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映画『ミスミソウ』

エグゼクティブプロデューサー 鈴木仁行 様(レスパスビジョン株式会社 代表取締役) / 撮影 四宮秀俊 様
ハイスピード撮影、電子式可変NDフィルター、広大なラチチュードが銀世界により美しい映像表現を生む

映像化は不可能と言われていた人気漫画家・押切蓮介氏の最強トラウマ漫画を実写化した映画『ミスミソウ』は、XDCAMメモリーカムコーダー「FS7 II(マークツー)」で撮影されました。雪の中で繰り広げられるアクションシーンでは、FS7 IIのハイスピード撮影や電子式可変NDフィルターが駆使され、14stopという広大なラチチュードと合わさり、より美しい映像で表現されています。この映画制作を前にFS7 IIをいち早く導入されたレスパスビジョン(株)およびレスパスフィルム(株)の代表取締役で同作品のエグゼクティブプロデューサーである鈴木仁行様と、映画・ドラマ・VP・MVなどさまざまな映像を手がける同作撮影監督の四宮秀俊様にお話を伺いました。

  • エグゼクティブプロデューサー 鈴木仁行 様

  • 撮影 四宮秀俊 様

残酷・残虐な中にも透明感のある「静謐」な映画に

四宮氏 内藤瑛亮監督はこの『ミスミソウ』という作品を残酷な内容ではあるけれど、どこか静かで透明感のあるような「静謐な映画にしたい」と話していました。ともすると過激な残酷さや残虐さの描写方に軸足をとられてしまいがちですが、“子どもたちの成長譚”という側面にも重きを置いた青春映画の感覚を目指しました。かつて漫画家を目指したこともあるという監督の絵コンテを見て、すごくワクワクしたのを覚えています。監督の頭の中にある様々なイメージを映像にするのは難しいですが、その絵コンテが全員で力を合わせて進んでいくための良い指針になりました。絵コンテに描かれたものをどのように撮ればいいのか、多くちりばめられた様々なアイデアをいかに工夫して表現するかにこだわりました。

鈴木氏 見せどころの一つである雪の中のアクションシーンでは観客が目を背けたくなるようなシーンが続きますが、雪の「白」とそこに飛び散る血の「赤」の対比のようなものを含め、単なる残酷なシーンではなく、ある種の「静謐」ともいえるような白と赤のコントラストによる映像美につなげていくことを目指しました。

カメラ選択のポイントは「ハイスピード撮影」

鈴木氏 今回の『ミスミソウ』の制作を前に「FS7 II」を導入しました。映画『HK 変態仮面』の頃から、当社が制作する案件でいつでも使えるようなカメラを用意しています。これまでのカメラはハイスピード撮影の際にメディアを変更する必要があるなど撮り回しが面倒で、それに代わるカメラを探していました。『ミスミソウ』の撮影ではハイスピードを多用することがわかっていたので、ハイスピード撮影のたびに現場を止めることなく、すぐに切り替えることができるカメラとして「FS7 II」を選択し、発売されてすぐに購入しました。アクションシーンなどでは、編集時のエフェクトと合わせることで、ヒットしたリアル感が増すため、ハイスピード撮影は定番になりつつあります。

四宮氏 実際の撮影でも、“ここぞ”というカットでは、ハイスピードを使用しています。本作ではそのようなカットが多いため、頻度は高めです。現場では最もコマ数の多い180fpsを多用しました。ノーマルからハイスピードまで1つのボディ内で完結でき、即座にハイスピード撮影に切り替えることができるFS7 IIの選択はベストだったと思います。 ※ハイスピード撮影時にはProResからXAVCに切り替えて撮影

XDCA-FS7を装着し、XQDカードにProRes 422 HQで収録

四宮氏 撮影フォーマットにはビットレートの高いProRes 422 HQを選択しました。FS7 IIに拡張ユニット「XDCA-FS7」を装着し、XQDカードに素材を収録。フレームレートは23.98p。HDの画角で撮影し、完パケでは上下に黒みを入れるシネスコを採用しています。

