法人のお客様 [法人向け]Creators’ Cloud C3 Portal 事例・コラム 第1回 C3 Portalのすべて

第1回 C3 Portalのすべて

2022/9/9

これまでの課題

現在、さまざまな業界で、働き改革や、働き手の減少などにより、いかに業務効率を向上させていくかということが課題になっています。放送業界や映像制作業界においても、高い品質は維持したまま、いかに効率よくコンテンツを視聴者に届けていくか、課題に感じている方も多いのではないでしょうか。
また、インターネットやSNSの発展により、さまざまなソースからの情報発信がリアルタイムで行われる時代となり、報道取材において、今まで以上に即時性への要求が高まっています。

そうした中で、昨今の撮影現場において、即時性を高めるため、モバイルネットワーク回線を活用した素材伝送を行うことも増えていると思います。しかし、現状の素材伝送では、高価なストリーミング専用機端末を用いてストリーミング伝送(生スルー)を行ったり、別途、カムコーダーに装着された外付けの収録装置で転送用のファイル収録を行った後、ノートパソコンを経由してファイル転送するなど、さまざまな機材の準備、投資が必要になっています。また、特にストリーミング伝送では、複数のモバイルネットワーク回線のランニングコストや受信サーバーの保守コスト、回線収録サーバーのチャンネル数の確保など、コスト負担が大きくなる傾向であるため、低コストで運用できる素材伝送の仕組みが求められています。

ソニーのカムコーダーは、ネットワーク機能を内蔵することで、本体からネットワーク回線に接続して、素材伝送する機能を搭載しています。しかしながら、ネットワーク接続するための設定や操作に完璧に対応しきれない課題があることも事実かと思います。
これらの課題を解決するために、これまでソニーが培ってきた技術や、皆さまからいただいた現場の声を反映し、生み出されたソリューションが今回ご紹介するC3 Portalです。

図1:現在の運用、および、将来の取材ワークフロー

C3 Portalの概要

C3 Portalは、これまで専用機材を用いて行ってきた、ネットワーク経由での素材伝送を、カムコーダー本体と、お手持ちのスマートフォンで実現し、ファイルベースワークフローにさらなる即時性向上に貢献するソリューションです。
さらに、現場から素早く素材を転送し、プレビュー、共有できるという点に加えて、転送後の素材管理の効率化に貢献するメタデータ付加機能や、素材活用のためのトリム編集やストーリーボード編集の機能なども搭載されています。

また、ストリーミングでの伝送方式にも対応していますので、とにもかくにも現場からタイムリーに素材を送りたいというような場合には、ストリーミングを用いて素材を転送することも可能です。

このC3 Portalは、SaaS、いわゆるパブリッククラウド型ソリューションとなっているため、システム構築作業や定期的なアップデート・メンテナンスが発生せず、セキュアかつ安価にご利用いただけます。従来の専用機を用いた伝送サービスなどと比較し、大きな初期投資が発生せず、すぐにサービスの利用を開始することができることも特長の一つです。

図2:C3 Portalの概要

カメラとスマートフォンが簡単に接続

C3 Portalは、スマートフォンを用いることで、素材伝送をより簡単、かつ効率的に行うことを実現しています。

これまで、カメラとネットワークを接続する場合、設定作業が複雑であったり、設定後したあとネットワークと接続が完了するまで時間がかかったりとストレスに感じることもあったかと思います。
C3 Portalでは、そうしたオペレーションの煩雑さを解消するために、QRコードを用いた「簡単カメラ設定」機能に対応し、接続の簡易性を実現しています。
カメラに表示させたQRコードを、スマートフォンのアプリで撮影するだけで、スマートフォンとカメラが接続される仕組みとなっています。

図3:QRコードによるかんたん接続機能

※FX9、FX6とPXW-Z280で対応。PXW-Z750、PXW-Z450、PXW-X400も2022年秋頃のファームウェアアップデートにより対応予定。

また、一度リンクが完了しているカメラに関しては、プリセットが残るため、アプリ上から接続したいカメラを選択すれば、接続が完了します。

さらに、この設定により接続が完了すれば、収録したクリップが、すぐにクラウドにもファイルが上がっていく状態になっています。カメラ側で撮影し収録をストップすると、カメラの方から即座にファイルが、スマートフォンの内蔵ストレージに転送されます。そして、その後、スマートフォンからクラウドへのアップロードが自動的に始まり、クラウドへのアップロードが終了します。

