前文

「1000曲の選曲をお願いします!」
依頼を受けた時、さすがに一瞬たじろいだ。
しかし、バンド名と楽曲名がすんなり頭に浮かべば、意外に簡単な作業かもしれないと思った。問題なのは『Music Unlimited』のカタログ・リストに、その楽曲があるかどうかだけだ。そう、楽観視していた。作業が始まった。600曲くらいまでは1日で終了した。翌日、作業を再開させたが700曲を選んだあたりでピタリと止まった。「あれっ!?」。しかし、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルは『奥の細道』にこそ面白さがある。いくつかのバンド名が思い出されれば、そこから芋づる式で掘り起し、何とか1000曲に辿り着いた。いちいち振り返って選び出したリストを確認せずに、とにかく、前進あるのみ。振り返ってリストを確認していたら時間は果てしなくかかっていたのではないか。ただ、「あの曲がないな!」とか、「あのバンドは?」とか、完成したリストを眺めては溜息が…。そういう事情もあり、大胆にも“Part 1”とさせていただいた。
ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの楽曲というのは、そのスタイルの振り幅が大きく、多様性に満ちている。一つの音楽ジャンルでこれほどまでに七変化の魅力を堪能できるものはない。ギター・ソロやヴォーカルで泣かせ、一方では世の理不尽さに怒りを込め、そして、愛を語り、そして、社会を糾弾する。しかも、実にいい曲が多いのである。1000曲を選曲するプロセスの中で、僕は改めてその事実を再確認することができた。
ハード・ロック/ヘヴィ・メタルよ、永遠なれ!

チャンネル

ハード・ロック/ヘヴィ・メタル不滅の1000曲!

伊藤政則による渾身の1000曲を収録したチャンネル
「ハード・ロック/ヘヴィ・メタル不滅の1000曲!」が登場!

プレイリスト

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (9)

    選曲/伊藤政則

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    ブリティッシュ・ハード・ロック編 『奥の細道へようこそ!』  驚くべきことに、『Music Unlimited』のカタログには、マニアをニヤリとさせる「奥の細道」的バンド群がひっそりと一角を形成している。1970年初頭のブリティッシュ・ロック・シーンのマイナーなバンドの音源はどうだろうかと調べてみると、出てくる、出てくる。そこで今回は、知る人ぞ知る「奥の細道」の第1弾。最近、約40年振りくらいで2枚目を発表したFUSION ORCHESTRA、黒魔術の世界へと誘う、キーフの絶品のアートワークでも知られる ZIOR、『Vertigo』レーベルのMAY BLITZ、そして今は亡きマイク・パトゥ率いるPATTO、 STEAMHAMMERのマーティン・ピューのもう一つの凄みを伝えるARMAGGEDON、後にFREEに参加するポール・コゾフ、サイモン・カークも在籍していたこともある BLACK CAT BONES、そして、私が実際にライヴを見て惚れたTHE SENSATIONAL ALEX HARVEY BAND等々、あの時代の熱狂がこれらの音源から伝わってきます。個人的には、毎日でも聴きたくなるセットリストだ!

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (8)

    選曲/伊藤政則

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    1980年代末、マシュー・トリップを名乗るニッキー・シックスのニセ者が登場して騒然となったことを憶えているだろうか。英国「KERRANG!」誌が毎週のようにこのマシューを取り上げ、彼が書いたという”Girls,Girls,Girls”の自筆の歌詞とやらを掲載したりしたが、”ニッキーが2人いる!”説は当然の如く真っ赤な嘘。この事件を契機にニッキーは全身に細かなタトゥを入れ、ニセ者が登場できない状況をその肉体で表現した。確かに誰もがニッキーになりたかった時代があった。ロングビーチの105.5KNACを聴き、「トルバドール」や「ロキシー」といったクラブの前にたむろし、「レインボー・バー&グリル」でお姉ちゃんをナンパする。我々が「LAメタル」と呼んだあのムーヴメントは、ハリウッドの虚構と退廃を象徴したが、本当に血沸き肉躍るシーンを作り上げた。タイムマシーンがあったら、1984年頃のハリウッドに戻りたい!酒はうまいし、お姉ちゃんはきれいで、みんながツンツンヘアで決めていた!

