【FX6&FX3特別企画】 使いこなしTips 解説セミナー (2022/1/13LIVE配信)

ソニーストア銀座動画配信スタジオより、スタイリストの澤田挨拶。
シネマの映像表現とデジタル一眼カメラの技術を融合したCinema LineカメラFX6と、
クリエイターが求めるシネマの印象的な映像表現と優れた操作性を実現したCinema Lineシリーズ最小最軽量のフルサイズセンサー搭載カメラFX3について、映像作家の鈴木佑介氏を招き、カメラの設定から編集までの工程や、撮影時のおすすめの周辺機器の紹介など、「使いこなしTips解説セミナー」と題したカメラの使い方の手順や魅力を語っていただく。
FX6のアップデートについても紹介いただく予定。
LIVE配信中、チャット欄での質問も受け付ける。

鈴木佑介氏、挨拶。プロフィールの紹介。
1979年神奈川県逗子市生まれ逗子在住。日本大学芸術学部映画から演技コース卒業。在学中に撮られる方である俳優から興味がシフトし、映像制作の世界へ。
TV-CF制作の撮影スタジオ勤務、ロケーションコーディネートを経て、2004年からフリーランスの映像作家として活動。企画・演出・撮影・編集・ラーグレーディングまでワンストップで行い、プロジェクトごとに必要なスペシャリストをスタッフィングして映像制作を行う。専門の分野は「人を描くこと」。特に女性の撮影や美容系の撮影で評価が高い。
現在は Web-CFやイベント映像制作業を中心に、ソニー主催「αアカデミー for professional」にて映像制作の講師やセミナー登壇のほか映像コンサルタントとしても活動。
Webマガジン「PRONEWS」、玄光社「月刊ビデオサロン」など各種メディアで執筆活動も行われている。今年の3月には玄光社より、ビデオサロンの連載をまとめた本が出版される。

ここからはFX6とFX3の使いこなしについて、3つのチャプターに分けて解説していく。

CHAPTER1:FX6とFX3が選ばれる理由
CHAPTER2:FX6とFX3を便利にするアイテム
CHAPTER3:S-Log3の適正露出について

まずは「FX6とFX3が選ばれる理由」について解説していく。

現在、第二次ソニーブームが到来している。
過去にα7SⅡが盛り上がったブームが一度落ち着き、α7S Ⅲから再度盛り上がってきており、若者を中心に一眼カメラであればソニーを使っている方が多く、テレビの現場でもFX6を使用者が多いと鈴木氏は話す。現場でのガチシネマカメラ疲れがあるとのこと。
他社のシネマカメラも使っており、マニュアルフォーカスで丁寧に撮影をしていくといい映像が撮れるが、すぐにパッと撮れた方がいいという仕事もあるので、少人数の現場においてソニーのカメラの性能が際立っているとの感想。
様々な現場で使用されているFX6とFX3の様子のスライドを表示。
FX6は、フルフレーム・コンパクトシネマカメラのスタンダード。フルフレームでサイズがコンパクト、αのユーザーがキャリアップする為に良いカメラである。
FX3は映像撮影に最適化されたα7S Ⅲ。メインにもサブにもなり使いやすい。
FX6とFX3の機能チャートを表示。
よくどちらがおすすめかと聞かれるが、どちらもあった方がいいと鈴木氏。
違いという点では、ボディ内手ブレ補正がFX3にはあるが、FX6にはない。
しかし、内臓NDフィルターがついているのはFX6の方だけとなる。
また、外部出力は、FX6の方にのみSDIが付いているが、配信を行う方が多いのでその場合はSDIがあった方が良いのでそこも魅力のひとつ。
画質について若干違いはあるが、鈴木氏はFX6の収録形式であるXAVC-I(MXF)のフォーマットの方が扱いやすいとの印象。
鈴木氏は、屋外ではNDフィルターが搭載されているFX6を使用、FX3は手ブレ補正が付いているので、夜や室内の撮影で使用というように使い分けているとのこと。

FX6/FX3の印象としては、「働いてくれるカメラ」である。

その理由としては下記4点あげられる。
・正確、高速なオートフォーカス
・暗所撮影(高感度耐性)
・イケてるS-Cinetone 
・AFが有効な状態でフルフレームの4K 120fpsが無制限に撮れる
鈴木氏は、この4点がすごく魅力な部分と話す。

