美しさに見入ってしまい、しばらくシャッターを押さずに見ていたほどです。 このDik-Dikは草原を移動しているので、カメラによってはピントを追随する途中で草にピントが合ってしまい、追随が遮断されてしまうこともあります。でもα1はそれがまったくなく瞳をトラッキングし続けてくれました。動物撮影に慣れていない私はこういう機能があることを知らなかったので、かなり感動しました。 ――このチーターは木につかまるというユニークな動きをしていますね。

α1,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 70mm,F2.8,1/640秒,ISO100

日が昇って間もなくの早朝、柔らかい光が後から差し込んでいるタイミングで、チーターが突然木に登り始めたんです。「どうしたんだろう」と思いながらもカメラを構え、手がかわいく見えるいいポーズになり、左目に朝日が入った瞬間に撮影しました。なぜこのポーズをとったのかは、後になってわかります。木の匂いを嗅いで、マーキングの確認をしていたのです。他のチーターの匂いがたくさんついていたらしく、後にこの子もマーキングしていました。 野生動物の撮影をきっかけに、動物の習性なども知ることができてとても勉強になりました。習性を知ればより魅力的な作品が撮れると思うので、今後もじっくりと観察しながら撮影したいと思います。

サバンナでじゃれ合う兄弟のキリンは 思い描いていたアフリカの風景そのもの

――このキリンはどのような状況で撮影したのですか?

α1,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II + 2X Teleconverter 400mm,F14,1/320秒,ISO250

これは自然保護区で撮影しました。保護区は指定のサファリカーに乗ってエリアを巡るのですが、絶対に下車してはいけない、大きい音を出してはいけない、突然立ち上がってはいけないなど、いろいろなルールがあります。ちょうどサファリカーに乗っている時にこの風景を見つけたので、車を止めてもらって撮りました。この2頭がオスかメスかも、関係性もわからなかったのですが、案内してくれたレンジャーが教えてくれたんです。「この子たちは兄弟だよ」と。 彼らは独自で動物たちに名前を付けているらしく、パッと見ただけでオスかメスかを判断でき、個別の名前までわかります。さらに、これから何をするのか、といったストーリーまで話してくれるのでとても頼りになりました。この2頭はお互いに草を食べながらキスをしているようにも見えてストーリー性があり、バランスもとてもよかったので思わずカメラを向けた感じです。自分がイメージしていた「アフリカの風景」そのもので、個人的にはとても気に入っています。 ――動物撮影では2倍のテレコンバーターを多用していますが、撮影旅にはよく持っていくのですか? 野生動物を撮影するなら、通常は400mmくらいの望遠レンズを持って行きたいところですが、望遠レンズは大きくて重いので機動力を重視する私の撮影旅には不向きです。でも動物に近づけないことも多いですから望遠までフォローしたいと思い、2倍のコンバーターレンズを用意しました。今回の動物撮影ではかなりの頻度で使って満足のいく作品が撮れたので、私の中ではベストチョイスだったと思います。

歴史を物語る傘のような大木が主役。 動物たちが風景に溶け込む大自然を描く

――こちらは動物たちが風景の一部になっているような、KYON.Jさんらしい作品ですね。

α1,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II + 2X Teleconverter 230mm,F16,1/500秒,ISO250

ここは「エトーシャ」というナミビア最大の国立公園です。敷地内にホテルがあるのですが、国立公園の入口からホテルまで車で4時間半もかかるほど広いんです。私はこのホテルに3日間滞在して野生動物の撮影に費やしました。 この傘のような木は園内のあちこちにあり、どれもとても古いものです。幹が太く、木にぶら下がっている枝葉が多いほど古いといいます。拡大するとわかりますが、緑の葉の部分に蜘蛛の巣がかかっているようにモヤッと見えるところがあります。これは鳥の巣です。鷹などのさまざまな鳥がここに巣をつくり、巣が壊れた残骸がモヤッと見えるのです。

なかにはこれだけ大きな鳥の巣をつくられてしまった木もある

上の写真を見てもらえればわかると思うのですが、左側に袋状のものがありますよね。これが鳥の巣です。大小さまざまな巣があるのですが、大きすぎたり数が多かったりすると重さに耐えられずに枝が折れたり、枯れてしまったりする。上の写真の木は半分枯れた状態ですが、シマウマたちと一緒に撮った作品の木はまだ生きています。 作品の左上を見ると鷹が飛んでいるのですが、この鷹も木に巣があるため、ここから飛び立ったタイミングで撮ることができました。車で走っているとシマウマの群れが見えてきて、この木も見えていたのですが、最初はそんなにいい形の木に見えなくて。でも、車が進むにつれてアングルが変わってカッコよく見える角度になったんです。走っている車の中から迷わず連写していたら、ラッキーなタイミングで鷹が飛んでくれたので最高の1枚に仕上げることができました。