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (7)

    選曲/伊藤政則

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    エヴリシング・バット・ザ・ガールは80年代前半から、自分と音楽人生を共に歩んでくれている、と感じるほど敬愛してやまないベン・ワットとトレイシー・ソーンの男女デュオ。彼らへの共感と信頼は並々ならぬものがあります。そんな思い入れの深さを反映して、二人のソロ作(特にベン・ワットの『North Marine Drive』は僕の青春のアルバムです!)も含め全55曲の大ヴォリューム、最後の5曲は素晴らしいクリスマス・ソングを集めました。コール・ポーター/ボブ・ディラン/ルー・リード/ポール・サイモン/エルヴィス・コステロ/トム・ウェイツ/プリテンダーズ/モノクローム・セット/シンディ・ローパーといったカヴァー曲のレパートリーも含め、リスナーとして強く感性的なシンパシーを抱きます。胸が熱くなると同時に、どこか等身大のリラックスした気持ちにさせてくれるのです(音源のなかったベンの「Spring」やトレイシーの「Oh, The Divorces!」などの近作も大好きです)。心の深く柔らかい部分に響く彼らの音楽を、ぜひじっくりとお聴きください。

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (6)

    選曲/伊藤政則

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    ふとした時にプログレッシヴ・ロックから影響を受けたロックを聴きたくなる。しかし、DREAM THEATERの成功以降、同系統の音楽スタイルを持つバンドは増え続け、現在ではある種の飽和状態を迎えている。もう少し視野を広く持って見てみると、当然の如く、1970年代から脈々とそのスタイルは受け継がれて、様々な個性的なバンドが活躍してきたことがよく判る。アイディア次第では現在の飽和状態も突破できるのではないか。これから発売される予定のデヴィン・タウンゼントの実験的な作品や、ANATHEMAの新作、そしてOPETHの注目の新作など、革新性に満ちたアルバムが次々に登場して、この手のジャンルの未来に光が差し込んでいるのがとても嬉しい。

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (5)

    選曲/伊藤政則

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    学研パブリッシングから、8月7日に私の新しい単行本『目撃証言2 ヘヴィ・メタル:魂の旅路』が発売されます。 昨年出版した『目撃証言 ヘヴィ・メタルの肖像』では触れられなかった、ゲイリー・ムーアやSKID ROW、ACCEPT、EUROPE、RIOT等の貴重なエピソードに加え、1981年のアメリカでのニール・パートとのインタビューで綴ったRUSH秘話、そしてBON JOVI、METALLICA & GUNS N' ROSESの伝説のスタジアム・ツアーのエピソードなどを盛り込んでいます。さらに、自身のライフワークの原点となった1970年代初頭のロック喫茶時代のことや、当時、やはり、新宿のロック喫茶でDJをしていた渋谷陽一氏との対談、そして、1975年のオールナイトニッポンをスタートとするディスクジョッキー人生を振り返っています。ということで今月の選曲は単行本に登場するアーティストの楽曲を主軸に置き、後半は暑い夏を乗り切るための個人的な名曲、クラウト・ロックとアメリカン・ハード・ロックの知られざる曲を配しています。ENJOY !

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (4)

    選曲/伊藤政則

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    暑い夏に、熱く、激しいメタルの曲を聴きたいという気持ちで選曲したことは間違いありません。 しかし、それと同時に、今、とても煮詰まっております。 というのも、原稿書きに追われてます。 昨年、約27年振りで単行本『目撃証言 ヘヴィ・メタルの肖像』を出版いたしました。 実はその続編である『目撃証言2 ヘヴィ・メタル:魂の旅路』を、8月7日、学研パブリッシングから出版することになりました。 締め切りが過ぎて、なお、原稿書きが残っているという、泣ける状況の中、爆発気味の日々を過ごしています。 『目撃証言2 ヘヴィ・メタル:魂の旅路』では、1970年代初頭の新宿のロック喫茶事情にも触れています。 当時の新宿のロック喫茶『ソウルイート』のDJ、渋谷陽一さんと、『レインボー』のDJ、伊藤政則の対談も掲載されています。 あとは、読んでのお楽しみー。

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (3)

    選曲/伊藤政則

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    まさに、流浪の民の如く、我々は漂流した。『新宿ツバキハウス』は閉店になり、行く場所を失った多くのメタルヘッズを引き連れ、新宿西口の『クロスポイント』というハコで月に1回のイヴェントとして復活したが、どうしても毎週日曜日に定期的に開催したい。そして、歌舞伎町の大バコ・ディスコ『GBラビッツ』を新たな聖地とした。そのオープンの初日、もの凄い人数が開店前に列を作り、その列が『新宿コマ劇場』の前まで出来てしまい、何と、警察が事情を聞きにやって来た。初日の入場者は軽く千人は超えて、大パニックとなった。誰もが、新たな伝説の始まりを確信した・・・。『GBラビッツ』で大音量で流れていた名曲の数々がこれだ!