「正確・高性能なオートフォーカス」ということで、リアルタイム瞳AFと顔認識をONにして撮影した映像を紹介。

まずはFX3で撮影した映像から表示。暗い部屋で、奥から女性が手前の縁側に歩いて来て腰を下ろす映像。F1.2の開放。
きれいに顔にフォーカスが合っている。手をカメラの前にかざすと指にフォーカスが移り、外すとすぐ顔にフォーカスが合う。とてもスムーズに移り変わる。
次に、FX6で撮影した映像を表示。ズームレンズF1.4の開放。
浜辺にて、フレームインで女性の顔が入り、奥の波打ち際の方に歩いて行き振り返り、その後フレームアウトする。女性が入ってくるとフォーカスが女性の顔に、外れると奥の浜辺の波にフォーカスが合う。そしてまたフレームインすると女性にフォーカスが合い、奥からカメラに向かって歩いてくる女性の顔にきれいにフォーカスが合っている。カメラに向かって手を伸ばすと手にフォーカスが合い、外すと顔にスムーズに移行する。
カメラを向けていれば自動できれいに撮影してくれる印象。

次に「暗所性能(高感度耐性)」について解説。

高感度とは、暗いものを撮影しても暗いままだが、わずかな明かりがあれば最大限に感じてくれるものである。
60W相当のLEDライトを1つ焚いた暗い部屋の中に女性がフレームインし、腰掛ける映像を表示。
S-Log3にてISO12800で撮影。
女性がフレームインしても迷わずきれいに顔をとらえている。
S-Log3で撮影した状態からカラーグレーディングを行った映像へ移行。
ノイズ感もなく、ディティールも出ており、暗所の中に女性の顔がきれいに浮かび上がっている。
FX6とFX3はベース感度が設定されており、上から下まで15ストップとれるようになっている。
FX3は低感度ISO640、高感度ISO12800。
FX6は低感度ISO800、高感度ISO12800。
FX3の方が低感度が若干低いISOで使用できる。
ISO1000からISO12000に切り替わった段階で映像がきれいになる。ISO10000だとノイズが若干出ていてもISO12000にするとノイズが出なかったりするとのこと。
鈴木氏は、ISO12800でNDフィルターを付けておいて、室内でも外でも使うことが多いとのこと。自分が欲しい絞りで撮影ができる点がすごく魅力だと話す。
同じライティングにて絞り開放で撮影した時に、例えばFX6のベース感度ISO800とISO12800では絞りだと5段違うことになり、5段階分の絞りを稼げる。
同じライティングで感度を切り替えるだけできれいに撮れてしまう。
作例を紹介。
ISO800、F5.6で撮影した女性の写真を表示。その次に、同じライティングでISO12800、F11、NDを入れて撮影した手をカメラに近づけている女性の写真を表示。指輪にフォーカスが合っている。
クイックにこなさないといけない仕事も多い為、すごく便利でよく使用しているとの話す鈴木氏。

テストとして、ISO800000で撮影し、ノイズリダクションをかけた作例を紹介。

夜の庭にて、洗濯竿を映したもの。奥に2つ照明がぼんやり見えている。
FX6のCustomモードにて、F1.4、S-Log撮影。
ノイズも出ておらずとてもきれいな映像。わずかな光が少しでもあればきれいに映してくれ、ノイズリダクションも優秀なのでいろいろな撮影ができる。

次に、「イケてるS-Cinetone」について解説。

窓辺で女性をアップで撮影した作例を表示。
FX3にて、S-Cinetone適正で撮ったもの。色温度は少し落としているので少し青緑っぽい画質になっている。
ここで、試しにS-Cinetoneを最初から作成してみた作例を表示。
某Blackmagic RAWをゼロからS-Cinetoneに寄せてカラーグレーディングしてみたものとのこと。やはり元の映像から調整する工数がすごくかかってくる。
S-Cinetoneはそのような工程も不要で、フルフレームセンサーならではのボケ感もありすごくいい映像になる。
S-Cinetoneと通常の映像の作例を比較表示。
S-Cinetoneというのは、通常のビデオガンマよりも中間からハイライトにかけて滑らかな階調で映し出される。作例の女性の白のセーターを見ると、S-Cinetoneの方が白が飛ばずにきれいに映し出されている。
中間の部分の人肌等をきれいに映してくれ、血色よくしてくれる。
肌は赤みが強い印象になるので、肌色の出方はポストで調整が必要。
次に、手を映している作例を表示。
アジア人は肌が黄色っぽいので、デフォルトよりも肌色に合うよう調整している。
鈴木氏のFX3 S-Cinetoneカスタマイズを紹介。
彩度と色相を-2、色の深さで赤系を減らしシアンを強めにしており、ホワイトバランスを適正から約-500Kで撮った方が見た目に馴染む。
S-Cinetoneデフォルトとカスタマイズした作例を比較表示。デフォルトは5500K、カスタマイズは5000K。人物の見え方がすっきりした印象になる。

