XDCAM
映像制作機材 "XDCAM"

株式会社 福島放送 様

放送局

2014年7月掲載

ネットワーク報道制作システムSonapsとXDSサーバー送出システムの導入で、報道・制作の効率的なワークフローを構築。

株式会社 福島放送 様

株式会社 福島放送様は、2012年にアーカイブシステムにおいてファイル化を実現し、2013年3月にネットワーク報道制作システムSonapsを、同年9月にXDSサーバー送出システムを導入することで、収録・編集、送出においてもファイルベースのワークフローを構築され、効率的な報道や番組制作に本格的に活用されています。

同社 編成業務局 放送システム担当局長 兼 技術局技術担当局長 高橋正美様、技術局 技術部 松本 準様に、ファイル化/ネットワーク化への取り組み、システム採用の決め手、運用の成果などを伺いました。

なお、記事は2014年4月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

アーカイブのファイル化プロジェクトからスタート


アーカイブのファイル化を実現し、プロフェッショナルディスクの棚管理で運用中。今回のシステム構築で報道支援システムからディスクNo./クリップNo.を検索しプレビューできる体制が完成。再利用にも有効に機能しています。

当社は、かつては専用のアーカイブシステムを保有しておらず、1日の放送分を1本化してHDCAMテープに収録し、保存していました。その数量が増えるとともに、保管場所や素材の管理、運用にも支障をきたすようになっていました。そこに、2011年3月、東日本大震災が発生しました。当社は被災地の放送局でもありましたから、被害の状況や刻々と変化する情報を、迅速かつ正確に地域や全国の視聴者に届ける責務がありました。HDCAMカムコーダーやXDCAMカムコーダーを使って連日、取材・撮影を行いました。結果的に、数千本に達するテープ、ディスクを保管しなければならなくなり、従来の方法では素材の管理、運用 が極めて困難な状況に陥りました。

こうした経緯もあって、アーカイブシステムの構築、ファイル化が急務の課題となりました。そこで社内にプロジェクトチームを発足し、方式やシステムの選定作業を開始しました。総務・報道・制作・編成・技術と全社的なプロジェクトで意見や要望を集約した結果、プロフェッショナルディスクを使った棚管理が良いということになり、XDCAMによるファイル化システムを導入し、運用を開始しました。アーカイブ時にメタデータを入力することで、素材の管理や再利用を含めた運用も、より確実に、正確に、スムーズに行えるようになりました。

ネットワーク報道制作システムSonapsでファイルベース化を促進


編集システムにXPRI NS3チェーン(写真・左)とモバイル端末2チェーンから素材共有サーバー(写真・右)にアクセスして効率的な編集作業を実現されています

アーカイブがファイル化されると、必然的に送出サーバーからのファイル転送、さらには編集・完パケのファイル化が理想的なフローとなってきます。ちょうど報道支援システムやノンリニア編集システムXPRIの更新期が迫っていた時期でもあったことから、編集、送出のファイルベース化を検討することにしました。

懸案事項の一つとなったのが編集機で、XPRI NS以外のシステムも検討したいとの要望がありました。そこで、XPRI NSと他社のノンリニア編集システムの比較・検討、検証作業を行いました。現場から出た結論は、XPRI NSの継続運用でした。長年使い慣れてきていたこと、信頼性・安定性のほか、リニア編集機のような操作感が高く評価されました。

これを受けて収録・編集のシステム検討を開始し、最終的にネットワーク報道制作システムSonapsを導入することに決定しました。XDCAMやXPRI NSとの親和性の高さと、高い機能性を評価しました。インジェスト系統を4系統設け、ベースバンド、ファイル取り込みが可能です。また、回線収録のタイマー運用、プレビューPC端末、収録中でも素材の追いかけ編集をできることなどが決め手でSonapsシステムの導入を決めました。編集端末はXPRI NS3式とモバイル端末2式で、素材共有サーバーを使用して効率的な編集ができるようになっており、情報の共有化やコミュニケーションの強化にもつながると期待しました。

報道や制作からの要望にも柔軟に対応できました。たとえば、これまでマスターまで足を運ばないと見ることができなかった回線収録素材を報道フロアでデスクが確認し,収録、編集の指示を迅速に出せるようにしました。また、PC端末でプロキシAVデータを使ってプレビューできることで、アナウンサーが映像を見ながら原稿読みの練習をすることもでき、送出前の全ての確認を報道フロアのみで一元管理するということを実現できました。

さらに、ハイレゾ映像のプレビューも可能になったことで、背景の映り込みや車のナンバーなどを正確に把握できるようになり、報道だけでなく制作スタッフにも好評です。

Sonaps運用の習熟度を上げてXDSサーバー送出システムを導入


回線収録端末。報道フロアにも配備することで、デスクが支局などから送られて来る素材の確認はもちろん、収録・編集の指示を的確に行えるようになり、より迅速で的確なニュース制作が可能になっています。


