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番組制作「THE世界遺産-パリのセーヌ河岸-」
全編をF35でRGB 4:4:4撮影、一貫してHDCAM-SR制作された初めてのテレビ番組

「THE世界遺産 -パリのセーヌ河岸-」より
 
オンエア前には、東京・銀座ソニービルの「OPUS」にて、記者発表会と試写会が開催されました
2009年10月18日に全国のJNN系列で放送された「THE世界遺産-パリのセーヌ河岸-」は、全編をデジタルシネマカメラF35を使って撮影、HDCAM-SRで制作されました。放送に先立つ10月9日には、東京・銀座ソニービルの「OPUS」で記者発表会と試写会が開催され、プレス関係者向けに、本編映像の試写と共に、番組制作におけるF35の可能性などが紹介されました。
この番組の制作にあたった株式会社TBSビジョン 制作本部 制作ニ部 プロデューサー 河野英輔様、ディレクター 日下宏美様、撮影を担当したフォトグラファー 有田 勝様に、F35採用の目的や成果、今後の番組制作における可能性などを伺いました。
より高品位の映像制作、未来に貴重な映像資産を残すという番組コンセプトから F35を使い、撮影から編集、完パケまで一貫したRGB 4:4:4制作にチャレンジ
 
  株式会社TBSビジョン
制作本部 制作ニ部
プロデューサー 河野英輔様
今回の「THE世界遺産-パリのセーヌ河岸-」でF35を使うことになった発端は、F35の開発陣と番組スタッフとの交流会でした。F35のネガフィルムと同等のダイナミックレンジなど性能・機能面について説明を受ける中で、番組制作における活用の可能性なども論議されました。その結果、機会があったらぜひチャレンジしてみたいという強い思いが生まれ、それが今回の番組制作につながったわけです。

もう一つ、F35を使った番組制作にチャレンジすることになった背景に、「THE世界遺産」の番組コンセプトが挙げられます。放送時間や番組タイトルなどは変わってきましたが、一貫してより高品位の映像制作を目指すこと、そして貴重な映像資産を後世に伝え残していくことは、この番組の変わらぬコンセプトです。映画、CMなどハイエンドのコンテンツ制作に活躍し、実績と評価の高いF35を使ってみたいという思いは、ある意味自然なことであったとも言えます。

 
撮影に使用されたデジタルシネマカメラF35  
F35を使用するにあたり、ただ単純にF35というカメラシステムを使ってみるというスタンスではなく、F35およびHDCAM-SRフォーマットが持つ可能性をフルに生かしてみたいと考えました。そこで、全編をRGB4:4:4撮影し、編集から完パケまでも一貫してRGB4:4:4で制作することで、究極のクオリティーに挑戦してみることにしました。放送という番組制作の中で、F35やHDCAM-SRを使うことで果たしてどんな映像表現が可能なのか、私たちにとっても興味津々でした。

F35が持つ可能性をフルに生かすために撮影地や時期を厳選してパリに決定 カメラカーや大型クレーンでの運用とSR Motionの活用で魅力的な画づくりへ
 
  フォトグラファー 有田 勝様
高精細・高解像度のF35の可能性をフルに生かすためには、ロケ地も重要な要素になります。「絵になる場所」ということでヨーロッパを主体に選定をはじめ、最終的にパリに決定しました。2009年8月末に10日間をかけて撮影を行っています。F35とSRW-1を日本から持ち込み、その他の機器は現地で手配しました。

特にシネマレンズがそのまま使えるF35の特性を生かすために、10種類の単玉レンズのほか、ズームレンズやシフトレンズを用意し、通常の番組取材の工程には無いカメラテストも実施しました。結果的にはカメラテストを行ったことで、その後の撮影が非常にスムーズに進んだと思います。シーンや撮影対象によってレンズを細かく使い分けることで、高解像度でボケ味のきれいな、非常に美しい映像を撮影できました。
基本的にはSRW-1をベース側に置いて、VEが確認・管理する体制で撮影したのですが、カメラカーの先頭で街中を撮影するときや大型クレーンを使って建物の内外を撮影する場合には、F35にレコーダーSRW-1を取り付けて撮影するなど、撮影環境に応じて運用しています。おかげで、画づくりにおける制約が少なく、パリの魅力を高画質で、しかもさまざまな角度から撮影することができたと思います。正直なところ、F35の機動性や操作性について、不安が無かったわけではありませんが、実際に使用してみて、運用の仕方や工夫で十分な機動性を発揮できるということを実感しました。