鈴木氏 今回はXQDカードを豊富に用意し、撮影後は収録した素材をHDDでバックアップするとともに、XQDカードのまま当社の編集室に持ち込み、編集およびカラーグレーディングを行いました。

雪景色の撮影の中で感じた“電子式可変NDフィルターの魅力”と“レバーロックタイプEマウントの安心感”

四宮氏 通常は被写界深度を揃えるためにNDフィルターの交換を何度もしています。しかし、FS7 IIは電子式可変NDフィルターによって、絞りを固定したまま露出を調整していくことで、被写界深度を変化させずに最適な露出を得ることができます。今回は特に雪の中でのアクションカット数が多く、シーン自体も長かったので、時間の短縮化が図れて、撮影がスムーズになるこの機能を非常に重宝しました。
そしてまた、アクションシーンが多いことから、レンズチェンジを頻繁に行わずに済むズームレンズを使用していました。単玉レンズよりかなり重いズームレンズを装着したカメラを振り回す撮影において、レバーロックタイプEマウントの高い剛性は非常に安心感がありましたね。

“雪の白さ”にS-log3と広大なラチチュードが寄与

四宮氏 本作は、雪の白と制服の黒や血の赤など、コントラストが激しいシーンがあるのでlog収録が必須でした。S-log3で収録することにより、雪の白が飛ばないようにラチチュードを確保しながら撮影できました。また、雪の中で一日中撮影していると、太陽の位置の関係で色温度がどんどん変化していきます。晴れの設定、曇りの設定、どちらかに合わせても、少しの天候の変化で雪の色はカットごとに変わってしまう。そのシチュエーションを統一することが難しかったです。そうした色の調整も含めて、ProRes 422 HQ収録によって色の情報が残されていますから、カットごとに雪の色を合わせるために時間をかけました。その点で、14stopというFS7 IIの広いラチチュードは非常に役立ちました。現場でのモニタリング用のLUTに関してはFS7 IIに内蔵されているLUT「Cine+709」を使用しましたが、非常に使い勝手の良いLUTだと思います。

幅広く対応できる使い勝手の良いカメラ

鈴木氏 FS7 IIは、手頃なバジェットの映画作品には非常に使い勝手がよいカメラだと思います。この価格帯で4KからHD、ハイスピードまで完備しているため、使える範囲がかなり幅広い。当社が手がけている映画『ラーメン食いてぇ』(2018年3月3日公開)のキルギス共和国における撮影にもFS7 IIが使用されています。

制作・技術部門の一体化で高い効率性とクオリティアップ

鈴木氏 オフライン編集を主業務として1987年に設立した当社は現在、ミュージックビデオからテレビコマーシャル、映画・ドラマの総合ポストプロダクションとして展開しています。さらに、2013年11月には映画制作向けにクオリティコントロールと的確なワークフローを積極的に提案することを目的に、制作プロダクションとしてレスパスフィルムを設立しています。
ワークフローが多様化している現状で、当社ではポストプロダクションとして最適なワークフローと一貫したクオリティコントロールを積極的に提案してきました。その一方で、映画作品におけるポストプロダクション技術の確立には、様々な障壁があるのも事実です。コストやスケジュールの圧縮だけでなく、クオリティの向上をさらに追求するために、制作部門と技術部門が一体化することも方策の1つ。レスパスフィルムの制作プロダクションとしての参加も、そういった取り組みの一環です。

映画・ドラマの4K収録がさらに進んでいく

鈴木氏 映画だけでなく、テレビドラマでも4Kで収録しておくことで、インターネット上での4K配信など、当初予定していなかったような販売先が広がる可能性があります。収録した4K素材をダウンコンバートして放送用にHD完パケする一方、4Kマスターから4K仕上げを行って4K完パケするといったケースも増えてくると考えています。実際に、当社が携わった深夜ドラマなどは、当初からインターネットでの4K配信を想定して4K収録が行われています。

