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「G Master」の設計思想や魅力を
開発陣が解説 FE 135mm F1.8 GM編

α Universe editorial team

Concept ~開発コンセプト~

ポートレートの領域を超え、新たな撮影体験を創出する

プロジェクトリーダー・メカ設計担当/前田 一平

前田:以前から、ポートレートやウエディング、スポーツなどさまざまな分野で活躍されるフォトグラファーをはじめ、多くのお客様から「Eマウント専用の135mmが欲しい」という声がありました。一般的に135mmといえば、ポートレートに特化されたレンズという印象がありますが、私たちはそれだけにとどまらず「G Master」として今ソニーが持てる最先端の技術を惜しみなく投入することで高解像とぼけを極限まで追求し、135mmの大口径レンズを求めるさまざまなユーザーの要望をかなえる唯一無二のレンズをつくろうと考えました。そこで、ポートレート、ウエディングの撮影現場はもちろん、大口径を生かした本格的なスポーツ現場での撮影や、さらには浅い被写界深度を生かした印象的な動画撮影にも使えるような、これまでになかった新しい価値を持ったフルフレームミラーレス時代にふさわしい135mmの大口径レンズを目指しました。 宮川:「G Master」には、すでにポートレートレンズの代表格としてFE 85mm F1.4 GMがありますが、135mmは被写体との適度な距離感を取りながら、背景を大きくぼかして、画面をきれいに整理した印象的なポートレートを撮影できます。また、望遠域の画角と明るいF値を備えているため、ポートレートに限らず、スポーツ撮影で屋内競技を撮りたい、花や昆虫などの近接撮影で使いたいなど、数多くの要望がありました。これらすべてのシーンで最高レベルの光学性能を発揮させようとすると、設計的な難易度が格段に上がってしまうため、本来なら取捨選択する必要があります。しかし今回は、「G Master」の最新技術を惜しみなく投入することで、何ひとつあきらめることなく、理想の光学設計を実現させしようと決意しました。

Optical Design 光学設計のこだわり

人の感性に響く、官能的なぼけ表現

光学設計担当/宮川 直己

宮川:写真表現は2次元ですが、人間の眼は世界を3次元でとらえています。ポートレート写真に求められるのは、まるで肉眼で見ているような3次元的な立体感です。今回のFE 135mm F1.8 GMの開発では、まずポートレートレンズとしてピント面の圧倒的な解像と、そこからなめらかに自然にぼけていく「立体感を感じるぼけ表現」を突き詰めました。つまり、解像とぼけを最高の次元で両立することを命題とする「G Master」の象徴ともなるレンズといっても過言ではありません。
前田:この商品を開発するにあたって、さまざまなお客様へのヒアリングも徹底的に行いました。というのも、例えばポートレートを撮られるお客様は「瞳から徐々になだらかにぼけていくところに味がある」など、ぼけ描写に非常に官能性や感覚的なものを求められます。こうしたお客様の感性に響くぼけ表現をいかに数値に変換し、どのように光学設計に落とし込んでいくかが、今回私たち設計者に課せられた課題でした。
宮川:世の中には素晴らしい135mmレンズが数多くあるので、まずはそれらのレンズを詳しく知ることからはじめました。当社のAマウントレンズ135mmだけでなく他社のレンズを含めて、さまざまなシチュエーションを自分たちで撮影し、その描写性能を設計者目線で検証した上で、どうレンズ設計に昇華させるかの検討に多くの時間を割きました。「G Master」が目指すべきぼけ表現について議論を重ね、メンバー全員の意識を共有していきました。試作の段階では、晴天や曇天、夜景などの時間帯ごと、さらには季節ごとなどさまざまな条件下で撮影し、プリントやモニターなどの色々な鑑賞方法で確認し、お客様が求める官能的で立体感のあるぼけ味や解像感を徹底的に検証しました。そこで抽出された課題を次の試作にフィードバックし、一歩ずつ高解像と理想のぼけ表現の両立に近づけ、最終的にはレンズ1本1本の調整や部品管理まで落とし込み、妥協のない完成度を目指しました。とても長い道のりでしたが、「G Master」の名を冠する135mmをつくる上では欠かせないプロセスでした。