S-Cinetoneの適正露出について解説。

ソニーテクニカルナレッジから抜粋。適正露出の中で肌をIRE60〜65%くらいで露出を取ると良いコントラストになる。それよりも下げるとコントラストが強くなってくる。IRE70%を超えるとフラットな印象になってくる。どこで適正露出を取るかでS-Cinetoneのルックの見方が変わってくる。鈴木氏は約IRE65%あたりで取っている。
S-Cinetoneはベース感度がISO100/2000なので、ISO100で使用し、高感度側はISO2000にしておくと、ノイズレベルは良いとのこと。
IRE52%〜70%で撮影した比較作例を表示。
好みにはなるが、女性を撮影する際は、約65%〜70%がきれいに見える。

次に、「AFが有効で4K 120fps (※ハイスピード撮影)」について解説。

FX3で撮影した作例を紹介。海岸を歩く女性の映像。FE50mm、F1.2GMで撮影。
絞り値開放にて手持ちで撮影しただけで、すごく雰囲気のある印象的な映像になる。
手軽にこのような映像が撮れるカメラはあまりないと話す鈴木氏。
低照度でもAFを使用した4KでのHS撮影が可能になる。
鈴木氏が制作したアパレルのPVを作例として紹介。
フリー素材を織り交ぜながら、商品のアウターや靴を身につけた男性をイメージ的に見せている映像。スローモーションを入れながら全て4K120fpsにて撮影。FX3とFX6を使用、高感度側で撮影。大変暗い映像だが、きちんとディティールも出ており、大変良い映像に仕上がっている。

ここからはCHAPTER2「FX6とFX3を便利にするアイテム」について紹介していく。

鈴木氏の前のテーブルの上にFX6とFX3の実機が置いてある。
まずは、FX3の弱点としては、内蔵NDフィルターがないという点があげられる。
これを克服するものとして、中国のメーカーTILTAの可変ND +マットボックス「MIRAGE」を紹介。
マットボックスというハレーションを切る為のものがついたアイテムがあり、ここにフィルターが入っている。鈴木氏が、カメラに装着したものを持ちながら説明。
マットボックスはフィルターワークをするもので、フィルターを入れて、可変になっている為、ダイヤルで濃度の変更ができる。レンズに直接付けているが、ロットにも付けることが可能なので、ロットに付ければ浮かせた状態でレンズを変えられる。レンズの先にステップアップリングを付けていれば、MIRAGEを差し込むだけで簡単に取り付けができるので、とても便利なアイテム。レンズごとの交換が不要になる。これでFX6と同じ働きをしてくれる。
MIRAGEを取り付けて撮影している様子の映像を表示。
ダイヤルを回して、濃度が変わる様子を見せながら説明。

次にTILTAのFX3用ケージを紹介。

最近は、スマホ用や演出等でFX3で縦位置撮影をすることも良くあると話す鈴木氏。
テーブルの前に置かれたFX3実機に付いているTIL TAのケージを操作しつつ説明。トップハンドルが回るようになっており、ハンドルを回すだけで縦位置撮影を簡単に行うことができる。

配信映像にトラブルがあった為、
ここからはチャットの質問に答えていく。


・視聴者からの質問:ビデオフォーマットの種類がありすぎて、何となくでやってきていましたが、RAWや4K等の違いがあるが、それ以外で選ぶ基準やポイントがあれば教えてほしい。
・鈴木氏の回答:一番いいものを使用する方が良い。XAVC-IであればXAVC-Iが良い。編集の時等いじり幅があり編集不可が少ない。一番軽いものは、配信のバックアップや記録用でいいと思う。

