放送局
2016年8月掲載
XDCAMシリーズを大量に採用し、収録センターの約半数を更新。
番組収録のファイルベース運用を開始。
株式会社 TBSテレビ様は、赤坂放送センター内の収録センターにXDCAMシリーズデッキを活用した番組収録設備を設置され、番組制作のファイルベース運用を実現し、2016年2月より番組収録などで本格運用されています。
同社 技術局 放送設備計画部 担当部長 斉藤勇喜様、同部 内田 慎様と、運用をサポートされている株式会社 TBSテックス 技術管理本部 技術推進部 放送設備担当長 山本雅英様、同部 放送設備担当 部次長 菅野裕之様に、番組収録のファイルベース化促進の狙いやシステム更新の背景、コンセプト、選定の決め手、運用の成果や評価を伺いました。
なお、記事は2016年4月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。
収録センターA(写真・左)と、収録センターB(写真・右)。今回導入したXDCAM Station XDS-PD2000 16式、XDCAM HD422レコーダー PMW-1000 24式、ハーフラックサイズのPDW-HD1550 8式および編集用PDW-F1600 4式の合計52式を1:1の割合で配分し構築しています。
当社ではこれまで、番組収録にはHDCAMテープでの収録を行ってきました。しかし、この番組収録で長年使用してきたHDCAMデッキHDW-500/F500のサポートが完了することになり、システム更新が不可欠となりました。この時期に、テープによる収録を継続することは難しいと判断し、ファイルベース化することにしました。
そこで収録メディアにはディスクがよいか、メモリーがよいかなどいろいろな角度から検討しましたが、コストや持ち出し運用の利便性、これまでの運用と変わらぬオペレーションが可能であることなどから、プロフェッショナルディスクを選択し、XDCAMシリーズを採用することに決めました。また、柔軟な運用、効率的なオペレーションが可能であることも更新コンセプトの柱の一つです。一般に番組収録は、スタジオサブに収録機を設置して運用されますが、当社では従来より、各スタジオサブからの出力信号を収録センターまで伸ばし、IXS-6700でルーティングして一括収録、管理できる体制をとっています。
収録センターAは当初は地上波放送向けの収録を行うスペースでしたが、現在はA/Bの機能差はありません。収録には3層ディスクを中心に運用しつつもリニア編集が必要な際には2層ディスクに収録。XDS-PD2000(写真・中央)のSSDは同録してサブへの送出などにも活用。写真・右は、PDW-HD1550収納ラック。
この方法は、収録機を効率よく稼働させることができ、各スタジオサブに配置するより少ない台数で運用できる上、メンテナンス時の入れ替えが楽というメリットがあります。これにより放送センター内の8つのスタジオで行われる地上波放送とBS放送が混在した収録に柔軟に対応することを可能としています。
もちろん、目的は番組収録そのものではなく、魅力的な番組を制作することです。収録素材は制作や編集スタッフに渡して、コンテンツとして仕上げてもらう必要があります。そこで、TBSテックスの運用スタッフだけでなく、同社の制作・編集スタッフの皆さんにいろいろな観点から検証してもらう期間を設け、テスト運用などを通して評価してもらい、また改善要望などの意見もまとめました。
スイッチャーシステムとの連携で、スポーツ生放送の時差送出にも運用中。野球、サッカー、ゴルフ中継などのハイライト編集などで有効に活用しています。また、ユーザーズボックス(写真右上部)により、リモート/タイムコードの切り替えなど使用頻度の高い機能をワンボタンで操作できます。
その結果、効率的なファイル運用のメリットを活かしつつも、ほぼこれまでのHDCAMと同じワークフロー、オペレーションで運用できる点などが評価され、プロダクションサイドからも不満の声は聞かれませんでした。また、リモートやタイムコードの切り替え、一斉に同時収録を行うといったよく使う機能をワンボタンで簡単に操作できるユーザーズボックス等をHDCAMシステムと完全互換で特注対応してもらった点などが運用スタッフに大変好評でした。
