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αと巡るアジア・奇界遺産の旅
<後編:中央アジア>
写真家 佐藤健寿 氏×α7R III

α Universe editorial team

世界各地を巡り、美しくも不思議な世界を写真に収めてきた佐藤健寿さん。今回はα7R IIIを手にアジア・奇界遺産の旅を2部に分けてお届けする。後編は中央アジア、ウズベキスタンやトルクメニスタンの旅について裏話とともに語ってもらった。

佐藤 健寿/写真家 武蔵野美術大学卒。フォトグラファー。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影・執筆。写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』は異例のベストセラーに。ほか著書に『THE ISLAND - 軍艦島』、『SATELLITE』、『世界の廃墟』など。TBS系「クレイジージャーニー」、NHK「ニッポンのジレンマ」ほかテレビ・ラジオ・雑誌への出演歴多数。
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Q.アジア奇界遺産の後編、中央アジア(ウズベキスタン、トルクメニスタン)の国々をめぐる旅ですが、この旅のテーマなどがあれば教えて下さい。 今回の撮影ではまずウズベキスタンの古都、そして北部にある環境破壊地帯、またトルクメニスタンにある自然が生んだ奇景を旅しました。

α7R III,FE 85mm F1.4 GM 85mm,F8,1/200秒,ISO400

Q.日本からすると謎めいたエリアという印象の強い中央アジアですが、地理・文化的な魅力を教えてください。
これまでずっと世界のいろんな国を訪れてきて、ひとつ気づいたのは国境というのは便宜的な境界線に過ぎないということです。法律や通貨といった決まりごとは国境によって分けられるんですが、文化であったり、民族の血というのは当たり前に、国境をまたいで存在しています。そう言う意味で、中央アジアの国々というのは中国などの東アジア文化圏とそれより西の中東、さらに北のロシアの影響も受けているので、様々な文化が混ざり合ってグラデーションしているんですよね。イスラム文化と社会主義文化、また中国からもたらされたシルクロード的な文化が混ざり合ってどこにもない景色が存在している。それがこの地域の魅力だと思います。

α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F1.4,1/60秒,ISO1250

ウズベキスタン/サマルカンド、ヒバ

Q.まずはウズベキスタンという国について教えて下さい。直行便があるということで、最近旅先として人気が高まってきているそうですね。 ウズベキスタンは少し前まではソ連の衛星国でしたが、今は独立してイスラム国家になっています。一方で、かつてのシルクロードの拠点でもあったので、今もどこかオアシス都市のような面影があります。特に町の中には青いアラベスク模様の古いモスクなどが点在していて、青の国とか言われたりもするんですが、中世のアジアを連想させてとても美しいですね。

α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F5,1/60秒,ISO250

Q.サマルカンドのモスクの細やかな模様が美しく出ています。α7R・IIIの機能、性能が撮影時にどのように生きたか、お聞かせください。
モスクの中は天井のドームの模様であったり、壁のアラベスクがとても美しいですね。中世の人々が植物の柄や星を使って宇宙や神を表現したもので、気が遠くなるような細かい模様で出来ています。そして、モスクの中は結構暗く、さらに三脚は使用禁止されていることがほとんどなので、手持ちで取らなければいけませんでした。そういう中で、α7R IIIの高感度耐性、手ブレ防止、階調性にはだいぶ助けられました。特に暗い場所ではISO6400くらいまであげて撮った写真もありましたが、あとでPCに取り込んでみてみると、ノイズもほとんどなく、三脚を立てて撮りました、と言っても多分誰も気づかないくらい精細感がありましたね。階調性もずば抜けているので、あとで暗い部分を少し補正したりした時でもきちっと色再現されていて助かりました。

Q.ウズベキスタンのようなイスラム文化圏での撮影において、マナーや特に気を付けていること、α7R IIIで役立った機能があれば教えて下さい。
イスラム文化圏は基本的に写真を嫌がられる場所が多くて、特に女性は断られることもありますね。そういう場所では人を撮る時には必ず交渉しないとトラブルになることさえあります。今回訪れたウズベキスタンはもともと多民族・多文化の国家であるためか、割と観光客に対しても寛容で、それこそ女性や聖職者でも全然ウェルカムな感じで写真を撮らせてくれました。ただあまり人を緊張させないように、場所によってはあえてファインダーで構えずにLCDを起こしてラフに手持ちで撮影したり、モスクの中ではサイレントシャッターにしてお祈りを邪魔しないようにといった工夫はしましたね。

