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沼澤茂美/天体写真家昼間の撮影と「星空撮影」を
シームレスにつなぐαシリーズ

α Universe editorial team

「天体写真」の世界で長年活躍を続ける沼澤茂美氏。星空と風景をとらえた写真作品をはじめ、流星群や皆既日食・月食、天体の動画撮影まで、星空をオールラウンドにとらえる精力的な撮影を行っている。カメラ技術の最前線を駆使し、高品質な星空写真を発表し続ける沼澤氏が見出した、αによる新しい「星空写真」の世界を紹介する。

沼澤茂美/天体写真家 新潟県生まれ。天体写真、天文・宇宙関連のイラストレーション作品を多数発表。「月刊 天文ガイド」をはじめ、天文ジャンルの雑誌・書籍で執筆活動、作品発表を精力的に行っている。NHKの科学番組の制作や海外取材、ハリウッド映画のイメージポスターを手がけるなど広範囲に活躍。著書多数。

α7が拓いた新たな「星空写真」の世界

たとえば、暗夜の星空の明るさを例にすると、その明るさは日中の晴天時に比べて1/400万しかありません。そのため、使用するカメラは優れた高感度特性を持ち、レンズは明るく開放性能の優れたものが要求されます。また、日食や月食などの天文現象の被写体は、明暗の差はとても大きなものが多いため、階調表現、ダイナミックレンジの広いカメラが有利となります。撮影条件は暗がりであったり、極寒の場所だったりと厳しいものが多く、さまざまなストレスにさらされながら撮影しなければなりません。そんな中で撮影者の意志を確実に具現化してくれる頼れるカメラがαなのです。 最初にα7シリーズが出たときに注目したのは、フルサイズミラーレスである事と優れた高感度特性を持っていること、そして、それまでの一眼レフに比べてとても小型軽量であることでしたが、その後に登場したα7Sの他を圧倒する高感度特性は、それまでの常識を一新するものでした。並外れた高感度特性は画像撮影と同時にリアルタイムでの星空映像(ムービー)撮影を可能にし、F1.4程度のレンズを用いれば、肉眼で見る以上の美しい星空の映像を記録できるようになりました。私は1988年以降、NHKの天体撮影に携わり、SIT*1に始まりハープ管*2や大口径I.I.カメラ*3などの開発に関係して多くの撮影を行ってきましたが、α7Sの天体撮影特性はそれらをしのぐものであると感じました。 その後のα7R IIは、高精細化にもかかわらず、裏面照射型の撮像素子のおかげで、きわめて優秀な感度特性と比類ない階調特性を有していて、実感としては、当時の主要なデジタルカメラの中でもっとも優れた基本性能を持つカメラといった印象を受けました。Super35mmクロップモードでの4K映像も素晴らしく、静止画、映像撮影ともに私の撮影のほぼすべての領域を担うようになりました。 特に成果を上げたのは星空の景観、皆既日食、皆既月食、流星群の撮影と言えるでしょう。 *1 SITカメラ:SITはSilicon Intensifier Target Camera Tubeの略で、非常に感度の高い撮像管。これを利用したSIT超高感度カラーカメラは、1980年代〜1990年代にオーロラ撮影や天体撮影に活躍した。
*2 ハープ管:光を増幅する受光部をもった超高感度撮像管で、さまざまなサイズのカメラが開発され、報道やオーロラ、皆既日食、天体撮影の分野で活躍した。
*3 I.I.カメラ:I.I.は“Image Intensifier”の略で光を増幅する装置。大型のI.I.とCCDを3組使用して作られたのが大口径カラーI.I.カメラで、NHKなどのさまざまな天体撮影に用いられた。

「星空写真」におけるαの表現力

高感度特性や小型軽量のボディ、ブライトモニタリングなどの諸性能をまとったαが私たちにもたらしたものは、昼間の撮影と夜の撮影の垣根を完全に取り払ったことと言えると思います。まったくシームレスに「写真撮影」という行為を昼間の撮影から星空の分野に拡張してくれたわけです。写真の本質はコミュニケーションの一形態であり、作者の内面の表現手段でもあります。従来の天体写真の分野は撮影が難しく、多くの専門的な知識が必要だったこともあって「写るか写らないか」あるいは「どれだけ写るか」といった、かなり単純な評価基準で評価されることが多く、受動的で未成熟な部分がありました。αはそんな天体写真の世界をようやく一般写真の土俵に引っ張り上げてくれたように感じます。

「空高く昇るオリオン座」

α7R III FE 16-35mm F2.8 GM 19mm F2.8 30秒 ISO3200

潟に通じる川の上にオリオン座が輝きます。この時の気温は−2℃に下がっていて、風はなく、すべてが止まっているかのような感じを受けました。α7R IIIは、高感度特性が中感度域でα7R IIよりも約1段分向上し、階調も低感度時で約15ストップと広くなっているとされています。それらの基本性能の向上は、このようなシチュエーションでうもれがちな地上風景のディテールを表現するときなどに大きく影響します。静寂に包まれた星降る夜の雰囲気、深みのある情景を見事に表現してくれました。