α7RIII,FE 135mm F1.8 GM,F1.8,1/160秒,ISO200

輪線ぼけや色にじみを抑え、ぼけの質を極める

宮川:今回のような大口径望遠レンズの設計では、たくさん光が集まるレンズ前群でいかに収差をコントロールするかが重要です。しかし、高解像とぼけの究極の両立を目指した結果、球面レンズだけでは、私たちが理想とするぼけと解像を実現できないという結論に至りました。そこで、レンズ前群に超高度非球面「XAレンズ」を入れることで、中心から周辺まで非常に高い解像感を出しつつ、ぼけに大きく影響する球面収差を適切にコントロールし、理想とする収差バランスを突き詰めていきました。ただ、このような望遠系レンズの前群に大きな非球面レンズを使うのは、設計者として躊躇(ちゅうちょ)もありました。わずかな製造誤差でも輪線ぼけが出てしまい、ぼけと解像の両立が台無しになってしまうからです。そのため設計初期段階から、XAレンズの開発・製造チームと綿密に打ち合わせ、レンズに求められる精度を何度も議論し、その解となる光学エレメントの実現に向けて一体となって設計を突き詰めました。最終的には量産でも非常に高いレベルで品質管理することができ、レンズの高解像とぼけを究極の両立にはXAレンズの開発・製造チームの協力が必要不可欠であったことは間違いありません。さらに、スーパーEDガラスについても同じように前群に配置することで、解像感だけではなく、ぼけたところの色にじみを極限まで抑え、ぼけの質に徹底的にこだわって設計しています。

光学チームだけではなし得ない、フォーカス全域での光学性能

前田:今回、設計当初から高い近接性能を実現し、クオリティーの高いネイチャーフォトを撮れることも目標のひとつとしていましたので、無限遠からポートレートに最適な距離域、さらに近接領域まで、あらゆるフォーカス域で高い光学性能を実現できるフローティングフォーカス機構を採用しました。この機構は、フォーカスレンズ群を分割し、それぞれが異なる動きをすることで光学設計の自由度を高めるとともに、フォーカス全域での高い光学性能を実現することが可能となります。また、それぞれのフォーカス群を軽量化できるというメリットもあるため、高速・高精度なAF駆動にも寄与します。一方で、2つのフォーカスレンズ群を高精度に同期して制御する必要があり、越えるべきハードルは非常に高くなります。しかし、光学設計・メカ設計・アクチュエーター設計、そして制御チームが一体となってこの開発に取り組み、最終的にソニー独自の「XDリニアモーター」を各フォーカス群に2基ずつ、計4基導入することで、フォーカス全域での圧倒的な光学性能を維持しながら、最短撮影距離0.7m、最大撮影倍率0.25倍という高い近接能力も実現しました。アクチュエーターそのものだけでなく制御技術も非常に優れているからこそ、これほどの光学性能を達成できる光学系が実現できたと思います。最至近での解像度の高さと大きなぼけが作り出す幻想的な描写を、ぜひご堪能いただければと思います。