このように、QRコードにより接続を完了したのちは、撮影収録後のファイルアップロードの操作など、特別な操作をすることなく、自動的にクラウドへ撮影された素材が自動的にアップロードすることができる仕様となっています。

スマートフォンからのネットワーク転送によりさまざまな制約から解放

このように、C3 Portalは、カメラ内で収録した素材を、自動的にスマートフォンの内蔵ストレージの方にコピーします。その後、スマートフォンに転送された素材が、4G/5Gといったスマートフォンのネットワーク回線を使って、クラウドにアップロードされるという方法で、ファイル転送を行います。
一見、カメラからスマートフォンにファイルを転送後したのち、スマートフォンからクラウドに転送するという二段構えの転送だと時間と手間が増えるのでは、と思われがちですが、実は、この方式を採用することにより、多くのメリットが発生します。

例えば、カメラから直接ファイルをネットワーク転送する場合、仮にネットワークの伝送速度が遅いと、ファイルの転送が完了するまでカメラの電源が切れない状態となります。それにより、転送完了まで次のシーンの撮影ができない、カメラマンが次の現場に移動できない、カメラのバッテリーを消耗してしまう、といった多くの制約が発生してしまいます。

従って、カメラからスマートフォンへの転送は、転送速度の速いUSBケーブルにより転送します。その後、スマートフォンをカメラから取り外しバックグラウンドでファイル転送を行うことができるため、カメラは、すぐに次のシーンの撮影を行うことができ、バッテリーの節約にもつながります。また、カメラクルーは次の現場への移動ができるだけでなく、C3 Portal Appを利用すれば、移動中に撮影した素材のプレビューや、メタデータの入力を行うことも可能です。

マルチ・モバイル・リンク転送によりさらに転送時間も向上

また、スマートフォンを使用した転送だからこそ実現できる機能として、ファイル転送の高速化アルゴリズムであるマルチ・モバイル・リンク転送(MMLT)という機能も搭載しています。
MMLTでは、カメラと直接接続されているスマートフォン(親機)に対して、複数の子機となるスマートフォンを追加することで、カメラから親機に転送したファイルを子機にも分割し、複数台のスマートフォンのネットワーク帯域を使って転送することで、伝送スピードを高速化する技術です。この方式により、伝送速度のスピードアップが実現できるため、プロキシデータの転送に加え、ハイレゾのデータの転送時を行う際にも有効な機能です。

図4:マルチ・モバイル・リンク転送 (MMLT) の概要

さまざまな機種のスマホのカメラでOK

C3 Portalは、素材転送を行うスマートフォンに、USB接続で各種カードリーダーを接続することにより、ファイル転送に対応したカムコーダーだけでなく、一眼カメラや、アクションカム、スマートフォンなどで撮影した素材など、カメラ種類に関係なくクラウド上にファイル転送を行うことが可能です。
また、カメラがなくとも、素材が収録されたSDカードやSxS(エスバイエス)のカードなどからの素材転送にもご活用できます。

収録中の追っかけ転送、素材プレビュー

これまでファイル転送において難しかった収録中の素材の追っかけ転送も、C3 Portalでは実現しています。

通常であれば、カメラで収録が完了したのち、素材がスマートフォンへ送られ、クラウドへ転送、共有されます。「チャンク転送」と呼ばれるこの機能は、素材の収録が完了(REC終了)していない素材収録中に、バックグラウンドでカメラからスマートフォンに追っかけでファイル転送し、クラウドへ転送・共有ができるという機能です。これにより、カメラ側で収録中の素材であっても、追っかけでクラウドへファイルがアップロードされていきます。収録中の素材の追っかけでのプレビューや、素材の切り出し編集、ファイルの先行編集を行うことで、さらなる即時性を実現することが可能です。

