XDCAM
映像制作機材 "XDCAM"

株式会社 東日本放送 様

放送局

2017年8月掲載

XDCAM Station XDS-PD1000を2式配備したXDS回線収録システムを導入。
効率的な追いかけ編集が求められるスポーツ番組制作などで運用を開始。


中谷好孝様

株式会社 東日本放送様は、効率的な追いかけ編集など、より柔軟なスポーツ番組の収録、編集、送出を目的にXDCAM Station XDS-PD1000を2式採用したXDS回線収録システムを導入され、本格運用を開始されました。
同社 技術局 技術部 課長職 中谷好孝様に、今回のシステム導入の経緯、目的、システムコンセプト、実運用での成果や評価などを伺いました。
なお、記事は2017年4月中旬に取材した内容を弊社にてまとめたものです。

ファイルベース化による効率的な追いかけ編集を目指して


スポーツを中心に編集を行うフロアに配備されたXDCAM Staiton XDS-PD1000。回線収録アプリケーションや収録サーバー、収録制御サーバーなどとの連携で効率的な追いかけ編集を可能にしました。また、2式配備することで同時2回線収録が可能である点も有効に活用されています。

当社は、2009年に導入したビデオサーバーを活用して回線収録や送出、スポーツでの追いかけ編集などに活用してきました。サーバーからベースバンドで取り込み、それを編集機に取り込んで編集していました。しかし、2016年にサーバーの保守期限が切れ、追いかけ編集ができなくなるため、今回の更新を行うことになりました。

更新コンセプトの柱となったのが、これまで以上に効率的な追いかけ編集ができること、スタッフに作業負担をかけない操作性の向上、そして既設の設備、機器も有効に活用できることでした。もちろん、従来のオペレーションやワークフローを大きく変えることなく、より柔軟な編集作業ができることも想定しました。


ラック室に配備されたニュースサーバーシステム(写真・左)。写真・右は、同システムの収録制御サーバー(上)と収録サーバー(下)。

その結果、ファイルベース化を目指すこととし、今回のXDS回線収録システムを導入することになりました。従来はベースバンドのため、取り込みに時間がかかっていました。ルーターの切り替えも都度行う必要がありました。今回のシステムでは、ファイルベースで追いかけ編集ができるようになり、より効率がアップしました。

予約した時間がくると、まず収録制御サーバーがルーターとして流用したIXS-6600のクロスポイントの切り替えを行い、XDSの収録を制御します。XDSは収録をしながら素材を収録サーバーに転送します。収録しながらノンリニア編集システムXPRI NSで追いかけ編集を行うことができます。


スポーツ編集ブース。既設のノンリニア編集システムXPRI NSとの連携が容易にできた点も好評です。従来と変わらぬ操作性を、そのまま追いかけ編集にも有効に活用されています。既設のインテグレーテッド・ルーティングスイッチャーIXS-6600も効率的な運用をサポートしています。

収録にはXDS-PD1000を2式採用することで、2回線収録に対応しました。ルーターを切り替えることなく、収録サーバーに取り込み、編集機から使いたい素材の好きなシーンにIN点、OUT点を打つだけで、どんどん編集に活用できる点もメリットです。

効率的な収録、運用、スピーディーな追いかけ編集に満足


収録端末では夜間や早朝に系列局から配信される映像を、事前に設定しておくだけでスタッフがいなくても簡単に収録ができ、有効に活用されています。この機能は、夜間や早朝に送信されることが多い、海外で開催されるスポーツ映像の収録でも威力を発揮しています。

今回導入したXDS回線収録システムは、運用を開始して間もない段階ですが、プロ野球などのスポーツ番組の収録、編集、送出に大きく貢献していると評価しています。特に、収録スタートから数十秒で編集開始できる点は、編集作業の効率アップに貢献しています。

また、素材管理も競技別など項目ごとに分けられる点も魅力です。以前は混在運用だったので手間もかかりました。さらに素材によって使用注意、使用禁止といった区分け設定ができることはとても有効な機能です。実際、こうした背景もあって、スタッフ、オペレーターから不満の声を聞くこともありませんし、以前よりも効率的な編集ができ、ストレスを感じることもなくなったと評価しています。

収録の機能も好評です。2回線収録が可能になっていることで、プロ野球の球団提供映像と当社が撮影した映像を同時に取り込むことが可能です。見やすく、分かりやすい映像をうまく使って、視聴者により魅力的で臨場感に富んだ映像を提供できます。

加えて、スタッフがいなくても収録設定を行っておくだけで収録が行える点も好評です。系列局から夜間、早朝に配信される映像を自動的に取り込んでくれます。これは、海外から送信されるスポーツ映像の収録でも威力を発揮します。これらの機能がスタッフ、オペレーターの作業負担を軽減しています。検索、プレビュー、リトリーブも容易に行えるXDS回線収録システムならではのメリットの一つだと思っています。

ファイルフォーマットには、MPEG HD422 35Mbpsを採用しています。画質的に支障はありませんし、系列局との連携も取りやすい点も魅力です。今後もプロ野球などスポーツ番組の収録、編集に本格運用していく予定ですが、XDS回線収録システムの汎用性の高さを活用して、報道緊急素材の受け入れや編集に応用することも検討していきたいと思っています。効率的な編集、送出は、報道にも有効に機能するのではないかと思っています。

新社屋に向けてトータルファイルベース化も検討

XDS回線収録システム導入によるファイルベース化によリ、スポーツ番組の編集業務は確実にスピーディー、かつ柔軟に行えるようになりました。しかし、全体像の観点ではまだ必要最少限の対応であることも否定できません。本当にその魅力を発揮していく上では、全社的な視点と設備運用でのトータルファイルベース化が必要となります。

現状では送出にVTRを使用しており、ファイルベース化は完了していません。弊社は、4年後の2021年に長町に新本社を建設し、移転する計画です。まだ、新社屋の設備コンセプトが確定している段階ではありませんが、XDS回線収録システムも新社屋に移設できるか検討しています。現状の収録・編集だけでなく、送出のサーバー化を含めた、トータルなファイルベース化が検討課題となると思っています。

また、ファイルフォーマットも現状のMPEG HD422 35Mbpsから、さらに高画質化を図ることができるMPEG HD422 50Mbpsや、XAVC-Intra 100Mbpsへの拡張なども検討していくことになるかもしれません。広がりをみせている4K制作や4K HDR制作への取り組みも重要な課題になると考えられます。

いずれも近い将来の課題として、新社屋移転に向けて社内で検討を行い、さらに効率のよい撮影・収録、編集、送出、アーカイブができる設備、機器を検討していきたいと考えています。

ソニーには今後も、4Kやファイルベースワークフローに向けたシステムや機器のラインアップの拡充、現場の要望に応えるサービス、サポート体制を維持し続けて欲しいと思っています。