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短編映画制作「気持ち玉」(撮影/監督:ふるいちやすし)

プロダクション

NXCAMスーパー35mmカムコーダーNEX-FS100Jを使って全編を1920×1080/60Pで撮影した短編映画が完成、好評公開中

短編映画制作「気持ち玉」(撮影/監督:ふるいちやすし)

スーパー35mm相当単板CMOSセンサーとEマウントを搭載、レンズ交換式のNXCAMカムコーダーNEX-FS100Jを使って全編を撮影した短編映画「気持ち玉」(撮影/監督:ふるいちやすし、出演:横張芽衣、鳴海剛、赤川千尋 22分41秒)が2011年6月に完成、Web等で公開され話題を集めています。

この作品の監督・脚本・演出・音楽に加え、実際に撮影も行った映像作家・音楽家ふるいちやすし様に、NXCAMカムコーダーNEX-FS100Jの特長や魅力を作品の内容、表現を元に具体的にお話いただくとともに、今後の映像制作における可能性など、NEX-FS100Jの評価も併せて伺いました。

動画専用に開発された大判センサーによる被写界深度、高感度、低ノイズ、そして高精細。久々にクリエーターの創造力を喚起してくれるビデオカメラと出会うことができた


映像作家・音楽家
ふるいちやすし 様

はじめに正直に申し上げておきますが、私はデジタル一眼カメラの動画撮影を使った作品を数多く制作してきました。大判センサーによるフィルムカメラと同様の浅い被写界深度の画が撮れるだけでなく、階調も豊かで、エッジもきれいというその表現力に惚れ込んだ結果でした。もちろん、元々は静止画用に開発されたものですから情報量の問題や、速いパンに対応できない、音声収録に別の録音システムを必要とするなど使い勝手に問題もありました。逆に言えば、これらの難点も気にならないだけの表現力の豊かさがあって、世界的なムーブメントになったのではないかと思います。同時に、こうした表現力はそのままに、使い勝手やコストパフォーマンスに優れたビデオカメラの登場を待ち望んでいたというのも事実でした。

この期待に想像以上のレベルで応えてくれたのがNXCAMカムコーダーNEX-FS100Jでした。もちろん、スーパー35mm相当の単板CCDを搭載したF35や、単板CMOSセンサーを採用したPMW-F3といったデジタルシネマカメラはすでに存在していますが、これらは映画制作会社や放送局、プロダクションでないと気軽に使用することはできません。自主制作作品を主体に活動する映像作家、クリエーターにとっては、NEX-FS100Jこそが長年待ち望んできたビデオカメラと言っても過言ではないと思います。PMW-F3と同様の動画専用に設計された大判センサーによる浅い被写界深度の画や高感度で低ノイズ・高精細な映像美は衝撃であり、Eマウント搭載によってレンズ選択の幅が広がったことも大きな魅力です。まさしく、映像作家、クリエーターの創造力を喚起してくれるビデオカメラとの出会いでした。

 
暗部の階調表現も豊かで、ノイズもない高精細な映像美は、ドラマ制作における演出や照明の方法論をも根底から変えていくだけの可能性を実感させる


なんでもないカットですが、それぞれの質感の違いが鮮明に現われています。


本物の生活感のリアリティを追及しました。「朝の彼女」の質感が唇や首のしわにまで溢れています。モデル写真としてはNGかも知れませんが、ドラマとしてはこれもまた美なのだと思います。


薄暗い部屋の中で、窓の外を通る影まで写し込むために被写界深度を深くする、つまりアイリスを絞り込む。この時もゲインを上げる必要がなかったので暗部にもノイズがない。不可能を可能にしたNEX-FS100Jの明るいセンサーの実力が出ています。


唇だけの演技シーン。浅い被写界深度の画と高精細により、その微妙な演技を見事に表現することができました。

今回の「気持ち玉」という作品は、元々路上演劇の演目として構想していたもので、自分の気持ちの色をした玉を出すことができる女性の挫折と再生を通して、本当に大切なものとは何かを考えてもらえるようなちょっとファンタジックな作品です。NEX-FS100Jを使ってみた成果を、実際の映像表現やシーンから紹介してみましょう。まず、これはカメラテストを行っている時から感じていたことですが、このカメラの衝撃的とも言える魅力は、心臓部とも言える大判センサーによる高感度と高精細な画にあります。最初から動画用に設計・開発されているので、同じサイズの静止画用と比べて画素一つ一つが大きくなり、モアレや色の濁り、ノイズ等が大幅に軽減されています。

たとえば、作品の冒頭で主人公が失恋という挫折を味わうシーンは、実際に友人が使用しているアパートで撮影を行っていますが、主人公の表情や肌、室内に配置された物の質感、暗部の階調表現、ノイズレスで生活感をリアルに再現できたと思います。また、薄暗い部屋の中に呆然と佇む主人公と、窓の外を出て行く恋人の影と一緒に撮ったシーンがあります。当然、被写界深度を深くするためにアイリスを絞り込むことになりますが、ゲインを上げる必要もなく暗部にノイズが出ることもありませんでした。照明には500Wのハロゲンランプ2灯と、自作の蛍光灯ランプを用意していましたが、どちらかといえば抑え気味に使用したのも印象的でした。後半の舞台となる屋外の公園のシーンでは、NDフィルター2枚にPLフィルターまで付けて撮影しています。これだけの高感度だと、逆にマイナスゲインを付けてもらいたいと感じるほどでした。