α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F2.5,1/60秒,ISO4000

Q.この作品で使用いただいたFE 24mm F1.4 GMについて、特に気に入られたポイントをお聞かせください。 とにかくまずコンパクトだということ。普通24mmのF1.4というと、巨大な単焦点のイメージですが、これは本当に小さいので、この旅の中で常用レンズ的にずっとつけていました。また絞り開放からシャープですし、ボケもとても美しい。歪みや周辺光量落ちといったこのタイプのレンズにありがちな欠点もほぼ克服されていたので、驚きましたね。

Q.続いて、ヒバという街について教えて下さい。 この街は日本でいえば京都や奈良のような、いわゆる古都ですね。サマルカンドのような派手さはないんですが、旧市街が中世のイスラム世界のようで美しい。町という単位でいえば、ここが一番気に入りました。

α7R III,50mm,F2,1/125秒,ISO400

Q.今回のような移動の多い撮影旅行の中で、レンズはどのような種類を持って行かれるのでしょうか?
以前は、いわゆる大三元プラス、35mmと50mmの単焦点2本、みたいな重装備で行っていたんですが、経験上、レンズや機材が多すぎると機動力が落ちるんですよ。だから最近はどんどん荷物は減らすようにしていて、場所によっては標準ズーム1本と24mmか35mm、50mmのどれかを一本みたいなこともよくあります。僕の場合、135mmとかあまり使いませんが、ある場所でもしかしたら使う可能性がある、みたいな時は、昔から持っている他社の小型のマニュアルレンズとレンズアダプターを持っていくことがあります。そうすることで、標準域は純正レンズでカバーし、使用頻度の低いところはアダプタ経由でカバーして荷物を抑える、という工夫ができます。こういうシステムとしての柔軟さもαの大きな魅力だと個人的には思っています。

α7R III,50mm,F2,1/500秒,ISO100

ウズベキスタン/モイナク、アラル海

α7R III,FE 16-35mm F2.8 GM 26mm,F6.3,1/640秒,ISO100

Q.次に訪れたのはモイナク、アラル海とのことですが、船の墓場のようにも見えます。この異様な光景の成り立ちを詳しく教えてください。 ここは今では見渡す限りの荒野なんですが、実はかつて海だったんですよね。アラル海という世界でも三番目くらいに大きい海だったんですが、1970年代頃から灌漑計画によって水がみるみる減少していって、文字通り海が消えてしまった。だから環境破壊が生んだ光景、とも言われています。船がある場所はかつて港だった場所ですが、あまりにも急に海がなくなったので、地元の人は「行商に行って帰ってきたら海がなくなっていた」と例えることもあるそうです。

α7R III,FE 16-35mm F2.8 GM 35mm,F6.3,1/640秒,ISO100
α7R III,FE 16-35mm F2.8 GM 35mm,F6.3,1/640秒,ISO100

Q.どれも強い違和感を残す写真ですが、この異様な光景をどのように切り取り、伝えようと思ったのでしょうか。
ここは訪れたとき、ちょうど農家の人がヤギを放牧していて、草を食べさせにきていました。かつて海だった場所なのに今では船の周りでヤギが草を食べているという光景があまりにもシュールだったので、その構図で撮影しました。あとは撮影は12月だったんですが、とにかく見渡す限り何も風を遮るものがないので、ものすごく寒かった。多分体感マイナス20度くらいかと思うんですが、風が強くて、もう途中でシャッターを切る指が無感覚になってしまって。もちろん手袋や防寒具もつけた上ですが、ただそういう寒さの中でもバッテリーは全然ダウンせず、交換する必要もなかったので助かりました。

α7R III,FE 85mm F1.4 GM 85mm,F8,1/320秒,ISO100
α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F8,1/400秒,ISO100

