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トラベルフォトグラファーKYON.J氏が捉える
砂漠とサバンナの国・ナミビアの神秘
〜前編/風景編〜

Travel Photographer KYON.J 氏

α Universe editorial team

大手企業で会社員として働き、忙しい合間を縫って世界の絶景を撮り続けているKYON.Jさん。ここ数年は海外に出ることが難しく活動が制限されていたが、2022年5月、久しぶりに海外への撮影旅へ。向かったのは、小学生の頃から「いつか行きたい」と思っていたアフリカ南西部の国・ナミビア。普段は風景をメインに撮影しているが、今回は野生動物を撮ることができる絶好の機会ということで、動物撮影にも挑戦することを決意。そこで、普段から使っている「α7R IV」に「α1」を加えた2台体制で撮影に挑んだ。 ナミビアの撮影旅を、前編(風景編)、後編(野生動物編)の2つの記事で紹介。前編ではKYON.Jさんの個性が際立つ風景作品を紹介しながら、初めて足を踏み入れたアフリカの印象などを交えて、撮影エピソードや役に立ったαの機能などを語っていただいた。

KYON.J/Travel Photographer 中国広東省生まれ。2008年に来日。映画「LIFE!」に心打たれ、インドア派からアウトドア派に。2015年に北海道の雪原で出会った、光り輝く自然の美しさに魅了され、その感動を人に伝えたいと風景写真を撮り始める。 まだ見たことのない世界を求めるうちに次第に世界へとレンズを向けるようになり、2016年は「Beauty of China」、2017年からは「Exploring the World」をテーマに、働きながら大自然の光が織りなす美しい一瞬を追いかけ続けている。 個展・全国巡回展「Amazing Moments」(2017年) 、「Grace of Light」(2019年)をソニーイメージングギャラリー等で開催。写真集『GRACE OF LIGHT』(日経ナショナル ジオグラフィック社)。 目の見えない子供たちに光を届ける寄付プロジェクト「Save the Sight, Share the Light」に取り組んでいる。 https://www.kyonj.com/

雑誌で見た油絵のような風景が実在するのか。 それを確かめるためにナミビアへ

――海外への撮影旅は久しぶりと聞きましたが、旅先にナミビアを選んだ理由は? 実は、小学5、6年生の時からナミビアは憧れの地でした。学校の図書室に雑誌『ナショナル ジオグラフィック』が置いてあって、表紙がナミビアの砂漠だったのです。それを見た時「なんて素敵な油絵なんだろう」と思ったのですが、よく見ると油絵ではなく写真だということがわかって。でもまったく写真には見えなかったので「絶対嘘だ。こんな景色が世の中にあるわけがない」という気持ちが心の中にずっとありました。だから、いつか自分の目で本当にこの景色が存在しているのか確かめに行きたいと思っていたのです。 でもアフリカはかなり遠いし、危険な場所なのでは? という偏見もありました。わからないことが多い国だったこともあり気になってはいたもののずっと後回しにしていて、今まで足を踏み入れずにいたのです。 それでもナミビア行きを決心したのは、人生について考える機会があったからです。人間はもろくて儚いもの、と実感する出来事が続いたため、「どうしても見たい景色があるなら生きているうちに行かなければ」と思うようになって。ちょうどそのタイミングと海外に出られる時期が重なったので、今こそナミビアに行くべきだと決心したんです。 ――現地にはどのくらい滞在していたのですか? 今年(2022年)の5月中旬から18日間を旅行に費やしました。飛行機の往復だけで72時間、ほぼ3日間かかりますからね。現地では危険がないように地元のガイドが付くツアーに参加しました。最初は首都のウィントフックを散策して、ナミビアがどんな国なのかチェック。その後はバスで8時間かけて南下し、ユニークな木が群生しているクイバーツリー・フォレストへ。その後、西へ向かいベイエリアに沿ってナミビアの南端からアンゴラとの国境付近まで北上する、というルートでした。

ベイエリアの砂漠でカメラを構えるKYON.Jさん

――初めて訪れたナミビアの印象を聞かせてください。 かなり予想外でしたね。「危険」「貧困」といった偏見を持っていましたが、ナミビアはドイツの支配下だったこともあって街並みはヨーロッパの小さな町のようにきれいでした。さらにベイエリアを走れば、左側は大西洋、右側は砂漠の風景。ナミビアは「果てしなく続く砂漠」というイメージが強かったので、その爽快な景色も含め、いろいろな意味でそのイメージが覆されました。 それと、勝手に「アフリカはいつも暑い」というイメージがあったのですが、5月くらいのナミビアは早朝は10℃以下で昼間は35℃まで上がります。その温度差に対応できるように洋服もいろいろ持っていきました。