こうした細かい要望に対応できたのも、XDCAMデッキの実績・評価の高さ、充実したラインアップ、そしてソニーの技術力の高さと現場の声に柔軟に対応できるソリューションの提案があってのことだと思います。その意味では、今回の更新は満足できるものであったと評価しています。
収録センターBは、当初は主にBS放送向けの番組収録を行うスペースでしたが、現在はA/Bの機能に差はありません。地上波/BSの同時放送といったケースでも柔軟に対応できるようになっています。また、スタジオ収録が同時に多数行われる際にも、連携して運用することができます。
新しい収録センターは、2016年2月15日から運用を開始し、「マツコの知らない世界」、「ニンゲン観察バラエティモニタリング」、「ジョブチューン」、「櫻井・有吉THE夜会」などの番組収録でフル稼働中です。8つのスタジオすべてから収録できる体制を整えているので、集中管理というコンセプトを生かした運用を実現できたと思います。
収録には基本的に3層ディスクを使用していますが、PDW-F1600でリニア編集が必要な場合などは2層ディスクに収録しています。また、収録フォーマットは、MPEG HD422 50Mbpsをベースとしつつ、より高画質の映像が求められる際には低圧縮のXAVC 100Mbpsで収録を行っています。
ポストプロダクションサイドや制作スタッフからも好評を得ています。特にプレビューやオフライン編集用に便利に使える低レゾリューションファイルの効率的な生成機能です。XDS-PD2000およびPDW-HD1550で本線収録する際、同時にそのダウンコンバート出力をPMW-1000でSxSメモリーに収録します(DVCAM 25Mbps)。ファイル名、タイムコードは本線と同一です。収録後すぐにそのデータを制作持ち込みのHDDへ高速コピーして、お返ししています。従来のように収録テープを持ち込み、あらためてデジタイズを行うより、納品スピードは向上し、制作サイドの手間やコストも軽減できます。
また、上書きの不安がないこと、頭出しが速いこともスタジオ収録では支持を集めています。歌謡番組などでは1曲終わるごとに確認のために巻き戻し、プレビューしながら作業を行いますが、VTRでは誤って大事な収録を上書き消去してしまうというリスクがあります。それが根本的に発生しないのは大きな魅力です。
また、音声スタッフからは音が24ビット対応である点が好評です。HDCAMでは20ビットだったので、より臨場感に富んだ、思った通りの音になっていると評価されています。さらに、8チャンネル対応でサラウンドに対応できる点も魅力的なコンテンツ制作に貢献してくれるのではないかと期待されています。
収録センターでは、野球、サッカー、ゴルフなどのスポーツの生放送にも対応しています。こうしたスポーツ番組では、時差送出やハイライト編集を行いますが、時差送出には既存のSR-R1000を用い、ハイライトシーンのリニア編集にはPDW-F1600を使用し、サブへ送出しています。
今回導入した番組収録設備は、運用を開始して間もない段階ですので、総合的な評価には時間を要すると思いますが、トラブルもなく、安定した状態で運用できています。これから本格的に多彩な番組収録で活用することで、ファイルベース運用のメリットを実証しつつ、その運用ノウハウを蓄積していきたいと考えています。
当社の制作部門はもちろん、ポストプロダクションサイドにもファイルベース収録、運用の利点を知ってもらい、制作に活用してもらいたいと考えています。また、今回の更新はあくまで一部で、完了ではありません。今後もファイルベース化への取り組みは続きます。
ソニーには、ディスクの記憶容量の拡大やXDCAMシリーズのラインアップの拡充、現場の要望に的確に対応するソリューションの提案などを今後も続けて欲しいと思います。
株式会社 TBSテレビ
技術局
放送設備計画部
担当部長
斉藤勇喜様
株式会社 TBSテレビ
技術局
放送設備計画部
内田慎様
株式会社 TBSテックス
技術管理本部
技術推進部
放送設備担当長
山本雅英様
株式会社 TBSテックス
技術管理本部
技術推進部
放送設備担当
部次長
菅野裕之様