図5:チャンク転送の概念図

※FX9・FX6とPXW-Z280で対応

例えば、チャンク転送の設定を1分と設定した場合、撮影中のクリップが1分経過すると、1分のファイルを1つ生成し、都度スマートフォンに転送を行うという仕組みになっています。
そして、1分ごとに分割して転送されたファイルは、同じく1分ごとにクラウドへ転送されるため、ファイルを受信した段階から、収録中のクリップであっても、クラウド側でプレビューを行うことができるようになります。

また、C3 Portalは、トリム編集やストーリーボード編集の機能も兼ね備えています。転送されてきたファイルの必要な部分をトリムし、サブクリップを作成することや、できたサブクリップをストーリーボードに並べて一本化することができます。収録中であっても、ハイライトなどの先行編集を行うことも可能です。
また、先行編集された素材は、カットリストとして出力することもできるので、後段で、ハイレゾクリップとリリンクを行うことも可能です。

これにより、ファイルベースでありながらも即時性を実現しています。

図6:ストーリーボード編集

クラウドで共有することのメリット

これまでご紹介してきたように、クラウドへ収録した素材を転送することで、現場側や編集側に限らず、どこからでも即座にファイルにアクセスできるようになることや、一度の転送で複数人に共有できることといったメリットがありますが、それ意外にもクラウドで素材を共有することのメリットがあります。

これまでのネットワークによるファイル転送の場合、現場側から編集側へファイルを送ることはできましたが、その逆はできませんでした。C3 Portalでは、クラウドを経由することにより、クラウドとスマートフォン双方向でやり取りを行うことが可能になります。その特長を活用した機能の一つがメタデータとAIを使った、効率的な素材管理です。

図7:C3 Portalでの運用イメージ

これまで、メタデータの入力は撮影された素材が転送された後にのみ可能で、かつクリップごとに都度入力が必要といった手間や制約があり、素材整理の時間が大幅に発生するといった課題などがありました。
C3 Portalは、スマートフォンアプリC3 Portal Appを用いて、「取材/収録項目名」「記者/ディレクター名」「撮影者名」などといった、プランニングメタデータを、撮影中や撮影前後を問わず、いつでも入力・編集することが可能です。

そのため、現場のカメラマンが、撮影内容を入力しておいたり、素材の重要な点や使用上の注意点、制限事項を編集側へ申し送りしたりする際にメタデータを活用できるほか、突発的な事故取材の場合などには、編集側からメタデータの紐づけ入力を行っていただくことが可能です。

また、そこで入力したメタデータと、撮影されたクリップが紐付くことにより、クラウド上に同じメタデータを持つフォルダーが自動的に作成されます。同じメタデータを持つ素材は、一つのフォルダーにファイル転送されていく仕組みとなっています。

さらにC3 Portalでは、ストーリーメタデータという新しいメタデータの概念を追加しています。ストーリーメタデータとは、素材が転送されるクラウド内のフォルダーにメタデータを紐づけて管理することです。そのフォルダーの中に入ってくる素材は、全てストーリーメタデータと紐づけて管理することができるという機能になっております。この機能を用いれば、現場でフォルダーに対してのみストーリーメタデータを入力すると、そのフォルダー内の全てのクリップに対してメタデータが紐づきます。そのため、個々のクリップに対してメタデータを入力するという作業が発生しません。

このようなメタデータにより、クラウドへファイル転送されたクリップは、フォルダー側のメタデータとリンクされた状態で管理されます。個別にメタデータ入力したり、撮影から戻った後、クリップのフォルダー整理を行ったりといった作業が発生せず、効率的なコンテンツの管理を行うことができます。

このようなメタデータにより、クラウドへファイル転送されたクリップは、フォルダー側のメタデータとリンクされた状態で管理されます。個別にメタデータ入力したり、撮影から戻った後、クリップのフォルダー整理を行ったりといった作業が発生せず、効率的なコンテンツの管理を行うことができます。

図8:ストーリーメタデータの運用イメージ

まとめ

このようにC3 Portalは、スマートフォンとクラウドを用いることで、これまで以上に簡易的にファイル転送を実現した、取材効率と情報伝達の即時性を向上させることができるソリューションです。カメラとスマホがあれば、いつでもすぐにサービスを始めることができますので、ご興味のある方はぜひお試しください。デモやトライアルのご相談や、サービスに関するお問い合わせも受け付けております。