商品情報・ストア 月刊大人のソニー '14 Vol.19

押井守監督は初めて見た「4K」をどう感じたのか!?

大人なら誰しも、まぶたの裏に浮かぶ大切な映像があるはずです。あの頃の感動はそのままに、あの頃は見えなかったところまで。今、4Kの技術だから味わえる新たな映像体験をソニーから。

クリエーターにとって4Kとは「きれいに映る」だけのテレビではない。

4Kブラビアの特長に、アップコンバート技術がある。それは、いつも見ている地デジのテレビ番組も、ブルーレイのコンテンツも、フルHDの4倍高精細な4K画質で見られるというもの。そのアップコンバート技術の素晴らしさを、大人のソニー4 K特集で初めて取り上げるアニメーションコンテンツを通して検証してみたい。
今回は特別に、ディテールにまで徹底的にこだわり、芸術性を極限まで高めていることで世界に知られるクリエーター、押井守監督にお話を伺った。視聴した作品は、押井監督が手がけた映画で、2月28日にWOWOWでオンエアーされる『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)と『イノセンス』(2004年)の2作。この2作に加えて、押井監督の最新作『GARM WARS The Last Druid』を、フルHDの(2K)ブラビア(KDL-55W920A)と4Kブラビア (KD-55X8500B)の2台を並べて、アップコンバートの実力を見比べていただいた。

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』はアップコンバートでどう変わったのか!?

はじめは『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を検証した。米ビルボード誌のビデオ週間売り上げで1位を獲得し、全世界でのパッケージの売り上げが130万本を超えるなど、世界的に絶賛を浴びている本作。すでに劇場公開されてから20年もたつ作品で、CGが多用される現代アニメと比べると、古き良き時代のアニメという印象だ。フルHD(2K)ブラビアと4Kブラビアに映し出される映像を見比べると、その違いは歴然だ。発色が鮮やかで、まるで新たに色彩し直したような印象を受ける。しかし、制作者が見た印象は、まったく違ったようだ。 「これは、僕がセルアニメを監督した最後の作品なんです。セルアニメは、セル画をカメラで光学的に撮影する、つまり、セル画という"モノ"を何枚も撮影して映像にするのですが、その"モノっぽさ"をどう見せないかが大事なんです。人物に背景の絵を何枚も重ねて、立体感を出している。それをどう違和感なく見せるかとか...。そこで、この作品では4種類くらいのフィルターをかけて、セルアニメではあるけれど、まるで実写のような空気感を出すことに成功したと思っていたんです。当時としては斬新な技法だったわけですけど、4K画質にまでアップコンバートされてしまうとこの程度では太刀打ちできない。むしろ粗が見えてしまう。制作した側からすると、見てほしくないところまで見えてしまいますね」。
「でも...作品の最後の場面、少女にクローズアップしていく、スーパーズームのシーンだけは大丈夫ですね。ここはデジタル合成で作ったからです。背景やセル画の素材をスキャンして、コンピューター上で合成したカットです。ここについては、4Kテレビで見ても遜色(そんしょく)ないし、耐えられると感じました。この場面は光学処理ではなく、コンピューター上でデータ処理して、それをフィルムに出力したものだから、見えているのはモノ(セル画)で はない。恐らく、4Kにアップコンバートして見る作品は、デジタル合成した作品のほうが向いているかもしれませんね。『イノセンス』は、100%デジタル合成した作品ですので、4K視聴に合っているかもしれません。そちらを見てみましょうか」。

あちこちに仕込んだ映像の仕掛けを見つけられる楽しさが4Kにはある。

押井監督は、2001年に実写映画『アヴァロン(Avalon)』を発表し、そこで培った実写の技法を『イノセンス』(2004年)でアニメーションと融合。誰もやったことのない取り組みに、世界中から関心が集まった作品だ。監督がまず注目したのは、冒頭のクレジットのシーンだ。 「この作品は、"映りこみ"が大きな魅力なんです。少女の眼球にクローズアップしていく場面は公開当時、目の中に何が見えるか、話題になりました。4Kだと...。いいね、はっきり見えますね。この映画には、そういう仕掛けが他にもたくさんあります。
この後のラボの場面では、白いテーブルに置いたコップが映り込んでいて、そのコップには室内の風景がすべて映り込んでいる。なしうることは、すべて考えてやったんです。キムの館のシーンは、映り込みの集大成みたいな場面です。光沢のある床や壁に、互いが映り込んでいる。あらゆる反射を考慮したので、コンピューター上の計算時間がとんでもなくかかりました。たとえば床の大理石はでこぼこ、それに対し壁はフラットなので、同じ反射の仕方ではダメです。その反射の違いまで、4Kだと分かってもらえますね。きっと、スクリーンではなかなか確認できなかったものもあると思う。4Kの高解像度なら、きっと新しい発見があるんじゃないかなと思います。ぜひ探してみてください」。アップコンバート技術について開発者インタビューはこちら。