映像が回復した為、先ほど話をしていたTILTAのトップハンドルの話に戻る。

TILTAの他のトップハンドルを付けると、ロッドも装着できる為、フォローフォーカスを付けることも可能。
TILTAのトップハンドルを用いた現場での撮影の様子をスライドで表示。

次に、FX6の弱点の克服について紹介する。

FX6の弱点としては、ボディ内手ブレ補正が無いということがあげられる。
ジンバルに乗せるという解決策もあるが、臨場感としての手ブレは残したいという時におすすめのアイテムが、ソニーが提供している無料アプリ「CATALYST BROWSE」。
Eマウントレンズで撮影した際、メタデータを残してくれ、後から手ブレ補正をかけてくれるというもの。
FX6に24mmのレンズを付けて街を歩いている作例で効果を紹介。
画面がかなり揺れている映像。この揺れている映像をCATALYST BROWSEのアプリで手ブレ補正をかけると、少しトリミングはされるが、揺れが軽減され大変見やすい映像になる。トリミングの幅は自分で設定することが可能。
レンズはソニー純正でないとデータが残らないとのこと。
次に、愛犬を撮影した作例を紹介。FX6、50mm F1.2G、手持ちにて撮影、CATALYST BROWSEで補正をかけた映像。
手持ちでドリーのような撮影をしているが、揺れも抑えてくれており、きれいに被写体の愛犬をとらえている。

FX6の2つ目の弱点として「Vマウントバッテリーが使えない」という点がある。

それを克服するアイテムとして鈴木氏のおすすめが、TILTAのFX6用Vバッテリープレート。FX6のバッテリー部分にこのプレートを装着するだけで、Vバッテリーを使えるようになる。
実際に付けた様子のスライドを表示。
Vバッテリーなら、外部モニターなどにD-TAPから給電できる。
モニターにバッテリーを付けると重くなってしまうが、このアイテムを使用するとバッテリーがいらなくなる。Vバッテリー1本でカメラも動かせ、給電もできるので大変おすすめと話す。

また、FX6の弱点3つ目として「タッチトラッキングAFが使えない」という点がある。

そこで今回朗報なのが、FX6で下記の機能等を搭載したファームウェアが本日発表になった。
・タッチトラッキングAF
・フォーカスブリージング機能
・ピクチャーキャッシュレック
・オーディオレベルメーターが4ch表示可能 
ダウンロード開始日は後日案内されるとのこと。

まずはタッチトラッキングAFについて、作例を見せながら解説。

FX3にも搭載されているものだが、画面をタッチすると、合わせたい部分にフォーカスを合わせてくれる。被写体の男性の顔にタッチすると、そのまま男性がこちらに向かって歩いてきても、その間ずっと男性の顔にフォーカスが合ったまま追ってくれる。
顔が少し隠れてしまっても体にポイントが切り替えられ、顔が映るとまたすぐにフォーカスを切り替え合わせてくれる優れもの。後ろを向いてもきちんと追ってくれる。
別の人がフレームインしても、顔認識はされるが、設定した男性の方にずっとフォーカスが合った状態になる。

次にブリージング補正機能について解説。

ブリージングとは、フォーカスリングを回すと撮影している画像のサイズが勝手に変化してしまう現象のこと。それを補正してくれる機能が搭載されている。
ブリージング補正機能をONにすると、画角が少しクロップされる。レンズによってクロップされる画角サイズは若干異なる。
作例を使ってブリージング補正機能の効果を見ていく。
まずはブリージング補正無しの映像。FE35mmF1.4GMで撮影。
フォーカスを手前と奥でタッチして切り替えると、画角サイズが大きく変動する。
次にブリージング補正機能有りの映像を表示。画角サイズはほぼ変わらずフォーカスが切り替わっている。
同じくFE135mm F1.8GMで撮影した映像でも効果を検証。
ブリージング補正無しだと画角サイズの変動があるが、ブリージング補正有りだと変動なく自然に切り替わる。
また、ブリージング補正機能に、フォーカストランジションを合わせるとドラマ系の仕事でもオートフォーカスが使える可能性が出てくる。フォーカストランジションは1〜7まで調整することができる。
男性が振り返るタイミングに合わせてタッチフォーカスを設定。フォーカスが合う速度を変えるだけで、オートでいろいろな表現が可能になる。
映像制作の究極はマニュアル操作という点は不変かもしれないが、使えるテクノロジーは使った方がいいと話す鈴木氏。

