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正ちゃんの即効!カメラテクニック講座

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音で失敗しないための"マイク"のテクニック
正ちゃん 今回はビデオと同じくらいに大切な音の話です。撮影に慣れてきたカメラマンは映像でのミスは少ないですが、音の失敗は少なくありません。音撮りで失敗しないために、マイクのセッティング方法や注意事項をしっかり理解しましょう。

撮影した時の音が撮れていない!?

ビデオデッキの前でヘッドフォンを装着したタクが額に冷や汗を浮かべています。なにやら、あわてている様子。
タク うわぁー、映像はちゃんと撮れているのに、音が撮れていない!!
どうして? あーーーー!!
正ちゃん そのビデオ、この前のアドベンチャー旅行を撮影したものだな。
使ったカメラはHVR-S270Jか。このカメラはオーディオ4ch記録が可能なんだ。
そういえば、そのとき後ろのオーディオコネクターが使いやすいとかで、ch3、4に音声を入れていたみたいだから、4ch再生対応のデッキじゃないと再生できないんじゃないか?
このデッキにつないだら…ほら、聞こえるようになったぞ!
いい機会だから、今日は音撮りで失敗しないための心構えを勉強することにしよう。
卓のように、撮影に慣れてきたカメラマンは映像でのミスが少ないけれど、音の失敗は少なくないからな。
音撮りの機材を1つずつ見ていこう。卓、音撮りの機材を持ってきなさい。

マイクの装着方法

卓 : ワイヤレスマイク一式、ガンマイクが2本で1本はステレオ、もう1本はモノラル。無指向性マイクが1本、それにヘッドフォンにイヤホン。
今僕が持っているのはこれだけです。

機材群

正ちゃん : おおっ、一通りの機材を持っているじゃないか。それでは、まずはよく使うガンマイクから勉強していこう。 卓、カムコーダーにマイクを装着してごらん。
 

(ホルダーに布を詰めて、がっちりマイクをつけている。
キャノンコネクターが半挿しで、ケーブル処理もひどい状態。)

正ちゃん : ほほぅ、このつけ方を見る限り、教え甲斐がありそうだな。
  カムコーダーに付属しているマイクだけでなく、ガンマイクには上下で感度を違えているものがあるんだ。
  これは、レンズの操作音を極力拾いにくくするようになっているんだよ。マイクの取り付け位置がレンズのすぐ上に置かれることが多いからね。
卓のつけ方を見ると・・ゴムのマイクスペーサーで、装着する向きの目印となるUPの文字がかくれているなぁ、ほら、UP面が横を向いているぞ。これじゃ良い状態で音を撮れないぞ。
 

UP面(画像中央)をきちんと上に向けた状態

  それと、マイクホルダーはマイクにカメラ振動を伝えにくくするために、写真のように、マイクを浮かせた状態になるよう、ラバー素材でルーズにホールドしているんだ。 ルーズな状態を嫌うカメラマンが時として下の写真のように布を挟み込んでがっちり固定しているのを見るけど、特にテープ・ディスク記録のカムコーダーではモーターの振動が伝わりやすくなるから、これはNGなんだ。
 
 
マイクのホールド部分(ラバー素材)   布を用いて固定してしまっている様子
  それに、卓、マイクケーブルがロックされていないぞ。
最近のガンマイクに付属されているケーブルは、このジョイント部分の防滴性能、防塵性能を高めるために、ケーブル側のコネクターにゴムパッキンを持つものがあるんだ。だから、最後まできちんと差し込んで、コネクターのロックがされていることを確認しないと、途中でケーブル抜けなんてことにもなりかねないぞ。

上:マイクケーブルがロックされている状態
下:マイクケーブルがロックされていない状態

卓 : ひゃー、まるで、僕のマイクセッティングはダメ出し用のサンプルみたいですね。じゃあやり直してみます。これでどうですか?
 
改善前の装着図   改善後の装着図
正ちゃん : うん、いいぞ。この当たり前のことがとても大切なんだ。

さまざまな温度変化への対応について

タク ところで正ちゃん先生、とても疑問に思っていることがあるんです。
これらのマイクの動作温度は0℃〜50℃と書かれているんですが、屋外撮影では氷点下の場合もありますし、直射日光に長時間さらしたり、夏の車内に長時間放置したりなどしてマイクの温度が50℃を超える場合もあると思うんです。こういった条件下では使えないということでしょうか?
正ちゃん ははは、卓、その動作温度とはメーカーが所定の特性を維持できる温度範囲ということなんだ。だから、出来るだけその温度範囲で使うことが望ましいんだよ。 だからといって、その範囲を超えたら使えないのなら、寒い地方で使えるマイクはほとんどなくなってしまうことになる。 使う側の心構えとしては、仕様書に書かれている温度範囲外で使わざるを得ない場合は、通常以上に音質変化に留意するということになるな。(※)
仕様上は0度以下などの環境では使用できなくなるけれど、それでも使わざるを得ないときはどうしたらいいかをよく知る必要があるぞ。今回は温度変化への対処法に焦点を当てて説明していこう。
(※メーカーの保証していない環境下でカムコーダーやマイクなどをご利用した場合、メーカーの保証対象外となります。)
凍結対策
正ちゃん : まず、凍結対策について説明しよう。湿度の高い室温25度からいきなり屋外のマイナス10度に出てしまうと、マイクは振動板を含めて凍結という問題が発生してしまう。ちょっとした凍結でも、音質は格段に悪くなり、低音から高温の全域で、もこもこした音質になってしまうんだ。
だからといって、急激にドライヤーなどで暖めると、そのパーツを痛めるし、寿命を短くもしてしまう。急激な温度変化は避けたほうがいい。凍結を極力させないようにするしかないんだ。
私がよくやるのは、マイクジャマーを装着して、少しでも温度変化時間を長くするということだ。急激な温度変化を避けることで凍結を少しでも回避しようとすることが大切だぞ。
 