「楽しい」の一言。きちんと仕事を見てもらえるテレビ。

「次は、コンビニのシーンにいきましょうか。そう、ここです。あー、これは楽しいわ(笑)。店内の棚の商品。これ、全部違うパッケージで、それぞれ実際に描いてCGに貼り込んだんです。すさまじい情報量ですけど、4Kだと全部違うということが判別できますね。このシーンだけで2,000枚くらいの画(え)を描いてもらいました。せっかくのディテールですが、銃撃戦でめちゃくちゃになります(笑)。でも、ディテールが精巧でないと、荒らした感じが出ないんですよ。だから、4Kみたいに細かなディテールが明確だと、それが荒れたときの迫力も増しますね。あと、一番手が掛かったところが祭礼の場面です。舞い散っている花びらは、立体感を出すために手前と奥で大きさを変え、形も1枚1枚変えています。4Kだと、背景の3次元の感じ、出てますね。あー、群集も一人ひとり、判別できます。うん、楽しい(笑)。
キムの館の中では、床も寄せ木細工だから木目とか傷を1枚1枚、すべて描いたり...。陶器のカップも、その質感を出すのに結構頑張った。やっぱり、画(え)を作った人間からすると、4Kテレビだと仕事を見てもらえるのでうれしいですよ。ただ演出の立場からすると、見えてほしくないところもあるけど(笑)」。

劇場とは一味違う色彩やディテールに新しい発見や気づきと出会えるはず。

「『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』も『イノセンス』も劇場公開用の映画なので、映写機でスクリーンに投影した反射光で楽しむために作りました。一方、4Kテレビのように自発光の高解像度モニターに映したとき、劇場では"見えるか、見えないか"という感じだったディテールをきちんと見てもらえる。劇場とは 違った発見をする楽しみが4Kアップコンバートにはありますね。例えば、『イノセンス』の海中のシーンなんか、劇場公開の際にはちょっと気になっていたんです。海の中が濁っているという設定なのですが、濁らせすぎて、せっかく の水中サイボーグが見えにくかったのではないかと...。でも、4Kだと濁った海の感じ、いいですね。水中サイボーグと海の濁り感、両者がうまくなじんでいて、悪くないです。こういう美術的な要素を楽しむ上で、4Kアップコンバートは楽しい。ダイナミックレンジや色域も広いし、アップコンバートで出す色味は、僕の好みにぴったりの色でした。『イノセンス』を7、8年ぶりに見ましたけど、4Kアップコンバートで楽しむのに合っている作品だと思います。ぜひ新しい発見をしてみてください」。4Kアップコンバートのすごさを著名人が検証するサイトはこちら。