現場の緊張感の中で成長していく

四宮氏 雪の中での撮影はファインダー内の結露など、さまざまな苦労・問題はありますが、今回一番大変だったのはキャストのみなさんです。私たちスタッフのように防寒もなく、雪の上で転がり回ったり、寝転んだり、血糊をかけられて動けなかったり。ただ、そうした環境での撮影は、かなり過酷なストーリーを演じる上で、役作りやストーリー展開に対する緊張感に大きく寄与していたのではないかと思います。この映画では、残酷な描写や過激な描写もありながら、そのような過酷な状況でも更に輝きを増していく少年少女達を描く、どこか青春映画の感覚を目指していました。緊張感の中で、少年少女たちが時間を経るに従ってストーリーに合わせて成長していく姿を、ファインダー越しに見ているのはすごく楽しいことでした。

映画『ミスミソウ』

(2018年4月7日から新宿バルト9他、全国順次公開)
公式HP:http://misumisou-movie.com/

監督は少年少女を主人公としたクライムサスペンスの名手で『ライチ☆光クラブ』『パズル』『先生を流産させる会』などを手がけた内藤瑛亮氏。雪に覆われた過疎の町で繰り広げられる凄惨な復讐劇というかつてない試みに挑戦し、残酷で絶望的な物語を巧みに描き出していきます。主人公を演じるのは、CM「城とドラゴン」で注目を浴び、抜群の透明感を放つ現役女子高生でネクストブレイク女優の山田杏奈さん。初主演となる彼女の透明感溢れる清純なイメージとは裏腹に、心をえぐられるような熱演が注目されます。

STAFF LIST

「ミスミソウ」製作委員会:日本出版販売(根岸悟、室谷陽平)、日活(永山雅也、中野則俊、宮前孝幸)、バップ(穂山賢一、末吉太平)、レスパスビジョン(木村靖英、鈴木朋生)/制作プロダクション:レスパスフィルム/配給:ティ・ジョイ

製作:安井邦好、新井重人、岡本東郎、鈴木仁行/プロデューサー:田坂公章、原田耕治/原作:押切蓮介「ミスミソウ 完全版」(双葉社刊)/監督:内藤瑛亮/脚本:唯野未歩子/音楽:有田尚史/ラインプロデューサー:森満康巳/キャスティングプロデューサー:増田悟司/撮影:四宮秀俊/照明:秋山恵二郎/美術:山岸譲/録音:根本飛鳥/特殊メイク・造型:百武朋/アクションコーディネート:富田稔/編集:大永昌弘/サウンドデザイン:浜田洋輔/VFXディレクター:呉岳/制作担当:山本敏司/制作デスク:林あゆみ/小道具:ZAKI/カラリスト:小林哲夫/ポストプロダクションマネージャー:星島健介/Editorial I/Oマネージャー:三宅邦明/Editorial I/Oオペレーター:五十嵐美紀/CGIアーティスト:高久湧也、石澤智郁/Photogrammetryスーパーバイザー:中島俊彦/モデリングアーティスト:内海航/エフェクトアーティスト:中口岳樹/マッチムーブアーティスト:Paola Agostini/コンポジター:萩原有笑、須賀努、伊藤侑希/ロトスコープアーティスト:本郷禎一、中川正、大江康弘、阿部誠人、大津直紀/助監督:桑原周平、岡部哲也、石井将、小池隆太、田口隆太/撮影助手:田村翔、関口洋平、中島寛貴、橋本朱理/照明助手:西あずさ、吉永良芽生、和田郁未/照明応援:永井了晟、中谷陽介、横山美奈、蟻正恭子/録音助手:戸根広太郎、伊豆田廉明、小黒浩聡/特殊造型助手:並河学、河合桃子/アクションコーディネーター補:大隈一哉/編集助手:福地楓/カラリスト助手:榎園 乃梨恵/整音助手:小笠原千紘 (敬称略)

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