早朝はダウンジャケットが必要なほど寒くなる
昼間は暑くなるので半袖に

神様が見せてくれた奇跡の風景。 砂漠に描き出された光と影のアート

――ここからはナミビアで撮影した作品を見ながら話を聞かせてください。この作品は砂漠で撮影したものですね。

α1,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 200mm,F9,1/400秒,ISO200

この作品は、私がナミビアに行くきっかけになった『ナショナル ジオグラフィック』の表紙の場所に行く途中に撮ったものです。駐車場で車を降りて、砂漠をいくつか越えると目的地に着くのですが、途中の砂漠でこの風景を見つけて思わずカメラを構えました。黒く影を落とした砂丘を背景に、朝日に照らされた木々が際立って見えて、とても神秘的です。この日、極度の体調不良でツアーのみんなに置いていかれてしまい、砂漠を歩くだけでも辛かったので「神様は私を見捨てていなかった」と思った瞬間でした。遅れたからこそ太陽が昇った時に砂漠のど真ん中にいて、このシーンを撮ることができたわけですから。

砂漠の砂は驚くほどサラサラで、歩くだけで体力を奪われる。体調不良時の徒歩移動は本当にしんどかったとKYON.Jさん

朝6時半くらい、朝日が昇った直後ですね。砂漠では風景を撮りながら周囲を見て、動物がいたら撮ろうと思っていたので、風景用として「α7R IV」に「FE 24-70mm F2.8 GM」を、動物用として「α1」に「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」を装着していました。その時は具合が悪く、「α7R IV」に望遠レンズをつけて撮りたかったけれどレンズ交換も面倒で、設定の変更もままならない状態。とりあえず望遠で撮ろうと思い「α1」で撮影したのですが、その時に助かったのがモードダイヤルに設定できる「登録呼び出しモード」です。「α1」でも風景撮影ができるようにと、あらかじめ風景用の設定をカメラに登録しておいたので、瞬時に設定の変更ができ、最高の一瞬を逃さずに撮影できました。 ナミビアは日が昇るのが早く、光と影の状態は刻一刻と変わっていきます。時間が限られている上、体力も考える力もなかったので、「α1」にこの機能があって本当に良かったと実感しました。 撮影が終わって足元を見てみるとすごいものがある、と「α7R IV」に持ち替えて撮影したのが下の作品です。実は上の作品とほとんど同じ場所、同じタイミングで撮影しています。

α7R IV,FE 24-70mm F2.8 GM 24mm,F16,1/200秒,ISO100

よく見ると右上のあたりに木が点在していますよね。ここを望遠で撮ったのが先ほどの作品です。ローアングルで撮ったこちらの作品も美しい砂紋を立体的に見せる光と影が美しく、砂自体が生きているように感じます。「α7R IV」の高解像が、美しさをさらに際立たせていますね。 自分にとってこの2枚は完全に雰囲気が違うものです。別のシリーズの作品になりますが、優秀なカメラが2台あるからこそ、設定の切り換えを瞬時にできたからこそ、2枚とも満足のいく作品を撮ることができたと思っています。

絶好のタイミングで訪れた「夢に見た場所」。 枯木に生命力を宿すような陽光に感動

――上の2枚の作品の後に撮ったのが、『ナショナル ジオグラフィック』の表紙にも使われたこの場所ですね。

α7R IV,FE 24-70mm F2.8 GM 33mm,F16,1/160秒,ISO100

はい、夢に見たシーンです。小学生の時は絶対に油絵だと思っていましたが、リアルに存在しました。ここはデッドフレイという有名なスポットで、このような枯木をたくさん見ることができます。「地球最古の砂漠」といわれるナミブ砂漠の中にある大昔に干からびた沼地で、枯木だけが残る不思議な場所です。 先ほども言ったように、私は体調不良でこの場所に着くのが遅れてしまい、日の出前に着くはずだったのに日が昇り始めていました。道中は「いい時間に撮れなくて悔しい」という思いでいましたが、着いてみたらベストタイミングだったのです。なぜかというと、太陽が昇ったばかりでは後ろにある砂丘で日差しが遮られてしまい、枯木のところまで届かない。だから光と影が印象的な風景写真を撮りたい私にとってはベストタイミングだったわけです。 早く着いても結局このタイミングを待つことになっただろうとホッとして、切れかかっていた体力が一気に回復しました(笑)。枯木はたくさんありましたが、一目惚れしたのはこの構図です。太さも長さもバラバラの木が3本、広がるように立っていて、赤い砂漠を背景にさまざまな形の枯木が見える。一瞬で構図に決めて、光が入るタイミングを見計らってシャッターを切り始めました。日に照らされた枯木がどんどん目覚めていく感じがして、感動しながらも夢中でシャッターを押しました。小学校の頃から夢見ていた場所に実際に行くことができ、さらにいい写真を撮ることができて大満足です。

ストーリー性を感じさせる2本の木。 立体的な雲と黄金色の草原が最高の舞台を演出

――下の作品はどのような状況で撮影したのですか?