広めに撮影し、CATALYST BROWSEで補正すると、FX6+単焦点レンズで手持ち撮影も可能になる。

また、CATALYST BROWSEを使用する際は、検証の結果、シャッタースピードは速い方が良い結果になるとのこと。編集で後からモーションブラーをつけた方がいい映像になったとのこと。

次に、FX6とFX3のRAW収録問題について解説。

FX6とFX3はAtomos NINJA V /NINJA V +を使用することで、最大4K 120pの12bit ProRes RAW収録が可能になる。12bitあると内臓10bitで撮影するよりもカラーグレーディングする際に色の分離が楽になる。
同じ被写体を12bitと10bitで撮影した映像をスライド表示し、違いを解説。
女性が海岸にいる作例の、空の部分をクオリファイア(カラーマスク)すると、12bitの方が10bitよりもきれいに抜けている。このようなマスクをする際はとても便利である。
次に、女性が花畑で寝転がっている映像を表示。Logからノーマルにして色を変えるという手順を切り替えていく。12bitだとこのような加工も簡単にできるので表現の幅が広がる。
ただ、ProResRAWはDaVinci Resolveのソフトは使用できないというデメリットがある。変換したデータでは使用できるが、RAWのままでは使用ができない。やはりRAWのデータのまま色等を加工した方がきれいに仕上がるので、DaVinci Resolveを使用する為におすすめのアプリを紹介。
ProResRAWをCinema DNGに変換できるアプリ「RAW Converter」(アプリ内課金)。このアプリにProRes RAW素材データを入れるだけでCinema DNGの非圧縮・ロスレス・3:1・5:1・7:1が選択可能。これで変換をかけるとDaVinci Resolveで読み込むことができ、調整が可能になる。ただ、ProRes RAW撮影時は、S-Log3/S-Gamut or S-Gamut.cineであっても、Cinema DNG変換するとカメラRAWで選択できるカラースペースとガンマがBlackmagic Designのものになるということがある。

このようなことから、ProRes RAWで収録の価値が上がった。高速AFで暗所に強い12bitのシネマカメラというものはないので、すごく良いカメラである。

最後に、CHAPTER-3「S-Log3の適正露出」について解説していく。

適正露出が分からないという声が多いが、18%グレーを41%程で取っておくと良い。例えば、人肌等中間で見られる部分をスコープの中で見た時に41%程で取っておくとだいたい適正になる。
それが分からないという方は、90%ホワイト(反射率90%の白い紙)を61%ぐらいにしておくと適正露出は取れる。
実際の例を見ながら説明をしていく。
FX6は波形モニターを表示するとグレーとホワイトの設定位置が記されるので、それを見ながら露出を合わせることができる。
S-Log3で撮影する際は、カメラのベース感度を基準に適正露出(18%グレー)をIRE41%の位置で取る事が基本。適正露出を41%(410)あたりで取っておけば、LUT等をあててノーマルにしてもグレーディングを行っても破綻しないきれいな映像に仕上がる。
それでも露出が取れないという方は、90%ホワイトカードと18%グレーカードを買うことをおすすめする。
検証している映像を表示。S-Logで被写体の男性を撮影している。男性が白いボードを手に持ってカメラに向ける。現状だと、白いボードのホワイトがだいたいの目安として80%程まで来てしまっている。この状態でLUTやノーマルをした際にはオーバーになってしまう。ホワイトを60%くらいまで下げたいということで、絞りを絞って60%まで下げる。次に、グレーのボードをカメラに向けてもらうと、だいたい設定が40%程になっている為、これで適正露出が取れたということになる。この映像にLUTをあててみると見た目にきれいな映像になるが、検証として、先程のホワイト80%のままLUTをあてると、全体的に白く飛んだ映像になってしまう。これは適正露出ではなくオーバーしてしまっていることになる。90%の反射率のホワイトを約60%に合わせておくと適正となるので、撮影時にホワイトボードを持参すると良いとのこと。

