ネットワークカメラ/防犯・監視システム

太田総合病院記念研究所付属診療所
太田睡眠科学センター 様

医療

米国睡眠障害医療のスタンダードを目標にした、精度の高い検査実現の一端をSNC-RZ30Nが担う。

太田総合病院記念研究所付属診療所 太田睡眠科学センター 様


太田睡眠科学センター様 外観

24時間眠らない社会である現代の日本で、ここ数年、急速に注目を浴びているのが睡眠障害医療です。太田睡眠科学センター様は、東京慈恵会医科大学(以下、慈恵医大)と連携し、日本における睡眠障害治療の先駆者的存在である太田総合病院様の付属機関として2004年4月に設立されました。睡眠障害医療を行う上で不可欠である精度の高い検査を実施するために、SNC-RZ30Nで構築されたIPビデオモニタリングシステムを導入しています。

暗視、遠隔操作、ネットワーク利用を条件に、行動監視用カメラとしてSNC-RZ30Nを選出。


所長 佐々木三男先生


耳鼻咽喉科部長 千葉伸太郎先生


主任検査技師 RPSGT 日本睡眠学会認定検査技師 八木朝子先生

太田睡眠科学センター様には、慈恵医大出身の医師陣による学術的基盤と、日本でただひとり米国での現場経験を持つ検査技師による米国スタンダードの視点という、2つの特徴があります。

前者の代表は所長である佐々木三男先生です。佐々木先生は元慈恵医大精神科教授であり、日本の睡眠障害治療のパイオニアとして1960年代から睡眠障害治療の研究を行ってきました。1999年頃から太田総合病院様の睡眠外来に関わっています。
後者は同センターの主任検査技師である八木朝子先生です。八木先生は、全世界に約5000人、日本には50人余りしか存在しない認定ポリグラフ検査技師(RPSGT)の資格を持ち、太田睡眠科学センター様設立にも影響を与えました。
このような状況下で、同センターにおける睡眠医療検査の基準が米国スタンダードに置かれたのは、自然な流れであるといえます。

「睡眠障害医療の先進国はやはり米国ですが、日本は米国より10〜15年遅れているといわれています。米国には、質の高い医療を行うためにはより精度の高い検査を行う必要があるという考えがありますが、日本睡眠学会でも認定施設制度を設けて、睡眠障害治療のレベルをあげようと努力しています。認定施設として認定を受けるには、脳波波形の監視とともに、患者映像の監視を行うことが必須条件です。その理由は、記録精度の向上、行動異常の検出、安全管理を可能にできるからです。監視スタイルに規定はありませんが、実情を考えると遠隔操作と暗視ができるカメラを利用するのが自然です。当センターの設立前に、太田総合病院ではアナログ監視カメラを使用していましたが、アナログ監視カメラは高価であり、複数のカメラを一括操作するには設備全体が非常に大きなものとなってしまいます。当センターは10床ありますので10台のカメラが必要ですが、アナログ監視カメラの導入はコストの面からも、設備用スペースの面からも現実的ではありませんでした。そこで院内LANもしくはインターネットを利用したカメラの導入を検討したのです」と、太田睡眠科学センター耳鼻咽喉科部長の千葉伸太郎先生が、今回のシステムの導入経緯を説明してくださいました。
IPビデオモニタリングシステムは2003年12月に導入され、数ヶ月間の運用テストを経て、センター開設とともに睡眠障害治療検査の監視システムとしてご使用いただいています。

院内LANと光ファイバで検査室に映像を伝送。カメラアングルはRealShot Managerで一括操作。


監視用モニターが並ぶ検査室


RealShot Managerがインストールされた管理用PC

「SNC-RZ30N で構築されたIPビデオモニタリングシステムを選択したのは、赤外線照射器が設置されている真っ暗な個室で患者さんの様子を暗視でき、かつ遠隔操作も行えるカメラという条件を満たしていたからです。数社の製品を比較しました」と千葉先生。

SNC-RZ30Nは10床の各病室に設置され、センター内LANを通じて検査室に並んだモニター10台につながれています。
さらに合併症を患っている患者を配慮し、隣接地にある太田総合病院にも睡眠障害医療検査用のベッドを1床設けています。病院の映像は、光ファイバ回線を利用して太田睡眠科学センターに伝送されます。太田睡眠科学センター内のカメラ映像と病院内のカメラ映像は、どちらもリアルタイムで伝送され、技師によってモニタリングされるとともに、太田睡眠科学センターで一括管理されます。

「当センターでは、月曜日から金曜日までの5日間に、1日8時間のデータを記録しています。解析には約2週間必要ですので、それまでデータを保存しておかなければなりません。MAX11床分ですから膨大な量になります。本来は米国式に倣って脳波データと監視映像を同期させて記録するのですが、ハードウェアの容量などの問題で、現在は別々に記録しています。将来的にはすべて同期させて記録していく予定です」と千葉先生にお話しいただきました。

また、管理用PCにはRealShot Managerをインストールし、カメラのパンやチルト、ズームなどを一括で遠隔操作できるようにしています。RealShot Managerの操作性については、「集中管理しやすいソフトです」とご評価いただきました。

今後は地方病院への監視・解析をサポート。映像処理による検査の発展にも大きな期待。


睡眠障害治療の検査が行われる病室


病室内に設置されたIPビデオモニタリングシステム(SNC-RZ30N)

今後のシステム展開についてお尋ねしたところ、「現在、地方の病院と提携して、検査データをネットワークで当センターへ伝送し、夜間監視や解析のサポートを行う計画があります。各病院で監視を行うためには、たとえ1床しかない場合でも必ず誰かがいなければなりません。しかもその場合、技師がひとりだけいればいいというわけではないのです。この点をネットワークなどでサポートできれば、いま以上に精度の高い睡眠障害の検査が行えるようになります。ここにカメラ監視も加えて、検査機器の生体信号と映像との両面からサポートできるようになるといいですね」と八木先生が話してくださいました。

また、最後にソニーへのご要望をお尋ねしたところ、千葉先生に「現在の映像クオリティのまま、ADSLなどでもデータが伝送できるといいと思います。セキュリティ問題をクリアする必要はありますが、ある程度狭い帯域でも高精細な映像が伝送できれば、患者さんの自宅に機器を一式運んで検査を行うことができます。患者さんの就寝時の環境を変えずにすむので、より正確な検査が行えると思います。合併症の患者さんの場合も、検査のために病室を移る必要がなくなりますね」とお答えいただきました。
さらに「これは未来への希望ですが、監視カメラだけで呼吸の強さや体温、体動などがサーチできるようになると便利だと考えています。検査設備を整えるために、医療機関は巨大な投資をしなければならず、必要だと分かっていてもすぐに用意できるものではありません。一方、日本では睡眠障害の一症例である睡眠時無呼吸症候群の潜在患者だけでも200万人いるのに、そのうち表面化しているのはわずか5万人だといわれています。正式な睡眠障害医療検査には脳波監視が必須ですが、もし映像でそれ以外の情報が確認できれば、この潜在患者のスクリーニングに有効だと思います」と、映像に対する大きな期待をいただきました。