法人のお客様ラージセンサーカメラ 事例紹介 関西テレビ放送株式会社様 連続ドラマ『エルピス −希望、あるいは災い−』

事例紹介一覧

関西テレビ放送株式会社様 連続ドラマ「エルピス −希望、あるいは災い−」

撮影監督 重森豊太郎 様 / 照明技師 中須岳士 様

海外ドラマに負けない日本のテレビドラマを!
視聴者に伝わった “挑戦”と“想い”

©カンテレ

関西テレビ放送株式会社様は、2022年10月から放送の月曜22時枠連続ドラマ「エルピス −希望、あるいは災い−」(主演:長澤まさみ)の撮影に、CineAltaカメラVENICE 2 8KならびにVENICEを使用されました。

撮影監督

重森豊太郎 様

照明技師

中須岳士 様

海外ドラマにも負けない作品を日本の民放ドラマで!

重森様 僕は日頃CMを中心に、時折ミュージックビデオや映画などを撮っています。今回関わった「エルピス」は、僕が初めて撮る連続ドラマでした。プロデューサーや監督からは「海外からのネット配信ドラマにも負けないような作品を民放のドラマでやりたい」という想いを聞かされていました。そういうのがなければ、自分のところには来なかった話だと思います。「海外のドラマは何であんなに絵がいいのか?」と尋ねられ、「カメラが違う。コマ数が違う。カラーグレーディングをしている。この3つをやらせてくれたら追いつけますよ」と言いました。それがVENICE 2 8KやVENICEの採用につながっていきました。

   

「密度感」「立体感」が際立つVENICE 2 8Kの高画質

重森様 僕はそれまでデジタルシネマカメラは積極的に使っておらず、CMも映画もフィルム中心に撮影をしていました。今回は民放の連ドラということで、デジタル撮影が条件でした。そこでルックづくりの検討のために、各社のカメラを並べてテストすることにしました。最終的に残ったのはVENICE 2 8KとVENICEでした。特に新しい8Kセンサーを搭載したVENICE 2の画の出方はすごくよく、密度感や立体感は際立っていました。外の自然光で撮った人物の描写は素晴らしいものがありました。

個人的にはフィルムルックが好きなんですけれど、ドラマをやるなら「ドラマでクオリティーのいいもの」をやりたいと考えていました。「ドラマの“いい”って何だろう…」ということを追求したいと思っていたのですが、VENICE 2 8Kから出力された画を見て「このままでいけるんじゃないの?」と思えるものでした。大根監督も同じことを考えていたようでした。

VENICE 2 8KとVENICEをポジションと用途で使い分け

重森様 大根監督は常時2カメを使って撮るスタイルの方なのですが、当時登場したばかりのVENICE 2は1台の確保となりました。2台揃えられない、ということで、2機種の組み合わせで臨めるものかと、ちょっと心が揺らぎました。しかし、テストを行い、カラーグレーディングでVENICE 2 8KとVENICEの差をどこまで追い込めるかを確認した上で、2機種を組み合わせて使うことにしました。

当時は、VENICEエクステンションシステム2の発売前だったので、VENICE 2 8Kにはエクステンションが使えませんでした。ジンバルに載せたいシーンや、狭いロケセットでの引き尻の確保にエクステンションを使いたかったので、VENICE側に常時エクステンションを装着しておく作戦にし、2機種混在を利点と考えるようにしました。

 

僕が担当したAカメはVENICE 2 8Kで、主に引きの画を担当し、伊藤俊介さんに担当していただいたBカメはVENICEで、主に寄りの画を担当してもらいました。Aカメが寄り、Bカメが引き、というのが常識ですが、なるべくVENICE 2 8Kを引き画に据えて、密度感を生かすことにしました。僕自身は寄りを撮りたかったので「俺がまた引き画かぁ…」と悶々としていました(笑)。

時折、A・B両方で寄りを撮る場面があったのですが、そういう場面ではVENICE 2 8Kの良さを改めて感じました。VENICE 2 8Kが2台揃わなかったことで、逆にいろいろと勉強になりました。

前代未聞、連ドラを全話「8K撮影」

重森様 VENICE 2 8Kでの撮影はフルフレーム8.6K 3:2、記録はX-OCN ST、フレームレートは24コマ(23.98p)と30コマ(29.97p)との混在で臨みました。ベース感度は全体を通じてVENICE 2 8KではISO 3200、VENICEはISO 2500で撮っています。仕上げは上下切りのフルHD 16:9です。レンズはLeitzのTHALIA単焦点レンズをメインに、回想シーンでAtlasのOrionアナモフィック単焦点レンズを使用しています。

