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作曲家
澤野 弘之WF-1000X M5
Profileプロフィール
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Sawano Hiroyuki澤野 弘之
- 作曲家。「医龍」シリーズやNHK連続テレビ小説「まれ」、「進撃の巨人」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画といった映像作品のサウンドトラックを中心に、楽曲提供や編曲など精力的に音楽活動を展開している。2014年春にはボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。2020年4月に作家活動15周年を記念したベスト盤「BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2」をリリース。2021年3月に岡崎体育、優里、アイナ・ジ・エンドなどをボーカリストに迎えたSawanoHiroyuki[nZk]の4thアルバム「iv」、6月にアニメ「86―エイティシックス―」のエンディングテーマ2曲を収録したシングル「Avid / Hands Up to the Sky」を発表した。12月にキャリア初のピアノソロアルバム「scene」をリリース。2022年にはたかはしほのか(リーガルリリー)参加の「LilaS」、JO1の河野純喜と與那城奨をゲストボーカルに迎えた「OUTSIDERS」を発表。2023年1月にASKA、suis(ヨルシカ)らをボーカリストとして迎えた5thアルバム「V」をリリースした。2月には東京・TACHIKAWA STAGE GARDENでライブ「SawanoHiroyuki[nZk] LIVE 2023」を開催した。
澤野さんはこれまでに何かソニー製品を使っていましたか?
テレビとかHDDレコーダーとかは、ソニーのものをずっと使ってますね。オーディオ系だと、それこそ音楽スタジオには必ず「MDR-CD900ST」(※ソニーとソニー・ミュージックスタジオが共同開発した完全プロフェッショナル仕様のモニターヘッドホン)が置かれているじゃないですか。それにはすごく馴染みがありますし……あとは以前、高級ヘッドホン「MDR-Z1R」に関連したインタビューを受けたことがあって。そのときに使用した「MDR-Z1R」で音楽を聴くこともあります。
では、ここからは「WF-1000XM5」の音を実際に聴いていただきます。事前に澤野さんのほうから試聴曲としてNAQT VANEの「CHRONIC」とSennaRinの「最果て」、デュア・リパの「Levitating」を選んでいただきましたが、この選曲の理由は?
「CHRONIC」と「最果て」に関しては自分で作ったものでもあるし、最近の作品なので単純に聴いている回数が多いから、自分的に一番わかりやすいかなと思いまして。「Levitating」も最近好きでよく聴いている曲です。
(しばし試聴して)……やっぱり、すごくナチュラルに鳴らしてくれる感じですね。スタジオ用のモニターヘッドホンとはまた別の意味でですけど、低音とかが脚色されているわけでもなく、個々の楽器がバランスよく鳴っている。でも低音が物足りないかっていうとそんなことはなくて、クリアに聞こえる印象です。パーカッション類のロー感とかアタック感も気持ちいいですし、シンセなどの音像の立体感もちゃんと感じられて……うん、いいなと思いました。
ソニーが注力しているのは「音楽を“正しい音”で聞かせる」ということらしいんですね。音楽クリエイターの意図に可能な限り忠実に、味付けすることなくリスナーに届けたいと。その点について、制作者の立場としてはどんなふうに感じました?
僕らが作った音をなるべくダイレクトに届けたいという意志は感じました。ただ、正直そのへんはイヤホンなどを買う人の楽しみでもあると僕は思ってるんですよ。すごく脚色された音のする製品を使うのも面白いし、これみたいにナチュラルに聞こえるものを選んでもいいし。だって僕自身も、学生の頃なんかはめちゃくちゃにベースを上げて聴いたりもしていましたから(笑)。
そこはユーザーに委ねるべきだと。作り手としてはけっこう珍しいスタンスですね。
僕らの作るものって、究極的にはミックスを終えた段階が一番「この状態で聴いてもらいたい」という完成形なんですよ。それがCDなどの製品になる前に、マスタリングという工程を経るんですね。音圧を整えたり、聴き味を派手に仕上げたりする作業なんですが、言ってしまえばそこで1回音が変わっているわけです。だから再生機やイヤホンなどで味付けを加える工程は、いわば“第2、第3のマスタリング”とも言える。その意味で言うと、この「WF-1000XM5」はそれを極力しないようにしているように感じましたね。
つまり、どういう音でどう聴くかはユーザーの自由だけれど、作り手の意図にできるだけ近い音で聴きたいタイプのユーザーには本製品は適していると。
そう思います。結局、大事なのは音楽を聴いて気持ちが高揚するかどうかなので、聴く人それぞれが高揚できる音で聴いてもらえるんだったら、それが一番いいのかなと思ってます。ただ、自分としてはなるべく作り手の意図に沿う形で聴きたいと思ってます。少なくとも、わざわざ脚色された音で聴こうとは思わないです。たぶん、忠実かどうかというよりも、音の広がり方や心地よく聴ける音色が感じられるかどうかを重視している気がしますね。この「WF-1000XM5」は、それが十分感じられました。
この「WF-1000XM5」はどんな方に薦められるイヤホンだと思いますか?
単純に、音楽好きな人に薦めたいですかね。
「こういう音楽を好きな人」じゃなくて、「音楽が好きな人」?
そうですね。そもそも音楽を好きじゃない人がこの世にいるのかという問題もありますが(笑)、意識的に音楽を楽しみたい人にはオススメできると思います。いい音質で聴くことによって「こんなふうに聞こえ方が変わるんだ」と思えたり、「ここ、本当はこんなに低音が出てたんだ」と気付けたりすることによって、もっと音楽を好きになれる、追求したい気持ちになれると思うので。
より音楽を好きになれるイヤホンであると。
はい。いいオーディオ製品を買うことで、聴き慣れた曲でも全然違う聞こえ方をすることがわかると「じゃあ、ほかに持っているCDとかも全然変わるのかもしれないな」というふうに、昔聴いていた曲を振り返るきっかけにもなると思うんですよね。僕は以前そういうことが実際にあったんですよ。
「持ってるCD、全部聴き直さなきゃ」ってなりますよね(笑)。
そうそう。それってやっぱり作る側からするとすごくうれしいことなので、そういう行動にもつながってくれるといいなあと思いますね。
Specスペック
WF-1000X M5
カラー | ブラック/プラチナシルバー |
形式 | 密閉、ダイナミック |
ドライバーユニット | 8.4mm ドーム部とエッジ部で異素材を組み合わせた振動板構造 |
連続音楽再生時間 | 最大8時間(ノイキャン ON)/12時間(ノイキャン OFF)*1 |
質量 | 約5.9g(片耳) |
防滴性能 | IPX4相当*2 |
対応コーデック | SBC,AAC,LDAC,LC3 |
付属物 | USB Type-Cケーブル(約20cm) ノイズアイソレーションイヤーピース(SS,S,M,L 各2個) |
*1 ワイヤレス接続時連続音楽再生時間。コーデックはAAC。DSEE Extreme/DSEE HX/DSEE/イコライザーの搭載モデルはOFF設定時、またその他機能はすべて初期設定時
*2ヘッドホン本体のみ対応。あらゆる方向からの飛沫に対して本体機能を保護するものです。本機の音導管(音出口の筒部)、通気孔、マイク穴を除く