Mechanical Design メカ設計のこだわり

次世代を見据えた、圧倒的なフォーカス駆動

前田:今回のメカ設計の特徴は、高速・高精度かつ高追随なAFを実現するためにソニーが独自に開発した「XDリニアモーター」を、2つのフォーカス群で合わせて4基搭載していることです。このXDリニアモーターは、FE 400mm F2.8 GMで開発されたフォーカスレンズのダイレクト駆動を実現するアクチュエーターですが、複数のフォーカスレンズ群を駆動させるフローティングフォーカス機構に採用するのは初めての試みになります。特に135mm F1.8という大口径望遠レンズでは、開放時の浅い被写界深度において、非常に高いピント精度が求められます。それに応えられる新しいアクチュエーター制御を開発しました。
2つの大型のフォーカスレンズ群をミクロン単位で制御し、双方を同期させる制御開発は至難の業でした。単に無限遠から至近距離までの制御だけではなく、アクチュエーターの動きは気温や撮影する姿勢などにも左右されます。そのため、さまざまな状況をシミュレーションしながら、このレンズに最適な制御アルゴリズムを新たに作り上げました。また今回、XDリニアモーターを4基も搭載していますが、将来のボディの進化を見据えて、より高い要求にも最高のパフォーマンスで応えられる設計をしています。この圧倒的なフォーカス駆動性能と、ボディの「瞳AF」や「リアルタイムトラッキングAF」との組み合わせによる被写体追随性能は、お客様にも驚いていただけると思います。

動画という新たな撮影体験を、ユーザーに届ける

前田:ダイレクト駆動のフローティングフォーカス機構を採用したもうひとつの理由に、多くのかたに動画撮影を楽しんでもらいたいという思いがありました。近年ミラーレスカメラを使って動画を撮るかたも増えていますので、高速・高精度・高追随性といったAF駆動はもちろん、低振動で高い静粛性は動画撮影において大きなメリットです。動画のアクチュエーター制御はさらに難易度が高いのですが、業務用カムコーダーやハンディカムで長年培ってきたソニーの映像技術を投入して実現しています。また、動画撮影時の操作性にも配慮し、絞りを調整できるアイリスリングなども搭載し、クリック切り替えスイッチをOFFにすれば、操作ノイズを入れることなく、絞りをシームレスに変化させ、ポートレートやウエディングなど多彩なシーンで動画撮影を楽しめます。

高剛性と軽量化を高次元で両立。繊細で心地よいリング操作

前田:135mmF1.8のスペックから来る大口径の非常に重たいレンズ群を、確実に保持する堅牢性を確保しながら、同時に軽量化も実現するため、レンズ群を支えるシャーシ構造には全面的にマグネシウム合金を採用しました。マグネシウム合金製の部品は加工が非常に難しいのですが、高い光学性能と信頼性を確保しながら、同時に軽量化を実現するために、材料に関しても一切の妥協をせず、マグネシウム材の採用を積極的に行いました。そのおかげでこのクラスの大口径レンズとしては非常に軽量で、ボディに装着した場合も優れたバランスを実現しています。同時にマグネシウムで構成したシャーシは堅牢性も高く、厳しい環境下でも高い光学性能を維持することが可能となりました。また、操作性にも妥協することなく、ポートレートを縦位置と横位置で撮るときにも操作性が変わらないように、フォーカスホールドボタンを側面と上面の2箇所に配置。フォーカスリングを回すときに指が届きやすい位置に微調整しています。さらに、ポートレート撮影はマニュアルで操作するかたも多いため、フォーカスリングのトルクの重さや回し心地のよさを徹底的に検証し、繊細なピント合わせや撮影者の感性にフィットする操作感を追求しました。 ※2019年2月27日広報発表時点

最後に

宮川:このFE 135mm F1.8 GMは、光学設計としてぼけと解像を究極まで突き詰めた、まさに「G Master」の真価が堪能できるレンズといっても過言ではありません。ユーザーの皆さんには、その解像の高さと美しいぼけを存分に堪能していただければと思います。ソニーのあらゆる技術が詰まったレンズですので、いろいろな撮影シーンでそれを感じてもらえれば、レンズ設計者として嬉しい限りです。 前田:ポートレートやウエディング撮影はもちろんですが、スポーツや舞台撮影などの動体撮影でも、狙った被写体を一瞬で捉え、正確に追い続ける高い追随性を実現しています。また、動画に関しても徹底的にこだわり抜きましたので、これまで静止画しか撮ったことなかったお客様も、ぜひ動画撮影を楽しんで欲しいと思います。ポートレートレンズという領域を超え、新たな撮影体験を届けられるレンズに仕上げましたので、「G Master」のポテンシャルと新たな価値を感じていただければと思います。

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