マイクジャマーを装着してない状態   マイクジャマーを装着して温度変化を緩める。
結露対策
正ちゃん : それと、上記と逆の温度変化では結露が問題となる。結露してしまうのは仕方がないことだが、急いで結露状態を回復させようと、ドライヤーを間近に吹き付けてはいけない。 じっくり、時間をかけて結露から回復させるのが一番なんだが、待てない場合は、せめてドライヤーを1mくらい離して使うことを忘れないようにな。

ワイヤレスマイクの注意点

正ちゃん : よぉし卓、次はワイヤレスマイクの注意点だ。まずは、セッティングしてみよう。
ワイヤレスマイクのセッティングで大切なことは何だと思うかな。
卓 : うーんと、まずは電池が充分あることのチェック。それに、混信のない電波を選ぶこと。カメラにつけた場合にアンテナが一番高い位置にあるようにすること。
 
 
カムコーダーに装着した状態   ワイヤレスマイク(UWP-V1)
(左:レシーバー、右:トランスミッター)
正ちゃん : うむ、少しは経験値が上がってきたようだな。だが、達人は以下のことにも注意するぞ。
このワイヤレスマイクは単3電池2本で動くものなんだが、この類のものはアルカリ乾電池で使うように設計されているんだ。だからそれ以外の乾電池を使ったり、種類の違う乾電池を混ぜて使うと駆動時間が少なくなってしまうし、正確な残量が表示されなくなるので、撮影本番で突然の音声断トラブルになる可能性が出てくるんだ。
また、乾電池形の充電池を使うのは意外に管理が難しいので注意が必要だ。多くのワイヤレスマイクシステムの残量表示はアルカリ電池使用時のセッティングになっているから、充電池を使用する場合にはこのインジケーターがあてにならなくなることを知っておく必要がある。基本は、新品のアルカリ乾電池を使うこと。そしてどんな電池を使うにしても、必ずバックアップ用の乾電池は最低でも1セット分は準備しておくことが重要だぞ。
卓 : 僕はエコの観点で充電池を使っているんですが、充電回数を記録しているんです。
正ちゃん : おおっ、卓にしてはすごいじゃないか。充電池を使う場合は、一度決めた組み合わせは変えないことだぞ。 電池の組み合わせを変えずに記録回数を確認すれば、電池の残量をある程度は予測できるからな。
チャンネルチェックするときの電源の入れ方
正ちゃん : チャンネルチェックするときの電源の入れ方も大切だ。初めに電源を入れるのは受信機だぞ。まずは受信機側でチャンネルに混信があるのかどうかをチェックしてから、送信機側の電源を入れるんだ。逆にすると、チェックしている距離が近いから混信があっても気づかなくて、送信機から距離が離れた時点で初めて混信に気づくというトラブルになりかねない。また、必ず本番前に空きチャンネルをメモしておくことを勧めるぞ。撮影途中で混信に気づいたときに、チャンネル切り替えをスピーディーに行うためだ。
それと、受信機側にはイヤホンで受信音声の確認ができるモニター端子があるけれど、本体に接続してからのチェックは、必ずカムコーダー側のイヤホン端子で行うこと。きちんと録音できているかを確認するためにはカムコーダー側で確認する必要があるからな。
卓 : 現場では焦っていることが多いから、チェックに見落としがないように、手帳にチェックリストを作っておこうと思います。
正ちゃん : おっ、それはいい考えだ。マイク関係だけでなく、他の機材でも、チェックリストを作っておくのはいい考えだ。
卓 : えへへ、たまにはほめられるのもいいものですね。
まとめ
今回は、マイクとワイヤレスマイクのセッティングに関する注意事項と、温度変化の環境下での注意事項を扱いました。卓が言っていたように、撮影前の現場では緊張と焦りで、普段忘れない項目も見落としてしまいます。音無しビデオにしたくない方は、ご注意を。 正ちゃん
次回 今回は正ちゃん講座初めての音機材編でしたが、次回の音編では、正ちゃんがレベル設定の仕方や、 音割れ対策の話などしていくようです。
さて、次回は正ちゃんが中国で行ったセミナーの内容を報告をする予定です。
乞うご期待!!
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