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チリ皆既日食とイースター島の星空 後編:「イースター島の星空」

天体写真家/沼澤茂美

α Universe editorial team

地上で見ることのできるもっとも劇的で感動的な自然現象が「皆既日食」だと言われています。各地の神話にも登場し、1国の運命さえも変えてきたこの天文イベントは、科学的にそのしくみが解明され、正確な予測も可能になった現代においても、人々の心を引きつけ、人生観を変えるほどの影響を与え続けています。その皆既日食が去る2019年7月3日(現地時刻2日)南米チリとアルゼンチンの一部で見られました。私はチリの首都サンチャゴから北に500キロに位置する都市「ラ・セレーナ」で皆既日食の撮影を行い、その後チリの4000キロの沖合に浮かぶ絶海の孤島「イースター島」を訪れました。漆黒の夜空に輝く天の川の姿はめまぐるしく変化する条件の中でも圧倒的な存在感を持って眼前に迫ってきました。

沼澤茂美 SHIGEMI NUMAZAWA 新潟県生まれ。天体写真、天文・宇宙関連のイラストレーション作品を多数発表。「月刊 天文ガイド」をはじめ、天文ジャンルの雑誌・書籍で執筆活動、作品発表を精力的に行っている。NHKの科学番組の制作や海外取材、ハリウッド映画のイメージポスターを手がけるなど広範囲に活躍。著書多数。

α7R III 70-200mm F4

ラノ・ララクから見たトンガリキのモアイ
トンガリキのモアイはイースター島最大のモアイ群で日本の重機メーカーによって復元された事で知られています。

かつて、2010年7月にイースター島で皆既日食が見られたことがあります。私はその時以来9年ぶりの訪島となりました。当時は世界中から日食ファンがこの差し渡し20キロ程度の小さな島に集まったために、十分な滞在時間が取れずに星空の撮影はほんの短い時間しかできなかったのですが、今回はそのリベンジとして十分な準備とともに臨みました。 しかし、待ち受けたのは9年間の間に起きた大きな変化でした。島に散在するモアイ像の周囲は柵で囲われ、午後5時半以降の中に入ることはできないと言います。貴重な世界遺産を守るための手段としては致し方ない部分もあります。それを守らない場合は、帰国後でも本人を特定し厳しい処分が下されると言うことです。 それに加えて、イースター島の天気は絶望的な様相を呈していました。初日は曇り、翌日は雨の予報です。実際その予報は的中しました。ただ、絶海の孤島ならではの天気の急変は期待されました。日没から宵の時間には星一つ見えない状況に、我々撮影チームは最悪の結果を想定していました。受け入れなければならない自然の営みであることは十分に承知していたのです。
そんな状況が一変したのは夜半前のことでした。 雲の合間に明るい星がいくつか見え始めました。期待をしながら車を走らせ、私達は町からもっとも離れたモアイ像のあるトンガリキに向かいました。ここは日本の重機メーカーの協力で復元したモアイ像が立ち並びますが、周囲を囲む柵の近くに1体だけ立つモアイ像があります。これは柵の外からでも星空と共に撮影できる貴重な存在でした。このモアイこそ、1982年、大阪で開催されたイースター島の巨石展で日本に持ち出され、後に「モアイ・ハポネス」(日本のモアイ)と呼ばれているモアイだったことは、帰国後に知ることとなりました。

α7R III,FE 24mm F1.4 GM,F1.4,30秒,ISO2500

日本人のモアイとはくちょう座の天の川
トンガリキの側にある単独のモアイです。夜半に雲が切れ始め、日本の七夕の天の川が圧倒的なコントラストで輝いています。

イースター島の天候は2晩連続で夜半から晴れるという特徴を見せました。雲間に見える星空は見事なコントラストで迫ってきます。特にこの時期見ることのできる明るい夏の天の川(南半球は冬)、天の川は私達の銀河系の断面を見ている姿なのですが、その中心方向、天の川の最も太く明るい部分が頭の真上に輝き、まるで巨大な唇のような姿で迫ってきます。なんといってもその輝きの強さ、星々の大きさは日本で見る天の川の比ではありません。空を行き交う雲は黒く、天の川を背景にまるで暗黒星雲のようにその形に変かを与えます。雲と天の川、そして地上の風景とが織りなすスペクタルな光景に、私は夢中で撮影を続けました。

α7R III,14mm,F1.8,30秒,ISO4000

ラノ・ララクの上に輝く天の川中心
雲が切れて、天の川の全容が見えてきました。この時期イースター島では、夜半、天の川の中でもっとも明るい中心部分が頭上高く輝き、その迫力に圧倒されます。ラノ・ララクの山腹が遠方を走る車のライトでほのかに輝き、そのディティールを表しています。

α7R III,Planar T* FE 50mm F1.4 ZA,F1.4,30秒,ISO4000

アナケナの降るような星空
アナケナは美しい砂浜と海に向かって立つモアイ像で知られています。夜間には近寄ることができなくなりましたが、この画像では椰子の木越しに7体のモアイ像がかすかに見えています。これはPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAを開放で使用していますが、星々が本当に近くに感じられました。

α7R III,FE 24mm F1.4 GM,F1.4,30秒,ISO8000

水たまりの中の天の川
アナケナの道路は、夜半までの雨でいたる所に水たまりができていました。そこをのぞき込むと、なんと小さな水たまりの中には天の川が広がっていました。悪天候は思わぬ贈り物をもたらしてくれました。ここに見える明るい星は木星です。

α7R III,20mm,F1.4,30秒,ISO3200

ハンガ・キオエ、流れる雲とアルタイル
ここは、町に比較的近いところに立つモアイです。街灯りのために雲が白く輝いています。それでも雲間の星はかなりコントラスト良く輝き日本の空とは隔絶の感があります。左上に見えている明るい星が日本でもおなじみの彦星・わし座のアルタイルです。

今回9年ぶりの訪島となったイースター島ですが、この9年の間に撮影機材の進化は実に目覚ましいものがありました。ことカメラに関してαシリーズの進化は際立っており、それは天体撮影や星空風景の世界に大きな影響を与えました。優れた高感度特性、階調特性、そして、自分に合わせた最適の操作性が実現できるカスタム設定、何よりも「ブライトモニタリング」機能は星空の下での作品作りのスタイルを一変させたと言っても過言ではありません。作者の意志を的確に表現してくれると同時に、新たな表現法をも喚起してくれる存在、それがαシステムといえるでしょう。

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