法人のお客様Networked Liveスペシャルレポート 朝日放送テレビ株式会社様

スペシャルレポート

※本ページは2020年11月時点での情報を基に作成しています

事例紹介
朝日放送テレビ株式会社様

4K HDR対応 局全体のIP化を見据え
SMPTE ST 2110で制作サブを全面一新

朝日放送テレビ株式会社様は、毎週土曜午前に生放送中のレギュラー情報番組「朝だ!生です旅サラダ」のほか、バラエティ番組の収録などに幅広く使用している本社内Bスタジオサブを、国内初4K HDR対応・SMPTE ST 2110ベースのIP Liveプロダクションシステムに更新され、2020年春より運用を開始されました。

インターフェースの混在を避けられるIP

今回更新を行ったサブは、当社の2つの制作系サブの1つであるBサブです。2005年にHD化に向けて更新し、2008年の社屋移転時に移設したシステムの更新です。更新におけるコンセプトは「日頃のHD運用における拡張性や利便性を第一に、今後の4K運用も可能にする」ことです。

4K伝送に12Gや3G-SDIを想定した場合どうしてもHD専用や4K専用となる系統が出てきてしまいます。3G-SDIに至っては、マトリックスのI/Oを多く必要とするうえに4連動スイッチングなども必要になります。こういったことを、できるだけ排除したいと考えました。その点、IPであれば、HDも4Kも1つのインターフェースに集約でき、帯域が許す限り通すことができます。一方、IPは遅延が悩みどころでした。しかし、例えば3フレーム・4フレームといった遅延も、60pなら60iの1.5フレーム・2フレーム相当となり、許容できるものとなります。そこで今回は、HD系にSDIは残しつつ、4KはIPだけで臨む設計にしました。

IPについては、NMI(ネットワーク・メディア・インターフェース)とSMPTE ST2110の選択がありましたが、当社では標準規格であるST 2110の採用を前提としていました。RFP(提案依頼書)の段階でST2110を掲げたところ、希望する時期にST2110ベースのシステムが納入できるとして提案をもらえたのはソニーだけでした。

  • 宇佐美 貴士様
    朝日放送テレビ株式会社
    技術局 制作技術部
    制作技術係主任・
    株式会社アイネックス 兼務
    宇佐美 貴士様
  • 波田 純一様
    朝日放送テレビ株式会社
    技術局員主任同等・出向
    株式会社アイネックス
    制作技術部 制作技術課
    チーフVE 兼 技術局
    制作技術部
    波田 純一様
  • 瀧 晃一様
    朝日放送テレビ株式会社
    技術局員・出向
    株式会社アイネックス 兼
    技術局 制作技術部
    瀧 晃一様
  • 勝間 敦様
    朝日放送テレビ株式会社
    技術局 制作技術部
    担当部長・
    株式会社アイネックス 兼務
    勝間 敦様

IP化を局舎全体に広げ、“リソースシェア”も

当社では、回線センターやマスタールームについても近い更新を控えています。それらをIPで更新した場合には、サブ側での改修にかかる手間や費用もほとんどかからずに済みます。また、他のサブも更新時にIP化を図り、設備の共有「リソースシェア」を実現したいと考えています。

今回の導入は、将来的に映像信号のIP化が進むだろうということで、インフラの先行投資という面だけでなく、オペレーターのノウハウ蓄積も兼ねています。例えばIP対応機器のテストを行うにも、IPに対応した環境が必要です。バラックで最小構成ということではなく、実際に運用が行える環境があって初めて、実用的な評価が行えると考えました。

マルチモニターと個別モニターを組み合わせたモニター棚
タブレットからスイッチャーの設定を操作可能

SDIでは難しかったルーティングの冗長化

システム構成としては、IP Routerは100G64ポートのスイッチをSPINE、10G/25G48ポートスイッチをLEAFとして、SPINE/-LEAF構成となっています。SPINE/LEAFはA面とB面で構成されており、完全な二重化構成です。IPで直接収容しているのはスイッチャーとマルチビューアーと波形モニターなど、本数が多い部分です。エマージェンシースイッチャーもIP化しており、チャレンジングな部分を4Kで行っています。ルーティングを冗長化することは、SDIではコストの面から難しかったからです。

IP Liveシステムマネージャーのモニター画面
冗長構成のネットワークスイッチ

高校野球でHDR制作ノウハウを十分に蓄積

HDR制作については、ソニーの協力を得ながら、すでに高校野球で繰り返しトライアルをしてきているので、ノウハウは蓄積されています。HDRプロダクションコンバーターユニットHDRC-4000のメニューを皆が暗唱できるほどです。こういったパラメーターが欲しいという要望にもバージョンアップの形で繰り返し応えてもらい、HDRC-4000は現場に不可欠な機材になりました。今回のシステムでは、4K HDRとHD SDRのサイマル制作はSR Live for HDRワークフローによりHDRC-4000による最終段でのコンバージョンを行う前提です。

今回の設計は、ここまでまっすぐ来られたわけではありません。基本思想やコンセプトの異なる図面を6度も引きなおしてもらった結果、やっと辿り着いたものです。概念図的なものは、他のメーカーさんも何度も描いてくれますが、機器の型番や具体的な配線まで入っている図面を何度も一から起こしてくれたのはソニーだけでした。「拡張性とコストの両立を実現した」ということで、局長賞も受賞することができました。サブ全体も、春の稼働開始からすでに半年が経過しましたが、安定運用できており、非常に安心して使っています。

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