法人のお客様システムカメラ 事例紹介 音楽ライブ制作に大きな効果をもたらす HDC-5500 / HDC-F5500

音楽ライブ制作に大きな効果をもたらす HDC-5500 / HDC-F5500

株式会社 権四郎 エンジニアリングプロモート部 チーフ VE
奥 祐貴 様

“光学式可変 ND” や “ラージイメージセンサー” など、ソニーのシステムカメラにしかない強みが決定打に

株式会社 権四郎様は、音楽コンサートの収録・中継や、ステージ演出用映像のライブ送出に向けて、2021 年度から 2022 年度にかけて、マルチフォーマットポータブルカメラ HDC-5500 と HDC-F5500、オプションのユーザーガンマ対応ソフトウェア HZC-UG50 ならびにカメラコントロールユニット HDCU-5500 を導入され、運用を行われています。

株式会社 権四郎
エンジニアリングプロモート部
チーフ VE 奥 祐貴 様

音楽コンサート収録・送出業務の拡大に向け HDC-5500 / F5500 を導入

当社では、音楽コンサートを中心に、演出用としてステージ上に設置される大型スクリーンへの映像送出や、DVD・Blu-ray 制作のためのライブ収録・生配信等の制作技術を中心に請け負っています。年間平均で 300 公演ほどに関わっており、収録から送出まで一貫して対応できることを強みにしています。もちろん、収録のみ・映像送出のみなど、単体の仕事もあります。私はチーフ VE として、それらの映像技術全般を統括する立場となります。
これまで当社では、マルチフォーマットポータブルカメラ HDC-2600 や HDC-4300 を中心に、ソニーと共に製作した中継車などと一緒に運用してきました。おかげさまで稼働率も大変高く、自社機材だけでは賄えない場合も多くあります。その場合には、信頼できる技術会社さんに協力を依頼し、当社からは撮影監督などチーフクラスのスタッフ構成で対応するケースもございます。どのような体制でも、「権四郎に頼んでよかった」と、お客様のご期待に一層応えられるよう、自社で対応できる範囲や規模を拡大し、一貫したクオリティを提供するべく、機材の増強を検討いたしました。マルチフォーマットポータブルカメラ HDC-5500 や HDC-F5500 の導入は、このような経緯から検討を開始しました。導入台数としては、2021 年度に HDC-5500 を 10 式と HDC-F5500 を 3 式、カメラコントロールユニットHDCU-5500 を 13 式、2022 年度に HDC-5500 と HDCU-5500 を各6式です。カメラには全てユーザーガンマ対応ソフトウェア HZC-UG50 を追加しています。

多彩な照明演出に強い“グローバルシャッター”が大きな決め手

HDC-5500 を導入した理由として最も大きな決め手となったのは、グローバルシャッター機能の搭載です。コンサートのステージでは、レーザーであったりストロボであったり、さまざまな照明演出が行われます。そういった環境下においても、グローバルシャッターではバンディングやフリッカーが出ることはありません。また、パンなどを行った際にローリング歪みが出ることもありません。HDC-5500 は HDC-4300 と比べて感度が高く、1絞り近く明るく撮れ、多くの場面でゲインアップが不要になることも強みでした。

ライブ収録で大きな効果が得られた HDC-5500 の“可変 ND フィルター”

さらに決定的だったのは、特注で「光学式可変 ND フィルター」を内蔵できたことです。ライブ収録では大きな効果が得られています。(従来型のターレット式 ND/CC フィルターユニットとの交換による装備、ND1/3〜1/256 の連続可変が可能)
音楽ライブ収録では、光源を受けるポジションはアイリス開放での撮影が好まれます。このようなポジションでアイリスを絞ってしまうと、レンズ絞り羽根由来の光芒が発生してしまい、フレアの出方まで変わってしまいます。可変 ND フィルターを使えば、アイリスを開放に固定したままで露出調整ができますので、これらの問題に悩まされることはなくなり、狙ったフレア表現をキープしたまま撮影できるのが大変魅力です。クレーンなどのダイナミックなカメラワークをする場合、露出調整が必要になるケースも多いので、このような撮影シーンでは大きな効果が得られます。したがって、光源を受けるようなポジションには、優先的に HDC-5500 を配置しています。
可変 ND フィルターを使用にすると、最低で ND1/3(約1絞り半)からの調整となりますが、HDC-5500 は高感度であることや、ゲインを上げても S/N 比も良いため、全く気になることなく運用することができています。ぜひ、HDC-F5500 にも搭載できるようになってほしい機能ですね。