α1,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II + 2X Teleconverter 148mm,F13,1/1000秒,ISO200

これは走っている車の中から撮った1枚で、ポイントは天候ですね。アフリカに着いてからは雲ひとつない快晴が続いていましたが、この日は海岸沿いを走っていたせいか雲が大量に出ていました。「今日は太陽が出ないんだ」と思っていたら、雲の隙間から太陽が出てきて。後の砂漠と手前の草原に日が当たり、日陰の境目が一直線になるシーンが5分ぐらい続きました。私は車の中から外を見ていて、「きれいな風景だけど少し寂しいな。木とか動物とか主人公がひとつあれば作品として成立するのに」思っていた時、前方の木に気付いたわけです。 この木を見つけた瞬間に車の窓を下ろし、いいアングルを狙って待機していました。走っている状態で撮影したため、いい瞬間を逃さないように連写したのですが、途中で木が2本あることに気付いて。木が1本と2本では作品のイメージがまったく違います。小さいほうの木が赤ちゃんみたいに大きな木に寄り添っている感じで、1本しかない状態よりもストーリー性を感じる作品に仕上げることができました。さらに拡大して見ると、木の右側に鹿の群れが見えるんですよ。「α1」は有効約5050万画素と高解像なので、遠くて小さくしか写らない動物たちまでしっかり捉えてくれるのがうれしいですね。

オレンジに色づくアフリカのブルーアワー。 星空とともにナミビアの原風景を写す

――こちらの作品は星空まで写しとっていますね。

α7R IV,FE 24-70mm F2.8 GM 24mm,F8,13秒,ISO1600

南半球はふだん私たちが見ている星空とまったく違うので、ナミビアに行ったら星空も撮りたいと思っていました。日本をはじめ、北半球では夕日が沈むとブルーアワーに入りますよね。でも南半球では太陽が沈み切っているのになぜか反射が残っていて、乾いた空気が紫外線などの波長を吸収してオレンジっぽく色づく現象があるそうです。この時も日が沈んでから20〜30分は経っています。ガイドさんに聞くと、「アフリカではよくあることですよ」と教えてくれました。 このような状態だと下の岩場や木はシルエットとなって黒潰れしがちですが、αはダイナミックレンジが広いのでディテールまでしっかり写し出してくれます。合成せずに1枚で明暗のバランスがとれるのは広いダイナミックレンジのおかげです。肉眼では空はもっと暗く、オレンジの部分は明るかったのに、バランス良くきれいに仕上げてくれました。ISO1600の高感度で撮っていますが、このくらいならノイズも気にならず許容範囲です。G Masterは描写力が高いため、星空も鮮明に写し出してくれます。 私は今までずっとα7シリーズを使っているため、進化し続けていることは身をもって感じます。いろいろな場面で撮影時のセッティングについて聞かれるのですが、セッティングについてはほとんど考えたことがありません。なぜなら、αに任せておけば思い通りの写真が撮れるからです。正直、ISOやホワイトバランスはオートも多用します。カメラの設定をαに任せてしまっているからこそ、アングルや構図など考えることに時間を割くことができる。そこが私にとってはαの最大の魅力です。

豊かな経験と新たな価値をもたらすαは 私の人生を彩る大切な存在

――砂漠でαを使って、トラブルなどはなかったのでしょうか? まったく問題なかったです。もちろん砂がついたらブロワーなどで取り去っていましたが、レンズ交換も一瞬なので砂が入ってセンサーに影響が出ることもありませんでしたし、本当にタフなので何の心配もなく使うことができました。

砂漠での撮影では当然の如く砂にまみれるが、トラブルは一切なかったそう。

バッテリーもスタミナがあり、フル充電で1日使うことができたので予備はほとんど使いませんでした。ただ、星空撮影など撮影時間が長くなるシーンでは予備があるほうが安心ですね。 ――改めて、αはKYON.Jさんにとってどのような存在か聞かせてください。 私にとってはαを持って行かないなら旅をしなくてもいい、と思うくらい豊かな経験をもたらしてくれる大事なものです。人生を1冊の本に例えるなら、αはそれぞれのページをつくってくれる存在ですね。αがあるからこそ自分は冒険したくなっていろいろな国に行き、写真を撮ることで記憶や記録として残すことができる。1つの旅がたくさんのページで彩られるため、価値のある濃密な人生が送れていると実感します。これからもαを使い続けて、人生を紡いだ最高の1冊をつくり上げることができたらうれしいです。

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