また、FX6のS-Log3は分かりづらいという問題がある。FX6は、Cine E.IとCustomの2つのモードがある。この2つのモードでS-Log3の挙動が変わる。FX3はPicture Profileから選択でき、FX6のCustomモードと挙動は同じ。Customモードの場合は撮って出しに特化したモードになっており、LogガンマとしてS-Log3を選ぶことが可能。そこにLUTをあてることができるが、LUTをあてるとビューイングではなく、焼き込んで記録されてしまうので注意。
S-Log3でCustomをとる際は、LUTをあててはいけないとのこと。外部出力をしてモニターLUTをあてながら見ないといけない。
Cine E.Iモードは、低感度側ISO800、高感度側ISO12800固定にて撮影となる。ダイナミックレンジの比率を変更できるようになっており、その最高画質で撮れる設定になっている。
ISOを減らしていくと、ダイナミックレンジは減っていく。減らさないようにする為にCine E.Iモードがある。
なお、LUTデータを入れたカードをカメラのBスロットに入れないとLUTをインポートできないのでその点も要注意。
Cine E.Iモードは、S-Log3のダイナミックレンジに最適化されているので感度は変更できない。
E.I = Expousure Indexを調整し、明るくなった部分、暗くなった部分を露出(絞り)で調整してS-Log3の適正を取ることでダイナミックレンジの上下の比率を変えることができる。また、ノイズので方にも影響が出る。基本はベース感度で撮ることが良い。表記は、ISO・dBの代わりにE.Iになる。
スライドの実際のExpousure Index画面では1600E /7.0Eを選択されているが、ISO1600で撮影すると上が7段取れるという表示になる。S-Log3で撮影する際は常に適正で撮らなければならない。

このようなS-Log3をはじめ、DaVinci Resolveでのカラートレーニング等現在オンラインやオフラインでも鈴木氏によるパーソナルトレーニング受付中。

今回のまとめとして、FX6とFX3はαのように「手軽に」きちんした「仕事の映像」も「楽に撮れる」カメラだと鈴木氏は話す。
また、Cinema Lineは与えられたチャンスを確実に掴みたい時に大活躍する商品。カメラNGが少ないというのはキャリアップの最大の武器。

ここからは視聴者からの質問に答えていく。

・視聴者からの質問:ホワイトバランスを取る時のルーティーンはあるか。
・鈴木氏の回答:必ずベースのホワイトバランスがあるので、Cine E.Iでは、5500Kと4300Kと3200Kの3つがベースになっているので、そのどこかで取る。外は5500Kで取り、室内で蛍光灯だと4300K、タングステンだと3200Kで取っている。きちんと白として見えるように取っておくことが基本。

・視聴者からの質問:S-Cinetoneのゼブラの設定は何%にしておくと良いか。
・鈴木氏の回答:65%程度にしておくと良い。65%で人肌にくるように取る。女性だと70%程度が良い。

・視聴者からの質問:撮影の時に心掛けていることは何か。
・鈴木氏の回答:事故がないように気をつけている。先程、ケージ等を付けることが嫌いだと話したが、その理由として付ける物を増やすと落ちるリスクが増えてしまうので、極力コンパクトにしたいという考えがある。必ずネジ等閉まっているかを確認する等、何かが落ちてしまってケガをしてしまうことがないようにということを大事にしている。
その他としては、適正露出で撮影する。どこをきちんと撮ってどこを諦めるか、ポストで戻せるかライティングで調整が必要かの判断はするようにしている。

・視聴者からの質問:タッチトラッキングを使いたくても撮影中に画面をタッチしにくいことがありますがカメラの持ち方について教えてほしい。
・鈴木氏の回答:FX3は、サイドハンドルを付けている。サイドハンドルを持ちながらタッチできるのでそれを使用している。FX6は、カメラを抱え込んだり、肩に乗せたりして操作している。そうするとブレづらい。

・視聴者からの質問:基本AFなのか。MFは使えるか。
・鈴木氏の回答:MFは使用できる。フォローフォーカスはスチールレンズではなく、シネレンズ等ギアがあるものはMFを使ったりする。クイックなフォーカスが必要だと使わない。

・視聴者からの質問:FX9とFX6のディアルISO感度が違うと聞いたが、どう違うのか。
・鈴木氏の回答:FX9は低感度ISO800、高感度ISO4000、ディアルネイティブISOなので、厳密にはダイナミックレンジの比率で上下の数字は変わると思う。FX9はノイズレベルが同じだが、FX6やFX3はノイズレベルが変わる。

・視聴者からの質問:FX9とFX6共に純正モニターの視認はどうか。ピント確認など。
・鈴木氏の回答:FX6はぎりぎり確認できるが、FX3のモニターは少し小さいと思う。大きくして欲しいとは思っている。5インチ程度あった方が嬉しい。トップハンドルに別途モニターを付けて確認している。

