XDCAM
映像制作機材 "XDCAM"

株式会社 サガテレビ 様

放送局

2014年7月掲載

XPRI NSのTeam機能を活用した編集、XDCAM Stationによる回線収録、送出でシンプルで安定したファイルベース運用を実現。

株式会社 サガテレビ 様

株式会社 サガテレビ様は、報道の取材・回線収録、編集、送出のシステムを2013年11月に更新され、同年12月より運用を開始しました。

同社 報道制作局 制作部 副部長 青山 亮様、同局 報道部主任 南里高志様に、今回のシステム更新のコンセプト、システムの特長、運用の成果や評価を伺いました。

なお、記事は2014年4月下旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

XDCAMを核とした報道ファイルベースシステムを導入


更新に合わせて取材・撮影用にXDCAM HD422カムコーダーPDW-680(写真)を2台導入。既存のHDCAMカムコーダーHDW-750 などとの並行運用をスタート。ほかに、出張取材や長時間収録時のサポート用として報道部からの要請を受けてXDCAMメモリーカムコーダーPMW-200 を1台導入し、有効活用しています。

当社の報道部門では、2003年にHDCAMを導入してHD化を開始し、2007年夏にスタジオサブのHD化でSDからの切り替えが完了しました。この際、ノンリニア編集システムと大規模サーバーシステムを導入して、ファイル化/自動化を推進しました。

今回、このシステムを更新することになり、これまでのファイル運用で得たメリットや効率的なワークフローの継承と、これまでの課題を克服することがコンセプトの柱となりました。中でも重要なテーマとなったのが、信頼性、安定性の確保です。保守を含めたサポート体制がしっかりしている点はもちろんですが、万が一の際に可能な限り自社で対処できるシステムを構築したいと考えました。

フォーマットの選定については、系列局を含めた納入実績や、メイン機器となるXDCAM Stationの機能や評価、充実したラインアップを考慮してXDCAMフォーマットの採用を決定しました。フォーマットをXDCAMに統一した上で、各工程を一つのフロアに集約して、スタッフ間の連携や効率化を図るとともに、分かりやすくシンプルなワークフローと、冗長性が高いシステムでオペレーションしやすい環境を構築しました。

XDCAM収録で効率化を実現


回線収録システム。XDCAM Station XDS-PD2000を2台使って効率的な回線収録を実現しています。また、SSD搭載のXDS-PD2000を使うことで、XPRI NSでの追いかけ編集にも対応、サッカーの中継などで、ハイライト編集してオンエアするといった運用で成果を得ています。

取材・撮影に、XDCAM HD422カムコーダーPDW-680を2台とXDCAMメモリーカムコーダーPMW-200を導入し、既存のHDCAMカムコーダーとの並行運用を開始しました。また、回線収録システムにはXDCAM Station XDS-PD2000を2台導入し、Content Browser で管理できるようにしました。

従来の運用で課題の一つとなっていたのが素材の管理でした。局内と局外の素材を同じ素材共有サーバーに取り込んで運用していましたが、局外の元素材は手元にないため、削除するかテープに残すかなどの判断に時間がかかり、容量を圧迫する結果となっていました。

今回の回線収録システムの導入で、局外からのネット受け、支局受けなどの素材はXDS-PD2000で一括管理できるようになりました。編集領域と別に局外素材用の領域ができたことで、編集領域の素材はオンエア後一定期間で定期的に削除することができるようになり、容量圧迫の問題は解決されました。

また、以前のシステムでは、2式の端末で素材の登録やデスクのプレビュー確認、資料用テープへの一本化作業を行っていました。取材後の登録作業でも端末の順番を待つ状態が多く発生し、資料用の一本化作業を休日に行うことも多くなっていました。XDCAM カムコーダーを導入したことで、テープとディスクで素材の登録が分散しました。ディスクについては、XDCAMドライブPDW-U2が全編集機に装備されており、弊社環境で実時間の約1/3で登録ができるため、スムーズに編集作業を開始することができます。また、資料用の一本化作業は送出システム側で行えるようになりました。作業が分散したことで、機器の順番待ちはなくなり、効率よく作業ができるようになりました。

また、SSD搭載のXDS-PD2000を使うことで、追いかけ編集が可能になりました。地元J1チームのサガン鳥栖の試合の際には、収録と同時にハイライト編集ができ、スピーディーにオンエアできる点が、大きなメリットとなっています。

XPRI NSのTeam機能を活用した効率的な編集システム


報道編集ブース(第2編集室)。ノンリニア編集システムXPRI NSのTeam機能を有効活用して、4台のXPRI NSと素材共有HDD(2TB) をつないで、従来と同様の効率的なワークフローを実現。XPRI NSについては、XDCAMとの親和性や信頼性の高さ、使い勝手の良さと多彩なエフェクトといった機能面も好評です。