8K解像度のX-OCN STで撮影というのは、連ドラとしては相当な事件だったと思います。データ量もすごいことになるので「とにかく落としてくれ」と言われました。「いやいやいや…、とにかくいいもので撮っておいて、最終的に落とさないと違うものにならないよ」と食い下がり、妥協した唯一の点がXTじゃなくてSTでの収録でした。

Bカメの伊藤さんは技術コーディネートも担当してくださっていたのですが、最初のテスト撮影で初めてお目にかかった時からシンパシーを感じていました。僕が途中で挫折しかけた時も、幾度となく「ここ、勝負どころだから諦めちゃだめですよ!」と支えてくれました。もっとも大きな壁は「24コマ」だったのですが、伊藤さんの存在なくしては乗り切れなかったと思っています。

“ドラマの裏側にあったドラマ”、最大の壁だった、連ドラではなかなか実現しない「24P」

重森様 最大の壁は「24コマ」でした。民放のあの時間帯のドラマを“24”では撮ることは、相当な挑戦でした。大根監督も「“24”ではできないから…」「やったやついないから…」とおっしゃられていました。関西テレビのプロデューサーの佐野さんから「今まで作ったことないから大丈夫か」と。 カメラテストも行って、実際に見てもらったりもしたのですが「“24”はシネマチックすぎる」「テレビドラマにしてほしい」と。

しかし、テレビ局を舞台にしたシナリオのドラマだから、テレビ局のシーンは“30”、それ以外の芝居を“24”にすることで、その差が生まれ、さらに過去のシーンをアナモフィックレンズで撮ることで、解像感がちょっと甘くなり、記憶の中の表現として、映像のポテンシャルを作り分けようというのが自分の撮影設計でした。全て“30”にしてしまったら、今までと変わらない、いつものテレビドラマになってしまうと感じていました。

一方で、『エルピス』は佐野さんが6年もの長い間、温めてきた企画でした。僕がやってきていきなりコマ数を崩すのはどうなのかと、慎重に考えました。VENICE 2 8Kで撮れるし「“30”でいいか…、“24”は忘れよう…」とも思いかけていました。クランクインを1週間後に控えた最後のテスト撮影の後も平行線のまま。そこで佐野さんが「全員に聞いてみましょう」と提案してくれました。結果は、多くのスタッフが「“24”がいい」という意見でした。最終的に大根監督が「今回は…“24”でいきます!」と宣言してくれました。

この時の決断は、後から振り返って「あぁ…“24”にして良かったなぁ…」と思えるんじゃないか…と考えていました。「佐野さん、ごめんなさいっ!でも、必ず良くしますから!!!」と、心の中で叫びました。最終的に「これは良いものになる」と決心してもらった佐野さんも、この決定を自ら局にかけあってくれ、了承を取ってくれました。だいぶご苦労をかけただろうと思います。

映画でもドラマでもない「重いんだけどポップ」感を切り拓く

重森様 現場でのモニタリングは、カメラテスト時に作ったLUTで行いました。カラーグレーディングでは「もうちょっとディテールとか解像感とか出ないの?」と繰り返し求めて、それを元にして、1からグレーディングを行いました。全体のベースのトーンを用意した上で、シーンごとにストーリー展開に合わせたトーンを加えています。

今回は「海外にも負けない日本の民放ドラマ」を目指していたので、映画とも今までの民放ドラマとも違う「重いんだけどポップ」というルックを目指しました。重い方が感情移入していくので、軽くはしたくありませんでした。しかし連ドラとしては、重い脚本をそのまま見せられない。大根監督の演出も、狙いでライトにしているように感じました。それに追いつくポップな感じを色や照明で作ろうと考えました。

僕はフィルムルックが好きなので「画をなまらせていくことによって良くなる」みたいな哲学を持っていたのですが、解像感や立体感、密度感を追求する良さもあることに気づき、このドラマではその方向でグレーディングを行いました。

VENICEに比べVENICE 2 8Kが、さらに磨きがかかっているというところは、カラーグレーディングを担当してくださった長谷川さんも感じていたみたいです。もちろんグレーディングは気を付けていますし、寄り・引きや、カット変わりもありますから、ドラマを見た方は気づかないレベルで調整されています。しかし、作り手である我々の目では、よく見ると「やっぱりVENICE 2 8Kは、磨きがかかったなぁ」という場面が多々ありました。

カラーグレーディングは、長谷川さんサイドでの仕込み時間を別にして、毎話2〜3日を費やしていました。この点も、よくやらせてくれたと思います。

「新たな照明のセンス」を問いかけたVENICE 2 8K

中須様 VENICE 2 8Kはラチチュードがさらに広くなったと聞いていました。感度も高く、ナイト・オープン(夜の野外ロケ)でも、街の灯だけで撮れてしまう、と。しかし最初は、そのことに対して否定的でした。それはただ映っているだけで、ライティングの良さはありません。ドキュメンタリーではないので、ドラマチカルな空間を作る上で、照明部としては何らかのアプローチは必要になります。