「水面の中のシリウス」

α7R III SEL35F14Z F1.4 ISO2000 M 30秒

霜が降りるほどに冷え込み、完全に静止した大気が作り出した鏡のような水面です。池の縁に立つと足もとまでが星で埋め尽くされ、星空のただ中にいるような感覚に襲われます。そんな水面の中の星を写し撮るには上空の星空に比べて2段ほど感度アップする必要があります。そこで威力を発揮したのがF1.4の明るさを持つ大口径35mm SEL35F14Zと、高感度特性に優れたα7R IIIです。水面に映った輝星「シリウス」とともに、周辺の暗い星々までシャープに再現し、水面に広がる星空を見事に表現してくれました。

「水田に映る天の川」

α7R II 約10mm相当 F1.3 20秒 ISO3200

5月の水田は、田植えが終わった直後で苗もまだ小さく、いたるところが水鏡の様相を呈しています。月のない無風の夜は、水田に映る天の川を撮影する絶好のチャンスです。夜半を過ぎると、町の明かりもだいぶ落ち着いて空が暗くなり、夏の天の川がだいぶ高くなってその輝きを増します。水面に映る天の川を撮るためには大口径レンズと高感度設定が必須条件です。そして、天の川の様子を見ながらフレーミングできるa7R IIのブライトモニタリング機能が威力を発揮します。

「山中で見上げた天の川」

α7R II 約10mm相当 F1.3 20秒 ISO1000

9月の終わり頃には、宵の時間に頭上高く夏の天の川が輝きます。深い杉林を抜ける道の途中で車を止め、上を見上げると、杉の木によって放射状に切り取られた天然のフレームの中に、なまめかしく輝く天の川と七夕の星々がありました。星空の動きは意外と速く、素早くセッティングして撮影しなければ、天の川の位置もすぐに変化します。感動の瞬間に即応できるカメラであればこそ、その時の感動をより忠実に再現してくれるような気がします。

「星空撮影」におけるαのアドバンテージ

ミラーレスという構造上のメリットは、ミラーボックスの制約、つまり短いフランジバックや明るい光学系(F2 以下の天体撮影用の望遠鏡システムなど)によるケラレが少ないことが上げられます。一眼レフではこれらの問題から撮影後にそれなりの画像処理を必要としますので、平坦化、つまり周辺と中心のバックグラウンドの明るさを合わせるために多くの余分な労力が必要になります。ミラーレスにはそれがない、というより、かなり少ないというメリットがあります。もちろんその構造から小型軽量化が達成できたわけで、その恩恵はさまざまな撮影条件において歓迎されるものがあります。
それから、もう一つ大きな恩恵が、EVFを覗きながら実際の画像シミュレーションや、拡大像の確認ができることが上げられます。これはフォーカス合わせに特に有利で、一眼レフでは実際の画像はライブビューモニターでの確認になってしまうため、暗所での視認性が厳しく(特に老眼の諸兄にとっては)、光学ルーペでモニターを見ながらのピント合わせが必須でした。α7のEVFは非常に優れていて情報量も適当であり、拡大してピント合わせをする際も充分な確度を呈しています。さらに、星空や微光天体での撮影時に重宝している機能として、ブライトモニタリング機能があります。この機能は、今や私にとって、なくてはならない対象確認およびフレーミング補助機能と言えます。明るいレンズを装着すれば天の川の微妙な構図までもファインダーを見ながら行うことができます。これは画期的なことです。
EVFとブライトモニタリング機能を一度使ってしまうと、作品作りにおける一眼レフの限界というものを強く実感してしまいます。
ブライトモニタリングはゲインアップとスローシャッターによって光を蓄積し、長時間露出で得られる画像をリアルタイムにシミュレーションする機能です。星空を撮る場合、通常のライブビューでは暗くて星の並びすらよく分からないものですが、ブライトモニタリングをアクティブにすれば、容易に星空を明るく写し出すことができます。明るいレンズを用いれば天の川もよく分かり、構図の決定が楽に行える(昼の撮影のように)ということです。これまでは微妙な構図の決定の際は試写を繰り返して確認しなければならなかったため、一瞬のシャッターチャンスを逃してしまうことが少なくありませんでした。この機能は、撮影者の感性を素早く的確に作品にこめられるという点で欠かせない機能です(一部のカメラでは、バルブ撮影時にのみこの機能が使えるものがありますが、αのブライトモニタリング機能はシャッター速度の設定にかかわらず動作します)。αは、そうした、写真家の本来あるべき撮影スタイルを天体撮影に拡張し、星空に正面から対峙できることを可能にしてくれたカメラと言えるかもしれません。

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