“HDC-5500 にしかない強み”が、さらなる導入の決め手に

2022 年に設備追加を検討した際に、マルチフォーマットポータブルカメラ HDC-3200 発売がアナウンスされていましたので、検討対象に加えていました。しかし、HDC-5500 と比較して、可変 ND フィルターが使用できないことや、HDトランクとHDプロンプターが併用できないなどの制約もあり、引き続き HDC-5500 の追加を決断しました。
また、新たに最近搭載された「VF ダイナミックコントラスト UMBRA 機能」も実機で確認しましたが、大変魅力的です。カメラマンが見ているビューファインダー(VF)上の映像のみ、暗部のコントラストを高めることで、VF 上の視認性を高めてくれる機能です。音楽ライブでは、ステージ暗転の際、あらかじめ明転をする前にフレーミングを決め、フォーカス合わせを済ませておくことが求められます。以前は VE とカメラマンが連携してこれを行っていました。暗転したら VE がカメラのゲインアップを行い、カメラマンがフレーミングとフォーカスを合わせ、それが終わったら VE がゲインを元に戻した上で、アイリスを調整して明転に備える、というイメージです。稀にこれらの作業が明転に間に合わずに事故になってしまう例がありました。VF ダイナミックコントラスト機能が使えるようになってからは、カメラマンは自分の好きなタイミングでビューファインダーの映像だけ視認性を上げ、フレーミングとフォーカスを合わせることができるので、VE は明転時に備えたアイリス調整に専念することができます。暗転中の準備時間が飛躍的に短くなることが期待されます。当社もカメラをバージョンアップすることで、今後どんどん活用していきたいと思っています。

待望だった、トーンが合うラージイメージセンサーのシステムカメラ HDC-F5500

最近のライブ映像では、被写界深度が浅い印象的な映像表現を行うために、ラージイメージセンサーを搭載したカメラの使用を求められる場面が多くあります。このようなお客様のご要望に対し、当社では CineAlta 4K カメラ PMW-F55 や、他社のシネマカメラをライブ収録で使用していたこともあります。しかし、これらのカメラは発色もシネマ寄りで、トーン合わせに苦労することがあり、また、別途光伝送装置を用意する必要がありました。HDC-F5500 は、グローバルシャッター機能付きスーパー35mm ラージイメージセンサーを搭載しており、当社で保有している PL マウントのレンズ資産が流用できること。CCU もHDCU-5500 が使用可能であること。さらに、HDC-5500 の姉妹機であるため、「HDC-F5500 ならば、高画質で HDC-5500 ともトーンが合う」ということを期待し、現場での評価も経て HDC-F5500 の導入を決めました。光ケーブル1本で映像伝送ができ、クリアカムインカムも利用できるなど、システムカメラの使い勝手で PL マウントレンズが使えるというのも、現場から好評です。
また、シネマカメラだと、どうしてもアイリス調整がカメラマンによる操作となってしまうため、カメラ間の露出の統一や追従の遅れなどが課題でした。カメラマンは被写体の動きに対するフレーミングやフォーカスのフォローが優先になりますので、どうしてもアイリスフォローが後手になりがちです。その点 HDC-F5500 ならば、PL マウントのカメラでありながら、通常のシステムカメラとして運用することができますので、VE 側から即時アイリスフォローを行うことができます。