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (2)

    選曲/伊藤政則

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    伝説的なディスコ『新宿ツバキハウス』の正式なキャパシティは知らないが、店が別の会社に吸収されて全く別の形態になる前の最後の夜、つまり「ヘヴィ・メタル・サウンドハウス」の最終日、何と入場者は2000人近くになった。入り切れない!12月だというのにフロワーは灼熱。DJブースの前のガラスはファンの熱気でくもってしまい何も見えない。照明担当で私の弟子だったサンペーが何度も外へ出てきれいに拭くのだが全く効果はない。暑くてノドもかわく。従業員の阿部チャンが氷を入れたバケツにビールの大瓶をぶち込んでDJブースに持ってきた。 「伊藤さん、フロワーのビール売り切れです。今、従業員がビール買いに走っています!」と言う。 「ヘヴィ・メタルって凄いな!」と私。 我々は流浪の民の如く、「ヘヴィ・メタル・サウンドハウス」が実現可能な店を探して彷徨っていった・・・。そして歌舞伎町の『GBラビッツ』という店にたどり着く! その当時にかけていた曲だ!

  • 伊藤政則 FM802
    ROCK ON (1)

    選曲/伊藤政則

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    伝説的なディスコ『新宿ツバキハウス』は、伊勢丹デパートの裏、靖国通りにあるビルに入っていた。『新宿ツバキハウス』が発信した大貫憲章の「ロンドンナイト」と、私の「ヘヴィ・メタル・サウンドハウス」は、ディスコの“箱”としてのあり方を激変させ、ロック・クラブという概念を日本に持ち込んだと我々は自負している。「ロンドンナイト」から少し遅れた1981年春、「ヘヴィ・メタル・サウンドハウス」は登場した。1979年夏にロンドンで観たDJニール・ケイの「ザ・バンドワゴン」に触発されて、日本版の形で私が具現化した。大貫さんの「ロンドンナイト」の源流はTHECLASHのコンサートに登場したDJだったことはつとに有名である。我々はロックの最先端のイギリスの現場に実際に足を運び、その凄さを何とか日本に伝えようとした。今回の選曲はその『新宿ツバキハウス』で1981年から1985年頃によくかけていた曲のパート1。「ヘヴィ・メタル・サウンドハウス」の伝説が蘇る、か? ?伊藤政則?

プロフィール

伊藤政則

音楽評論家、DJ、VJとして活躍。
音楽雑誌『BURRN!』の編集顧問を務める他、様々な一般紙(誌)で執筆し、また、アルバムのライナーノーツなどを担当。ミュージシャンの伝記本も多数出版。1985年4月新潮文庫から発売した『ヘヴィ・メタルの逆襲』がベストセラーを記録。2013年には27年振りの単行本『目撃証言 ヘヴィ・メタルの肖像』を、2014年に第2弾『目撃証言 魂の旅路』を出版する。
ラジオはニッポン放送の『オールナイトニッポン』でデビュー。文化放送、ラジオ日本、NHK他で数多くの番組を担当し,現在は開局以来続けているbay fm『Power Rock Today』やFM802『Rock On』,FM FUJI『Rockadom』,そして、東北六県と広島をネットする『Rock The Nation』を担当。
テレビでは80年代に一大ブームを巻き起こしたTBSの『Pure Rock』、社会現象となった『夕焼けニャンニャン』にレギュラー出演。
現在はテレビ神奈川で『Rock City』,BSフジで『伊藤政則のロックTV!』を担当している。

FM802「ROCK ON」金曜日24:00〜27:00

FM802の金曜深夜0:00から、“メタルゴッド”伊藤政則がみっちり3時間お送りする
ヘヴィ・メタル/ハード・ロックの専門プログラム。この番組でしかきけないアーティストのレアな話、
ロックの深ーい話、そして、ハートに火をつける選曲、、あなたもいつしか、masa-Ito のトリコに、、