もう一つ画質的な特長と思ったのが、立体感のある画だということです。特に、浅い被写界深度の画を撮っている時にフォーカスが合った部分が3Dのように浮いてくるような印象を持ちました。最初は、エッジがきれいに出ているせいかと思いましたが、詳細にチェックするとフォーカスの合った部分があまりに高精細であるためにそうした印象を与えているのでした。この辺は作家の好みだと思いますが、たとえばもう少しエレガントにしたい場合は、ブラックガンマやニーの調整が可能です。こうした調整のパラメーターが豊富に用意されている点もNEX-FS100Jの表現力を奥深いものにしています。ビデオカメラによるドラマ撮影などでは、暗部に出るノイズが怖くて、とにかく撮影時は照明をたくさん焚いて撮っておき、編集などの後処理で加工するケースが多くなりますが、このカメラなら現場で思うような表現になるまで追い込んで撮影することができます。

NEX-FS100Jはクリエーターやアーティストが所有したい、所有すべきビデオカメラ。豊富なパラメーターを熟知し、駆使することで、より意図する映像表現が可能に

NEX-FS100Jの表現力には、Eマウント搭載も大きく貢献しています。ソニーのαシリーズはもちろんのこと、各社のレンズアダプターを使用すれば、APS-C以上のイメージサークルを持つほぼすべてのレンズを使用できるのは魅力的です。今回の撮影では、標準ズームレンズのほかに、ソニーGレンズとカールツァイスレンズを用意しました。標準ズームレンズは、オートフォーカスが可能なので、ドキュメンタリー撮影などでは威力を発揮してくれそうです。実際、この作品の後に紀行風の映像をNEX-FS100Jで撮ってみましたが、その時にはこの標準ズームレンズを有効に活用することができました。また、個人的にクラシックレンズのアンジェニューのコレクションを持っているのですが、NEX-FS100Jのデジタルの高解像度とアンジェニューの光学的低解像度のレンズを組み合わせたらどんな画が撮れるのか、想像しただけでワクワクしてきます。

ビットレート/フレームレートの選択範囲が広いのもこのカメラの特長です。特に注目されるのが1920×1080/60P記録が可能な点です。これにより、最大2.5倍速のスロー撮影や最大6倍のクイックモーション撮影を簡単に行ったり、その効果を撮影現場で確認することができます。これも映像表現の上で有効な武器の一つになります。実際、今回の作品でもラストシーンで主人公の表情をスロー映像と音楽で表現し、再生の喜びを象徴するカットに仕上げています。
自主制作作品でのフレームレートは、60iや24Pよりその質感やトーンが好きな30Pを選ぶことが多いのですが、今回の作品はNEX-FS100Jのテストという側面もありましたので、全編を1920×1080/60Pで撮影しています。今では60PもAVCHD規格に包含されましたが、当時は規格化の準備中で後処理で苦労することもありました。結果的に60Pで撮影された最初の作品を経験することができ、おもしろかったと思っています。徐々に60P対応の編集環境が整ってきていますので、チャレンジする映像作家も増えてくるでしょう。

最後に、「気持ち玉」という作品の撮影でNEX-FS100Jというビデオカメラを使ってみた印象と評価を簡単にまとめますと、 NEX-FS100Jはクリエーターやアーティストが個人的に所有したい、所有すべきカメラだということです。所有することで性能や機能を熟知し、創作活動に使い切っていくことで、意図する作品世界の構築に寄与してくれると感じました。クリエーターの創造力を刺激し、創造意欲に火を点けてくれるカメラであり、個人所有でも手の届くコストパフォーマンスの高いカメラと言えます。 なお、月刊「ビデオSALON」6月号 にもNEX-FS100Jのテストレポートを寄稿しています。興味を持たれた方は、併せてご覧ください。

月刊「ビデオSALON」

ふるいち・やすし

映像作家、音楽家。1959年、京都府生まれ。1978年ギタリストとしてデビュー。その後作曲家として数々のサウンドトラックやアーティストへの楽曲提供などの音楽活動と並行して、自身で脚本・監督・撮影から編集、音楽までもこなす映像作家としても活躍。企業PVやCM等のほかに、数多くの自主制作作品を制作している。ドラマ、ムービー作品には、「サイコロコロリン」(2007 SKIP CITY国際Dシネマ映画祭入選)、「三姉妹」、「下北ダブル生シュー」、「わたしたち」、「生け花」など。音楽と映像の制作ファクトリーLoo-Ral Art(ルーラルアート、東京・新宿区)代表も務める。

ブログ「ルーラルアート+ふるいちやすしの日記」

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「気持ち玉」の上映会&トークセッションのイベントレポートはこちら

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