報道編集には、ノンリニア編集システムXPRI NSを4式導入しました。XDCAMとの親和性という利点を評価してのことですが、注目したのはXPRI NS のTeam機能でした。この機能を有効に使えば、サーバーシステムだけでなく、リムーバブルな外付けHDDでも素材が共有できます。サーバーには多目的に使え、自動化もしやすいといった利点があります。しかし、温度管理などの環境面から、一般的に編集室から遠く離れたサーバー室で運用しなければならず、容量管理も簡単ではありません。そして、何よりも万一のトラブルの際に社内で対応することは難しく、メンテナンスコストの負担も少なくありませんでした。

最終的に編集室に置いた素材共有HDDと4式のXPRI NSをつないだ効率的、かつコストパフォーマンスに優れた編集システムを構築することができました。編集室内に素材共有用のHDD を配備したことで管理もしやすく、万一の際も、XPRI NS単体での独立した運用で対処するなど、社内スタッフで緊急対応できる体制を整えることができたと思っています。

XPRI NSについては、多彩なエフェクトなど、機能面も好評です。たとえば、高度なテロップ演出やスピードの調整が可能で、目をひく映像効果の編集が可能です。ただ、凝った演出には、当然時間がかかります。迅速さが優先される報道編集で活用するには、作業時間の短縮が課題となります。今後、習熟度を上げることでさまざまな映像演出を使ったより分かりやすいニュース制作が可能になると期待しています。

社内で取材したディスクやテープなどの素材は、そのまま編集室に持ち込んで4式のXPRI NSで共有化します。支局受けなどの局外からの素材は回線収録システムのXDCAM Stationからファイル転送して編集を行うことができます。収録中でも追いかけ編集が可能なので、迅速なニュース編集が可能です。また、一旦転送したオンエア素材に変更が生じた際には、以前のシステムでは必要だった削除作業が不要ですので、オンエア直前やオンエア途中での迅速な対応を可能にしています。

XDCAM Stationによるファイルベース送出システム


XDSサーバー送出システム。XDCAM Station XDS-PD1000を2台と、送出アプリケーションソフトウェアにより構成されたシンプルなシステムです。オンエアクリップストレージからの転送を受けて安定した送出が可能なほか、2台を切り替えて運用できるなど冗長性の高さも好評です。

送出システムにも、レコーダーやサーバーとして使えるXDCAM Station XDS-PD1000を2式と、XDSサーバー送出アプリケーションソフトウェアを採用しました。通常、編集機から送られたオンエア素材をオンエアクリップストレージに保存します。その素材をXDS-PD1000に転送し、送出機器の制御を行うタッチパネル送出制御端末(OTC)でオンエア操作を行います。今までの送出システムでは、トラブルが発生した際の切り分けや自社での緊急対応が難しく、大きな課題となっていました。

今回、冗長性を重視して導入した送出システムでは、オンエアクリップストレージに支障が出た場合は、編集機XPRI NS から直接送出ができます。OTCでの制御ができない場合は、XDS-PD1000を直接操作して送出でき、緊急時に自社でのオンエア対応が可能になりました。また、任意にA/B切り替えをして送出できるチャンネル変更に対応するなど、柔軟性の高さも魅力です。

送出アプリケーションソフトウェアについても、過去1ヶ月の素材日付が残るので、関連ニュースを振り返って利用したりといったニアラインアーカイブのような運用が可能です。また、頻繁に使用する役場などの公共施設の外観や空撮の映像をフォルダーに保存でき、都度アーカイブ室に走るといった煩雑さを解消してくれます。さらに、簡単な操作でプロフェッショナルディスクに一本化する機能を利用して、効率的に一本化作業が行えています。

より効率的で付加価値の高い報道制作の実現に向けて

今回更新したシステムは2013年11月に完成し、12月より本格運用しています。従来設備からスムーズに移行できたと思っていますし、スタッフ、オペレーターから不満の声も聞きません。同じフロア内で各工程ごとに集約し、デスクと映像デスクといったように役割分担を明確にし、それぞれの業務に集中できるようにしたことで、声がけによる密なコミュニケーションと進行状況を含めた情報を共有化できる点も、当初の目的とした信頼性の高いニュース放送に貢献していると思います。今後も、習熟度を上げて、さらに効率的で付加価値の高い報道制作を目指します。

そのためには、アーカイブの進化が重要になると考えています。今回、テープ管理からプロフェッショナルディスクによる棚管理へ運用を変更しました。これからは、効率的な保管や、映像資産の再利用などをテーマにアーカイブシステムの検討を進めていきたいと思います。ソニーには引き続き、アーカイブなどのより付加価値の高いシステムの提案を期待しています。

株式会社 サガテレビ 報道制作局 制作部 副部長 青山 亮様

株式会社 サガテレビ
報道制作局 制作部
副部長
青山 亮様

株式会社 サガテレビ 報道制作局 報道部主任 南里高志様

株式会社 サガテレビ
報道制作局 報道部
主任
南里高志様