厳しい自然の中で共存する動物たちが見せる ドラマティックな夕暮れのワンシーン

――下の作品はとても幻想的な雰囲気ですね。

α1,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 200mm,F4,1/100秒,ISO1250

エトーシャ国立公園内にあるホテルから撮影したものです。ホテルのすぐ近くに動物たちの水飲み場として造られた人工の池があって、水を飲みに来た鳥とサイを1枚に収めました。

ホテルの前にある人工池は夜になるとさまざまな動物が水を飲みに来る

実はこれ、衝撃と感動のシーンなんですよ。動物たちは体内時計がぴったりで、日暮れ前にまず鳥が来ます。上のほうにキラキラ光って見えるのはすべて逆光に照らされた鳥です。この日はおそらく何十万羽という鳥が飛んでいて、羽音がうるさいくらいでした。数が多いので、グループごとに水を飲む順番が決まっているらしく、順番待ちのグループが空で待機しています。とにかく初めて見た光景だったので「自然の力ってすごい!」と感動。そこにのっそりとサイも水を飲みに来て、夕日に照らされた鳥とサイをバランスよくレイアウトした1枚です。 私のように写真を撮る人も、普通にホテルに泊まっているお客さんもいたのですが、みんなひと言も語らずにただ静かに座ってこのシーンを眺めていました。私もアフリカの大自然に圧倒されて、この時もしばらくシャッターを押さずにカメラ持ったまま釘付けになっていましたね。 このホテルは本当に野生動物をたくさん見ることができる最高のホテルで、夜、空気が吸いたいとカーテンを開けたらキリンがいた時はとてもビックリしました。おかげで滞在時間も動物たちを感じることができて大満足です。

ホテルの部屋からも見える動物たち。この日はキリンも姿を見せた

――最近は動画も撮っていると聞きましたが、ナミビアでも撮影したのですか? 先ほど紹介した鳥とサイの作品を撮った時は動画も撮影しました。バタバタと羽音がすごかったことをリアルに伝えたいと思い、音声まで記録できる動画でも撮ることにしたわけです。実はこの場面を撮った時、まず鳥が来て、サイが来て、その後にハイエナも来て、敵対している動物たちが同じ池で水を飲んでいるという感動のシーンがありました。これはしっかり記録して家族や友人に見せたい、という思いから動画を撮った感じですね。 動画は基本的に自己満足のために撮っているので今のところ公開する予定はありませんが、今後も目の前のシーンを音声ごと保存したいと思った時や、写真だけでは伝えきれない魅力的なシーンは動画でも積極的に撮影したいと思っています。

動物撮影を通して見えた新たな風景表現。 転機になることを感じさせた今回の旅

――今回、新たに野生動物の撮影にもチャレンジしましたが、今後の活動に変化や影響はありそうですか? また「動物を撮りたい」というよりは、「風景と動物たちが一体となった世界」を撮りたいという気持ちが強いです。今回紹介したような大きな木とシマウマの群れのように動物が風景の中にいる世界は見たことがなかったので、とても魅力的に感じました。私はこれまでも、絶景の中に車や小さな家を置いてストーリー性を感じさせる作品を撮影してきましたから、今後も動物がメインではなく、雄大な景色の中に野生の動物が生息している、出会った動物を絶景の中に置く、といった形で作品づくりをしていきたいと思っています。そう考えると、今回の撮影旅がひとつの転機になるかもしれませんね。 ――今後、αで撮影してみたい国や被写体があれば教えてください。 一番撮ってみたいのはアラスカの氷河です。ヘリコプターなどのチャーター便で氷河の上まで連れていってもらって、上空から氷河を撮りたいと考えています。もちろん、徒歩移動もしなければならないのでキャンプにテントを張って、そこを拠点としたプランを立てなければ目的の画は撮れないでしょう。そのため時間も費用もかかりそうです。でも地球温暖化が進んでいてアラスカの氷河も姿を変えていくと思うので、氷河がまだ生きているうちにぜひ行きたい! 実は3年前からずっと行きたいと思っていて準備だけは少しずつ進めているので、絶対に実現させたいと思います。

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