商品情報・ストアデジタル一眼カメラ α α Universe

「私説・大磯百景 撮影録」
六月

神奈川県大磯は小澤が住んでいるところです。ここで自分自身が住んでいる場所の写真を取り上げるのは、この場所でライフワークとも言える写真を撮り続けているからでもありますが、皆さんに御自分の身近な場所に意外に写真になるところがある、ということをもう一度思い出してもらいたいからでもあります。幸せの青い鳥ではないけれど、何も遠い場所の絶景を求めなくても近所に「いい写真」はあるかもしれない。自分の街には何もない、という方も自分の県にはあるでしょう。みんなでそれぞれの「〇〇百景」が撮れたらいいなと思います。

六月は雨の季節ではあるけれど、梅雨の合間に一瞬の晴れ間が見せる、あるいは雲の変化が見せる空の様子の面白さは捨てがたいものがあります。いい空だなと思ったらすぐに出かけてお気に入りの場所で写真する。これは住んでいるものの強みですね。

また、一つの場所をいろんな写真を組み合わせて表す時、広い風景を見せる写真と、至近距離の狭い空間を見せる写真を組み合わせていくと、世の中を大きく多角的に見る視点を表現することができます。その場合気をつけることは、何枚もの写真たちがなんとなく一つの雰囲気になっていること。明るい写真や暗い写真があってもいいし、時にはわざと破調を持ってもいいけれど、トータルには基調というものがあったほうがいい。そういったことを少し意識して撮影するといいでしょう。

「こゆるぎ浜夕景」

相模湾に面する大磯の浜は「こゆるぎ浜」と呼ばれています。「こゆるぎ」は「小動」とも書き、「小揺」「小淘綾」とも書く古くからの大和言葉で、浜の小石が穏やかな相模湾の波で小さく騒めくことからその名前になったのでしょう。夕日はすでに箱根の山に沈み、誰もいなくなった浜に波が打ち寄せています。日没後ほんの10分ほどのマジックアワー。この色はこの時にしか出ない色。写真というものは、「その時そこにいた」者だけが手に入れられる宝物です。
光がいいと思ったら、逃さず現場に出かけましょう。また、こういった写真はシャッタースピードをどれくらいにするかが個性の出るところです。

α7R|Elmarit-M 21mm 0.6sec F8 ISO 50

「湘南平・富士遠望」

湘南平は大磯駅の北側に連なる山々の奥、車で山頂まで行け、夜景が綺麗なので湘南の若者たちのデートスポットにもなっていますが、写真するのにもいい場所。強い低気圧が去った日、そんな日には雲が芸をしますね。夕日と雲の具合が良ければ富士山が劇的になります。長いタマを担いで山頂に行ってみる甲斐のある日です。刻々と変わる空の様子を見ながら、雲の位置によって構図を変えていき、暗くなるまでにベストカットを逃さず写真にしなくてはなりません。

α7R|300mm|F2.8 G SSM 1/50 F4 ISO 200

「国府本郷・街角の紫陽花」

駅前を離れて、国道一号線の城山(じょうやま)の切り通しを抜ければ、旧東海道は一号線から別れて国府本郷の町を通る。このあたりは奈良時代に相模国の国府(今の県庁のようなもの)があったところ。街中を通る小道には軽自動車も通れないような古い道もたくさんある。鋭角に曲がるそんな小道の角に紫陽花が咲いていました。これは雨の日。雨の匂いと濃密な空気をを撮りたいと思いましたが、それを表すのに濡れて逆光に光る路面が役に立ってくれました。

α7R|Elmarit-M 21mm 1/80 F8 ISO 800

「下町の猫」

曇ってはいるが気温が高い日、大磯駅前から海に向かって下って行くと、港近くの下町の路地にノラが寝っ転がっていました。猫はこんな日、少しでも涼しいところをよく知っています。真似して寝っ転がってみると微かな風が頬を撫で、それがよくわかりました。小澤も猫になって塀の上を歩いたり、草むらで虫を追ってジャンプしたいけれど、そういうわけにもいきません。せめて一緒に寝っ転がってしばし猫になってみました。最初はよそよそしく警戒していた野良も、こっちを無視できるようになるくらいの時間、ネコパンチを食らわせられそうな距離で、お互い干渉し合わずにしばらく横になってみました。ワイドレンズのローアングルはこんな時の気分にピッタリです。

α7R|FE 24-70mm F4 ZA OSS 1/320 F4 ISO 800

「生沢・東の池の蓮」

今月の最後は造形写真で。。大磯町西北部、生沢は古くからの農地の広がる緩やかな山麓の地域。今は畑が多いが昔は神奈川県でも上位の米どころだったという。通称「東の池」はそのほぼ真ん中にある多分江戸時代の人工の貯水池。初夏には蓮の花が見事に咲くので写真ファンたちが多く訪れる場所です。この日も蓮は立派だったが、この写真のシーンが印象的でした。造形を見せる写真では、画面構成を真剣に考えなくてはいけません。完全に収まり切った写真にしたいのか、ほんの少しの不安定さを見せて写真を印象深くしたいのか。スナップと違って時間はあるのですから、よく考えるようにしたいものです。色の配置も考えたいですね。

RX100M3|1/160 F6.3 ISO 125

さて今月はこれで終わり。また来月お目にかかります。
皆さんも住んでいる場所の近くの名場面を見逃さず、いい写真を撮ってくださいね。

記事一覧
最新情報をお届け

αUniverseの公式Facebookページに「いいね!」をすると
最新記事の情報を随時お知らせします。

関連記事
閉じる