VENICE 2 8Kでどれぐらい映るものかと、ナイトシーンのテストをしました。コインパーキングのバックライト看板なども、カラーグレーディング後ではトバずにしっかりと残っていました。ソニーのシネマカメラには「F35」の時代から関わってきていましたが、格段にラチチュードが広がっていることを改めて実感しました。

特にVENICEの画を見て感じたところは「ブルーの抜けが全然違う」というところでした。照明を強めに当てても潰れずにブルーがしっかりと残ります。とにかく透明感があります。とても感覚的なのですが、再現性がすごくいいなぁ…と感じました。

今までナイト・オープンなら、全体を照らすベース照明を作ったり、逆を打ったり、といった作業が必要でしたが、VENICE 2 8Kでは現場の灯りの良さを生かせます。逆に言えば、何でも映ってしまう。照明づくりも、「これを塞ごう」「これを柔らかくしよう」という方向に変わりました。照明の新たなセンスが問われることを実感しました。

「素直」がVENICEの良さ

中須様 第一話の放送の時には、まだ撮影が続いていたこともあり、私はカラーグレーディングには立ち会えませんでした。結果、オンエアが初見だったのですけれども、おかげでとてもフレッシュな気分で見ることができました。カラーグレーディングを経て、さらにリッチになったVENICE 2 8KやVENICEの映像を見て、すごく良いドラマに仕上がったと感じました。

これまで重森さんとやっていて、デジタルは「予算で仕方なく」という話が多かったように思います。業界で広く使われていた海外老舗メーカーのデジタルシネマカメラも「フィルムに近い色だから」というのが、選ばれていた多くの理由でした。しかし、VENICE 2 8KやVENICEはフィルムの延長線上ではなく、全く別の道を行くものだと思いました。デジタルならではの良さを引き出したカメラ、という印象です。

重森様 僕も何度か出来上がった番組を見返しましたが、VENICEいいなぁ…と思うシーンがいくつもありました。VENICEで撮って良かったと思います。VENICE 2 8KやVENICEの映像の印象は「すごい素直」。カメラについている癖がほとんどなく、癖を自分でつけられる。それがいいところです。他の多くのデジタルシネマカメラでは、特有の癖があり、どうしても、そのカメラで撮った感が出てしまいます。このドラマを撮ったことがきっかけで、以後VENICE 2 8KやVENICEは結構使うようになりました。

視聴者に伝わった「クオリティー高く撮りたい」という挑戦と想い

重森様 このドラマでは、8K撮影や24P、多大な時間を割いてのカラーグレーディングのみならず、フリーランスを中心としたスタッフ構成など、挑戦的なことをあらゆる面で行いました。予算も単純にはまるようなものではなかったはずです。プロデューサーの佐野さんや稲垣さんに始まり、関わってくださった皆さん1人1人の挑戦があって成し遂げられたと思います。現場のみならず、私たちを信じて託してくださった関西テレビ放送さんにとっても大きな挑戦だっただろうと思います。

これらは、このドラマの脚本自体に「挑戦する」人々が描かれていたことが大きかったと思います。この作品でギャラクシー賞「テレビ部門 個人賞」を受賞した主演の長澤まさみさんにはじまり、鈴木亮平さん、眞栄田郷敦さん、素晴らしい役者陣の方々、スタッフみんなの挑戦も、作品にしっかり出せたのではないかと思います。僕にとっては、登場したばかりのVENICE 2 8Kで撮るということも、その挑戦の1つでした。

中須様 照明も「エルピス以前」「エルピス以後」なんて言葉で語られる場面があると聞いています。「テレビドラマで照明をあそこまで締めていいんだ」とか「明るくしていいんだ」と。
今回の挑戦で、日本のテレビドラマが世界に向かう風穴を開けることはできたのではないかと思います。関西テレビ放送さんの制作だったというのも、こういったことができた大きな理由だったと思います。撮影も照明も、フリーランスを中心としたスタッフ構成で臨ませてもらえたからこそ、こういった突き抜けたことができたと思います。

重森様 「“24”で撮ったら、暗い雰囲気になって視聴率が落ちる」というのが、これまでのテレビドラマの定説でした。しかし、SNSでも「普通のドラマと違う」という声をたくさん見かけました。海外からのネット配信ドラマなどで目が肥えている人たちにはわかってもらえた。「クオリティー高く撮りたい」という想いは伝わったと思います。それが、ギャラクシー賞「テレビ部門 大賞」の受賞にもつながったのではないかと感じています。

取材:2023年6月

「エルピス −希望、あるいは災い−」 Blu-ray&DVD 発売中

https://happinet-p.com/elpis/ 別ウィンドウで開きます

ラージセンサーカメラ サイトマップ