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COLORS −鉄道彩美−
鉄道写真家 中井精也 氏 Vol.7
中井氏が“α”で描く美しき色彩の鉄道風景!
デジタルカメラマガジンとの連動企画を
毎月コラム形式でお届けします

α Universe editorial team

みなみなさんこんにちは。鉄道写真家の中井精也です。 今回のテーマカラーは「白」の世界です。
白色と言えば、やはり“雪”ということで、最高の白の鉄道風景を求めて僕が向かったのは、福島県を走る只見線です。会津西方駅と会津桧原駅の間に位置する「只見川第一橋梁」。ここはあまりの絶景から世界中に紹介され、海外からもたくさんの観光客が訪れる、まさに日本を代表する鉄道絶景ポイントです。深い谷の間に美しい鉄橋がかかる、まさに最高のシチュエーション。さらに運が良ければ只見川が水鏡となり、水面に列車を映すシーンまでも狙えるのです。 現場に到着すると見渡すかぎりの白銀の世界。期待に胸をふくらませて撮影地に向かいますが、1日に数本しかない列車が鉄橋を通過するタイミングになると吹雪になってしまい、水鏡どころか鉄橋すら見えず、列車の音だけが聞こえる辺り一面が真っ白な世界に立ち尽くしたまま、撮影初日は終了となってしまいました。 翌日も午前中は積雪による倒木のため列車は運休。想像以上の豪雪に、復旧作業にあたられている方々の安全を願いつつひたすら待ち続け、午後になって、ようやく運行再開となり列車が走ってきましたが、結局2日目も風が強く水鏡になることはありませんでした。 そして現地に到着して3日目の朝、計8回目のチャレンジでようやく撮れたのが、こちらの写真です!

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 86mm,F4.5,1/640秒,ISO1600

空気がピンと張り詰めた極寒の中、前日まで降り続けていた雪が大気中の塵を取り払ってくれたのか、とても視界がクリアーに見えました。樹木が白い薄化粧をまとった白一面の世界、頭の中に思い描いた光景が僕の目の前に広がっていました。あまりにも美しい光景に目を奪われて、しばらくシャッターボタンを押すことを忘れて見とれてしまいました。只見川に水鏡となり列車が写り込んでいることを確認し、夢中でシャッターボタンを押しました。 この「只見川第一橋梁」は冬に限らず、美しい光景を見せてくれる素晴らしい場所ですが、白に染まった冬の姿は格別じゃないかと思います。美しき静寂の世界を、余すことなく残すことができた1枚だと思います。 ここで2枚目!とはいかずに、今回のテーマカラーである「白(雪)」の写し方について、少しだけアドバイスをさせていただきたいと思います。 そのアドバイスとは、ホワイトバランスの設定です。
ご覧いただいた1枚目の写真を見ていただくとお分かりかと思いますが、真っ白というよりは、ほんの少し青みがかった白で表現しています。
ホワイトバランスの設定をオートにすると、補正によってカメラが白を白として描写しようとします。しかし、今回はあえてホワイトバランスを太陽光に設定して、僕が意図する、その場で感じた雰囲気を表現することを優先させました。
もちろんどちらが正解ということではありませんが、僕は何でもオートに任せず、こうして自分が表現したいと思うことに合わせて設定を変えてみることをお勧めします。
それから、白い被写体の場合は露出を少しプラス側に補正してあげると、透明感のあるキレイな表現に仕上げることができると思います。 それでは2枚目をご覧ください。

α7R IV,FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 156mm,F5,1/400秒,ISO1600

2枚目は「只見川第二橋梁」を撮影したものです。
この写真では鉄橋ではなく、左下に見える集落を主題とした構図にしてみました。見渡す限り続く森と、その中で身を寄せ合うように建ち並ぶ集落が、冬の旅情を誘います。1枚目と同様に、この写真でも雪に覆われた樹木の1本1本まで、とても精緻に描写されていることが分かっていただけると思います。 R IVの高解像にG Masterの高解像。ふたつの高解像が組み合わさって撮られた、この精緻な描写力は本当に圧巻だと思います。 3枚目になります。3枚目は1枚目、2枚目とは異なるアプローチを試みてみました!