被写界深度を浅く撮れる HDC-F5500 はステージ周りに

現場でのカメラ配置は、撮影監督がプランニングを行います。基本的にスタンド前や客席後方、客中 45 度など、ステージから離れるポジションには 2/3 インチイメージセンサーのカメラに箱型レンズや 40 倍 ENG レンズなど、高倍率ズームレンズを装着して配置します。一方、ステージ前やステージ袖、レール、クレーン、といった奥行き感を出せるカメラポジションでは、ラージイメージセンサーを搭載し、被写界深度を浅く撮れる HDC-F5500 を優先的に配置します。
当社ではシステムカメラ以外にも、フルサイズイメージセンサーを搭載した Cinema Lineカメラの FX9 や FX6、FX3 を2台ずつ、FR7 を1台保有しています。FX3 は固定カメラに使用したり、FX9 や FX6 も会場や場面に応じて投入しているほか、カメラマンが上がれないステージ上には FR7 を配置したりしています。収録のカメラ台数としては、30 台以上となることが多く、ドームなどの大きな会場では 40 台以上となることもあります。

ユーザーガンマや LUT を駆使し、Cinema Line シリーズともカラーマッチング運用

色合わせについては、HDC シリーズ間は、HDC-5500 の発色に合わせる調整を行っています。S-Log3 で運用することもありますが、当社独自のユーザーガンマを入れて運用することが多いです。ハイライトを S-Log3 同様に残しながら、暗部は S-Log3 ほど持ち上がっていないカーブで、カラーグレーディング耐性を残しながら、簡便な色調整で仕上げられるよう制作した、ポストプロダクションでの後処理を前提としたカーブになっています。ポスプロさんにも検証をいただきながら仕上げたもので、お客様からもご好評いただいております。Cinema Line カメラにも、これと発色やトーンを合わせた LUT(ルックアップテーブル)を入れています。ユーザーガンマや LUT によって、異機種のシステムカメラや Cinema Line カメラによる混在運用が問題なく行えております。こういった運用はソニーのカメラだからこそ実現することができます。
生放送や生配信においては、このユーザーガンマのままだとコントラストが薄くメリハリのない映像になってしまいますので、スイッチャーの本線出力の後段にグレーディング機を入れることで、アーティストのイメージに合う映像に調整し、伝送に渡しています。

CCU はハーフラックサイズの HDCU-5500 を選択

カメラの使い分けとしては、収録用や配信用には HDC-5500 と HDC-4300 を優先的に割り当てています。HDC-2600 については、主にステージ演出のスクリーン出し用カメラとして利用しています。
HDC-5500 を接続するCCU(カメラコントロールユニット)については、HDCU-5500 を選びました。現場でのカメラ台数が多いことや、都度現場での仮設運用が多いため、コンパクトな 19 インチ3Uハーフラックサイズを選択しました。
HDC-4300 では、CCU に加えて、19 インチラックフルサイズのベースバンドプロセッサーユニット BPU-4000 が必要でしたが、これら全ての機能がハーフラックサイズに収まっています。12G-SDI 信号も直接出力でき、コンパクトで使い勝手もかなり良くなりました。

発色、S/N、ダイナミックレンジ、全てがさらに良くなった HDC-5500 / F5500

HDC-5500 や HDC-F5500 は色味が実際の見え方に近く、印象が良くなったと感じています。また、S/N 比についても、特に暗部で良くなったと感じています。黒が綺麗で、ハイライトの伸びもいい。照明の光などを直接受けたときも、しっかりと階調が残っています。全体的に画質は大幅に向上していると思います。
また、ソニーさんに要望した機能の追加が、バージョンアップで盛り込んでいただけているなど、私たちの声も常に反映をしてくれており、アフターケアにもとても満足しています。当社のカメラマンも皆、HDC-5500 や HDC-F5500 を気に入っています。機材の空きがあれば HDC-5500 から真っ先に使われていく状況です。できることなら全てのカメラをHDC-5000 シリーズで揃えたいくらいで、今後ゆとりが出ればさらなる増備も検討していきたいと思っています。

取材:2023年1月

マルチフォーマットポータブルカメラ

HDC-5500

※ 価格情報については営業担当にお問い合わせください

商品情報

マルチフォーマットポータブルカメラ

HDC-F5500

※ 価格情報については営業担当にお問い合わせください

商品情報

Cinema Line カメラ FR7を中心に
お話いただいたこちらの事例もご覧ください

【FR7導入事例】
思い描くライブ映像表現が手に入る待望のカメラ『FR7』

※[法人向け] カメラサイトへリンクします。