高解像度時代が来る!アニメの進化系ハイブリッドアニメーション、4Kとの相性は抜群。

最後に紹介するのは、押井監督の最新作『GARM WARS The Last Druid』で、実写とアニメーションの融合作品。(公式サイトはこち) 劇場公開を予定している作品だが、実験的に、フルHD(2K)画質でブルーレイディスクに収録し、4Kブラビアでアップコンバートして押井監督に鑑賞していただいた。
「本作はファンタジーなので、幻想的なファッションのデザインやディテールが魅力のひとつです。4Kで見ると、衣装でこだわった部分も見えてすごいですね。例えば、登場人物が着ているマントは織りの違う布を何枚も貼り合わせていたり、高画質に耐えるほど上質のウィッグ(かつら)を着けていたり。ほら、4Kだと髪質がとてもきれいなことが分かるでしょ?人間だけでなく、バセット犬の毛並みもすごい再現力ですね。これはすごい。これが4Kの高解像度の威力なんですね。
夕景のシーンでは、色味を100%コンピューター上で操作しています。でもノイズも出てないし、色の再現性が高いことが分かる。月明かりに照らされる戦車のシーンも、暗闇の黒さがきちんと沈んでいて、変な黒浮きがない。森のシーンでは、霧が漂う様がきちんと分かるので、奥行き感が伝わる。合成した背景とのなじみもよくて、迫力があります。あと、黄金(ゴールド)の再現力がすごいなと。従来のモニターだと、オレンジに見えてしまうことがあったんだけど、それがきちんと金色に見える。
4Kテレビの普及で、これからアップコンバートが当たり前になると、われわれ作り手も、そういう視聴環境も意識した作品作りを考えないといけないですね。人間って、一度高解像度の映像を見てしまうと戻れないから...。これからの映画は、いずれ4Kアップコンバートされることを想定し、スクリーンでは見えないディテールまで作り込む必要があるのかも...。そういう高解像度時代が来ることは以前から分かっていましたが、作り手にとっては、改めてハードルが高いですね(笑)」。
こうして押井守監督の話を伺ってみると、4Kとは単に「より美しく描く」だけでなく「見えなかったものを見せる」ことでもあるのかもしれない。映画館や普通のテレビで見たアニメも、4Kの大画面で、しかもアップコンバートされた高精細な映像、そして大人の目線でもう一度見直してみる。すると制作者の意図した思いや、新しい発見、その時に感じなかったいろいろな感情と出会えるに違いない。アニメを大人も楽しめるコンテンツとして蘇(よみがえ)らせる、それが4Kブラビアなのだ。

WOWOWにて2月28日に押井守監督特集!ドキュメンタリー他、月刊「大人のソニー」2月号で取り上げたアニメ作品が楽しめる!

映画とノンフィクションで観る!鬼才・押井守の世界

アップコンバートでアニメを楽しむなら
  • ブラビア X8500Bシリーズ

2014年4月〜2015年3月にご紹介した商品です。ご紹介商品がすでに生産完了の場合もございます。
商品について詳しくは、ソニー商品サイトをご確認ください。

押井 守

映画監督
1951年生まれ。東京都出身。大学卒業後、ラジオ番組制作会社等を経て、タツノコプロダクションに入社。84年『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』で映像作家として注目を集める。アニメーションの他に実写作品や小説も数多く手がける。主な作品に『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)、『アヴァロン(Avalon)』(2001)、『イノセンス』(2004)『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(2008)等多数。詳しくはこち

今回ご紹介した『イノセンス』は、ブルーレイ・ディスクでもお楽しみ頂けます。
通常のブルーレイソフトの他に、『イノセンス アブソリュート・エディション』も発売。
ブルーレイ・ディスクの最新高品位スペックを備えた、
究極のハイビジョンクオリティを是非ご体感ください。

文/日経エンタテインメント!編集部

原作誕生より四半世紀。2015年は攻殻機動隊 再始動!

攻殻機動隊 新劇場版

原作誕生より四半世紀を経た今年、2015年。「攻殻機動隊」シリーズの完全新作となる長編映画『攻殻機動隊 新劇場版』が2015年初夏に全国公開決定!主人公・草薙素子は、なぜ自らの部隊を求め、戦い続けるのか。そして明かされる"攻殻機動隊"の起源と、出生の秘密。今まで原作・アニメシリーズでも語られたことのない、草薙素子の出生の秘密が明らかになる。詳しくはこち
また、2013年から劇場でイベント上映が行われた『攻殻機動隊ARISE』シリーズが4月からテレビ放送されることも決定。放送話数順は、シリーズ構成の冲方丁による初期案に基づいたエピソードの流れに再構成。同テレビシリーズは、攻殻機動隊結成前夜を描いたストーリーであり、新劇場版につながる時代設定となっている。さらに6月に放送予定の完全新作エピソードは、新劇場版をさらに楽しめる仕掛けが盛り込まれた物語で構成されている。詳しくはこち 2015年、「攻殻機動隊」シリーズから目が離せない!

4Kとは?

4K映像はフルHDの4倍、約829万画素の高解像度。
大画面でも見ても細部まで高精細な画質を実現し、
フルHDでは表現しきれなかった質感やディディールまでリアルに再現します。
「ソニーが拓(ひら)く、4Kの世界」はこちら。

Sony drives 4K

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