α7R IV,FE 135mm F1.8 GM 135mm,F1.8,1/320秒,ISO1600

雪景色の中で鉄道風景を撮りにいく時に僕が気を付けているのは、被写体との距離感です。どうしても絶景をたくさん画面内にとりこもうと、ついつい「引き」の構図ばかりになりがちです。気がついたら遠景の写真ばかりなんてことも・・・。
この3枚目の写真では遠景では無く雪深さを凝縮した表現をしたいと思い、手前に雪を大きく前ぼけさせてみました。
レンズは、ぼけによる表現を最大限に引き出すためにFE 135mm F1.8 GMにして撮影に臨みました。手前を雪で前ぼけにしつつ、後方は雪に覆われた樹木、そしてトンネルから出てくる瞬間の列車を右上に配置しています。
如何でしょう?135mmの適度な圧縮感も相まって、雪深さを幻想的に表現できたんじゃないかなと思います。 それでは続けて4枚目の写真をご覧ください。

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 109mm,F5.6,1/500秒,ISO400

この写真は会津水沼と会津中川の間にある「只見川第4橋梁」です。只見線の鉄橋は、どの鉄橋を撮っても本当に美しいと思います。
ちょっと構図の話になりますが、こうした鉄橋を撮るときは、鉄橋を通過する時の列車を、どこに配置するかが1つのポイントになります。鉄道写真では列車が来る前に構図を追い込むことが多いと思いますが、鉄橋が在る時は特に鉄橋だけを見て構図を作ってしまいがちです。でも鉄橋をよく見るとトラスがあるため、列車の先頭部が見えるのは鉄橋の前後のわずかな部分しかありません。鉄橋だけに注視せずに、列車が通過した時のことも想像しながら構図を追い込むと、よりバランスのいい構図で撮れます。
この写真では、列車が鉄橋を越えて、少しだけ列車の顔が鉄橋を出た瞬間にシャッターを切ることで、列車の存在感を出せたと思います。

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 110mm,F5.6,1/400秒,ISO400

5枚目は、鉄橋を越え樹木の中を通過する列車を撮影したものです。この写真では、先に風景だけでも成立するような構図を作っておいて、左隅に列車が入る場所を開けておくようにして撮影タイミングを待ちました。
まるで水墨画のような風景の中に、空けておいた左隅に列車がさしかかった瞬間を撮りました。僕の狙い通り厳寒の雪の樹木の中を突き進む列車の、力強さを感じれる1枚が撮れたんじゃないかと思います。
因みに先ほどご覧いただいた4枚目は109mm、この5枚目の写真は110mmと、どちらも焦点距離はほぼ同じくらいで撮っています。きっと印象が大きく違って見えると思いますが、その理由は、画面に奥行き感があるかないかです。同じ焦点域でも、これだけ違った表現ができることも意識しながら撮影場所を探してみるときっともっと撮影が楽しくなると思います。 それでは今回ご覧いただく最後の写真です。

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 113mm,F5.6,1/200秒,ISO400

ご覧いただいてお分かりのとおり、只見川のすぐ傍を走る絶景区間です。こうしてみると本当に険しいところを走っていることが分かります。こんな場所に線路を敷いた鉄道員の方々の尽力に想いを馳せながら撮影しました。
列車を待っていると、只見川から吹く冬の空気が静かに僕の顔をなでていきます。とても冷たいその清廉な空気が、なんだか僕を静かに癒してくれているような、そんな気がしました。
撮影初日から吹雪に見舞われ、改めて冬の撮影の厳しさを痛感した今回の旅でしたが、奥会津の美しい風景に出会え、僕が思い描いた「白」の世界を存分に捉えることができた旅となりました。 さて次回の旅では、どんな色と出会えるのでしょう。
では来月もこの場所でお会いしましょう。中井精也でした。

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