スタジオサブ(写真・左)と送出ラック。XDSサーバー送出システムとHDCAMデッキの2系統を用意し、切り替え運用ができるようになっています。ほかに、PDW-HD1500も配備して持ち込み素材の送出などにも対応しています。昼のストレート系のニュース送出の際には、マスターサブから送出しますが、同様のシステムを構築しています。


報道支援システムのキューシートと連動した運用が可能なプレイリスト端末(写真・左)と、送出端末(写真・右)。従来のワークフローを変えずに送出できるように外付けのクリップチェンジボタンを独自に採用しています。

Sonapsは2013年3月から運用を開始しました。稼働当初はまず新しいシステムに慣れ、習熟度を上げる目的で、送出については完パケをHDCAMテープに吐き出して送出する運用のままとしました。この習熟期間を約半年設けて、2013年9月にXDSサーバー送出システムを導入、運用を開始しました。これにより、完パケを送出サーバーにファイル転送するオペレーションを実現しました。もちろん、持ち込み素材などHDCAMテープ送出の機会も少なくありませんので、XDS送出とHDCAM送出を切り替え運用できるようにしています。

XDSサーバー送出システムは、XDCAMStationを有効に活用することで、効率的でコストパフォーマンスに優れた送出システムとなっている点が最大の魅力です。また、システム要件であった他社製報道支援システムとのキューシート連携を実現できたことで、フローの効率化、緊急時の項目差し替えにも柔軟に対応できるようになりました。このことによりオペレートミスも減少し、付加価値の高いシステム導入であったと思います。

また、送出手順の変更は現場オペレーターの手順変更につながるため、障壁もありました。これまで、テープチェンジ担当と実際の送出タイミングを取るディレクション担当が異なっていたため、テープチェンジを忘れてしまうことがありました。その対策として、タッチパネル上で操作できるクリップチェンジを外部に設けたクリップチェンジボタンで行うようにした結果、クリップチェンジを忘れることがなくなりました。これにより、ディレクターは、テロップの入れ替えや送出の指示を従来と同様に行うことができています。

取材・収録のファイル化でトータルワークフローの構築へ

月曜〜金曜の夕方4時53分スタートの「ふくしまスーパーJチャンネル」などを中心に、Sonapsの運用を開始してから約1年、XDSサーバー送出システムの運用開始から約半年ほどになります。この間順調に稼働、運用できていると評価しています。やはり新しいシステムなので、当初はトラブルの発生もある程度は覚悟していたのですが、いい意味で予想を覆してくれたと思っています。

運用の成果ということでは、これまでは、ニュースや番組の内容をマスターやスタジオサブなど限られた場所で、限られたスタッフしか把握できませんでしたが、より容易に共有化できるようになった点が大きいと思います。また、テープ素材を持って走り回ったり、素材確認、編集、完パケ、送出のたびに場所を移動することが少なくなった点など、トータルワークフローの観点で見ると、信頼性の高い、効率的なニュースや番組のオンエアが可能になったと思います。こうして生じたスタッフの余裕が、より精度の高い編集、仕上げなど付加価値の向上にもつながっているのではないかと感じています。

今回のシステム構築により、残す課題は取材・撮影の工程となります。ここに、XDCAMカムコーダーやXDCAMメモリーカムコーダーなどを導入し、メタ連携を有効に使うことができれば、ファイルベースのトータルワークフローを完成することができます。当社にとっても、それが理想形であることは間違いありませんので、これから検討していきたいと考えています。

ソニーには、今回のシステム構築と同様に、当社の運用やワークフローに合ったソリューションや、機器、システムの提案を期待しています。

株式会社 福島放送 編成業務局 放送システム担当局長 兼 技術局技術担当局長 高橋正美様

株式会社 福島放送
編成業務局 放送システム担当局長 兼 技術局技術担当局長
高橋正美様

報道支援システムとのファイル連携を含め、ソニーのSI部門の方々には、当社の要望や仕様に柔軟に対応してもらえたと思っています。また、個別の案件についての説明や提案も積極的に行ってもらえたので、当社の報道や制作の要望や期待にも応えられたのではないかと評価しています。今後、さらに習熟度を上げて、的確なニュース、魅力的な番組を視聴者に提供していきたいと考えています。

株式会社 福島放送 技術局 技術部 松本 準様

株式会社 福島放送
技術局 技術部
松本 準様

システム構築を検討している段階から、リニア編集が果たす役割はまだまだ大きいと想定していました。実際、運用を開始した当初は約5割がリニア編集でした。ところが、使い慣れてくるとともにその割合が減り、現状では約8割がSonapsを使った編集になっています。ファイルベースのメリットがエディターにも浸透してきているのではないかと実感しています。