・視聴者からの質問:FX3でMP4で撮影したデータがDaVinci Resolveで走らないのだが、解決策はあるか。コーデックはXAVC-IでDaVinci Resolve無償版で60Pで撮影したもの。
・鈴木氏の回答: FX6ではDaVinci Resolveの有償版でないと走らないということがあるが…基本はMP4だと走るが…。10bitだとDaVinci Resolve無償版で読み込めないようだ。

・視聴者からの質問:NINJA Vを購入してRAWにステップアップするか迷っている。MP4だとグレーディングの幅が狭い。NINJA Vはその解決になるか。内部収録とどう使い分けているか。
・鈴木氏の回答:内部収録と同時に録ることができるので、バックアップの意味も兼ねてやっておく。絶対RAWでないといけないというところだけ録ってもいいかと思う。
使い分けはバックアップの両方録るのが良いと思う。

・視聴者からの質問:S-Log3は1.7段が最もノイズが少ないと聞いたが、正しくはノイズが少なくなるがダイナミックレンジが減るということか。
・鈴木氏の回答:1.7段は、ダイナミックレンジが減るということよりも、ハイライトに担保させて中間を取っておくという意味合いだが、そのように理解してもらって良い。

・視聴者からの質問:CATALYST BROWSEの変換が遅いので使わなくなったのですが、利用するなら短めの動画が基本か。
・鈴木氏の回答:Mac Proで行うと大変速い。利用するなら短めの方が良い。使うカットのみ使用すると良いと思う。

・視聴者からの質問:MFの補助にフォーカスピーキングを使用していますが、S-Log2や3で撮影するとピーキングレベルをHiにしてもエッジが甘くピーキング表示がされない。ピントを見やすくする何か良い方法はあるか。
・鈴木氏の回答:デフォルトのモニターだと確認するのは厳しい。モニターを外に出して確認するしかないかと思う。

・視聴者からの質問:ドキュメント用にレンズ18-110を考えているがFX6は28-135レンズなのか。
ズームの挙動が好きではないので、フルを捨てても18-110レンズにしようかどうか迷っている。
・鈴木氏の回答:FX6は、フルサイズなので同じ形であれば28-135レンズが良いと思うが、自分もマニュアルズームの挙動が嫌いなので使っていない。24-105を使っている。

・視聴者からの質問:FX3とFX6ではどちらが暗い撮影現場に向いているか。
・鈴木氏の回答:どちらも向いているのでどちらでも大丈夫。ただ、感度をどんどん入れていくのであればFX3の方があまり考えずにできると思う。クイックでやらないといけない現場の場合はFX3の方が良い。

・視聴者からの質問:90%ホワイトと18%グレーのボードはどこに売っているか。
・鈴木氏の回答:Amazonで売っている。

・視聴者からの質問:RAW Converter について、Raw Convertorのダヴィンチリゾルブでのおすすめの設定があれば教えてほしい。
・鈴木氏の回答:Cinema DNGになって、のカラースペースになるので、カメラRAWで設定してもらえればコツ等は特にない。

質問受付を終了。

今回紹介したFX3とFX6を実際にお試しされたい方には、全国5か所のαプラザ/ソニーストア店舗を案内。

ソニーストア 銀座
ソニーストア 札幌
ソニーストア 名古屋
ソニーストア 大阪
ソニーストア 福岡天神
詳しくは「αプラザ」で検索。

今回紹介したFX3とFX6、レンズを実際に購入をご検討の方に向けての情報を案内。

全国の量販店やソニーストア直営店、ソニーストアオンライン、eソニーショップなどで注文可能。
・ILME-FX6V    798,600円(税込)
・ILME-FX3     504,900円(税込)
・SEL50F12GM  279,400円(税込)
概要欄に商品詳細ページのURLを記載している。

発表になったFX6の本体ソフトアップデートver2の公開に関しては確定次第ソニー商品情報サイトにて案内予定。無料となる。

最後に視聴者へメッセージ

ソニーのカメラは、クセがあったり使いづらい部分もあったりするが、使っていると良い部分がいろいろ見えてきて、創作活動がすごく楽になる。ステップアップをすることも含めて、FX3、FX6をどんどん使いこなしてもらいたいと思う。

画面を閉じる