今回の作品では、単に歴史的建造物をきれいな映像で見せるだけでなく、ストーリー性のある世界観も演出しています。印象派の巨匠クロード・モネの作品世界やオートマタという自動人形などをモチーフにして、19世紀のパリの雰囲気を醸成することができたのもF35やHDCAM-SRだからこそだと思いますし、SR Motionによるハイスピード撮影で、行き交う人々や現代のパリの街並みを柔らかく、情緒豊かに表現することができました。

   
シネマレンズがそのまま使えるF35の特性を生かすため、10種類の単玉レンズのほか、ズームレンズやシフトレンズを用意して、通常の番組取材の工程には無いカメラテストも実施
   
カメラカーで街中を撮影する時はF35にSRW-1を取り付けて撮影するなど、撮影環境に応じて運用。機動性の面で、画づくりにおける制約が少なく、パリの魅力をさまざまな角度から撮影できました
ノートルダム大聖堂のステンドグラスや、オペラ座の天井画も鮮明に再現 F35の高解像度により、パリの空気感や情緒といった繊細な感覚までも表現
 
  株式会社TBSビジョン
制作本部 制作ニ部
ディレクター 日下宏美様
F35によるRGB 4:4:4撮影の第一の成果は、非常にクオリティーの高い映像に端的に現れています。1つのシーン、1つのカットを見るだけでも、その美しさに単純に感動を覚えるほどです。シネマレンズの特性を生かしたボケ味の美しさ、ワイド系のレンズ、たとえば8ミリレンズでもパースが歪むことなくしっかり表現されるなど、スーパー35mm相当の単板CCDを使ったF35ならではの基本性能の高さを実感させます。

この性能は、ノートルダム大聖堂のステンドグラスの映像で生かされています。細かい光や色の再現性が極めて優れており、その迫力と臨場感は素晴らしく、番組にとっても見どころの一つだと感じました。また、オペラ座の映像についても、F35の特性がいかんなく発揮されていると思います。ここは、撮影用ライトの使用が一切禁止され、撮影条件が最も厳しい場所でしたが、歴史の息吹を感じさせる客席の雰囲気、あるいは暗部の階調まで、劇場に設置してあるライトだけで鮮明に捉えることができています。
オペラ座の映像では驚かされたことがあります。周知のように、オペラ座にはシャガールの作品が天井画として飾られています。撮影時のモニタリングや、オフライン編集の時にはあまり気づかなかったのですが、本編集の時にその画を見て、シャガール独特の淡い色使いまでが鮮明に映し出されていたのにはビックリしました。今回の試写会で、このシーンを大型スクリーンで見てみて、改めてその美しさに驚かされました。F35によるRGB 4:4:4撮影のメリットが生きているシーンの一つだと思います。

   
ノートルダム大聖堂のステンドグラスを撮影。F35により、細かい光や色までも再現され、迫力と臨場感あふれる映像に。オンエア前の試写会でも番組の見どころの一つとして紹介されました
   
オペラ座での撮影の様子。撮影用ライトの使用が一切禁止され、撮影条件が最も厳しい場所でしたが、暗部の階調まで、劇場に設置してあるライトだけで鮮明に捉えることができています
高品位の映像だから生み出すことができる感動や喜び、迫力や臨場感を改めて実感 新たにラインアップされたSRW-9000にも注目
今回の作品でF35を使ってみて、番組制作においてもその可能性は非常に大きいと感じています。確かに、放送という前提条件や視聴者の環境を考えると、これだけのハイスペックが必要かといった検討課題は多いかもしれません。しかし、映像資産を後世に伝え残すという私たちの仕事においては、やはり高精細・高解像度の画質は最大の武器となります。クオリティーの高い映像は、それだけで感動を与えるということを、今回改めて認識させられた思いがしています。また、クリエーターのモチベーションをさらに高めるという意味でも、F35やHDCAM-SRを使うメリットがあるのではないでしょうか。これだけ高画質の映像は、撮影や演出にとっても心強い材料となるはずです。

機会があれば、「THE世界遺産」の撮影地や趣向などに合わせて、ぜひ今後もF35を使いたいと考えています。また、新しくラインアップされたHDCAM-SRカムコーダーSRW-9000も、HDCAM-SRフォーマットの特長・魅力を踏襲しつつ、さらに機動性とコストパフォーマンスに優れたカムコーダーとして期待しています。

今回、F35を使うことで、高品位の映像だからこそ得られる感動や迫力喜びを感じましたから、今後、もっと多くの方々にそれを体験していただけるような、そういう一助になっていけたらと思っています。

  「THE世界遺産」
毎週日曜よる6時〜TBS系列にて放送
公式サイト www.tbs.co.jp/heritage/
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