ウズベキスタン/市場

Q.今回の旅の中で観光的な場所だけでなく、人々の日常を感じられる場所にも意図的に足を運ばれたそうですが、生活感のある場所での楽しみや、中央アジアならではの慣習があれば教えて下さい。 普通、旅の撮影だと大体こういう場所に行こう、というのを決めていくわけですが、そうするとどうしてもその国の偏ったイメージばかりになってしまう。だからその国の人たちの平均的な姿みたいなものを見るために、市場にはよく行きますね。こう言う場所は人々のリアルな姿が見えますし、場合によってはそれが一番旅を通じて印象に残ったりもする。この市場は毎週一度開かれれる家畜の市場だったんですが、人の熱気や動物の佇まいも含めて、とても撮影しがいのある場所でしたね。

α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F1.4,1/320秒,ISO100
α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F6.3,1/60秒,ISO125

トルクメニスタン/ダルヴァザ

α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F7.1,1/500秒,ISO100

Q.続いて訪れたトルクメニスタンという国について教えてください。
トルクメニスタンもソ連崩壊後に独立した国のひとつです。ウズベキスタンは今観光にも力を入れていて対外的にもひらけてきましたが、トルクメニスタンは割と閉鎖的なので、旅行者にはハードルが高く内情はあまり知られていません。入国するのも、それなりに苦労しましたね。ただ中に入ってみると、人はとても素朴で親切だし、割と旧ソ連時代の風景が残っていて、文化も景色もすごく面白い国でした。モスクもウズベキスタンのものは修復されて綺麗なんですが、トルクメニスタンのものはまだ中世のまま残っていたりして、瓦解しているものもあるんですが、それが逆に神秘的で印象的でした。

Q.この旅の最終目的地である「ダルヴァザの穴」について、成り立ちやアクセス上のご苦労について教えてください。 ここはもともと天然ガスが豊富に取れる荒野だったんですが、1970年代に、ボーリングで掘削を行ったら地面がまるごと落盤して、クレーターみたいな大きな穴ができてしまった。そしてそこから天然ガスが噴出してしまったそうです。それでとりあえずガスの噴出を止めるために火をつけたところ、全く鎮火することなく以後50年近く燃え続けているそうです。「地獄の門」とも呼ばれていますが、確かに近くでみるとまるで映画のロケ地みたいな非現実的な光景でした。

α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F1.4,1/40秒,ISO12800
α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F1.4,1/250秒,ISO500

Q.異様ながらも神秘的なものを感じる光景ですが、このような光景を捉えるときにα7R IIIが役立っていることがあれば教えてください。
ここではやはり穴の中は煌々と火が燃えていて明るく、一方、穴の外側は地平線まで続く暗闇が広がっていました。そのような中でも、明るい側も暗い側もきちっと画の中に収めるだけの幅広いダイナミックレンジ性能があったので、安心して撮影することができましたね。

α7R III,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F4,4秒,ISO400

旅を終えて

Q.今回の中央アジア・奇界遺産を巡る旅を通してレンズについて印象が変わった点や改めて進化を認識した点があれば教えてください。 ソニー独自のセンサーはα7 RIIの時からずば抜けてましたが、7R IIIになってさらに高感度耐性やダイナミックレンジの幅もあがり、明部、暗部だけでなく、中間域が豊富に出力されると感じるので、それほどセッティングを考えなくてもきちんと画に収まってしまうのはさすがだなと思いました。また今回のように極寒の場所、またテント泊でバッテリーが充電できないような時でもバッテリーを交換せずに撮影できるだけの余裕が生まれたので、安心して撮影できました。レンズについても24mm F1.4をはじめ、小型化しつつ高性能化しているので、ますます旅に使いやすくなってますね。

Q.次に狙っている被写体やテーマがあれば教えてください。 今回の中央アジアもそうですが、最近は国境を越えていく文化や民族に興味があります。そういう視点でいうと、中央アジアの西、ジョージアなどのコーカサス地方も再訪したいなと思ってます。

Q.最後に佐藤さんのファンとαファンに向けてメッセージを一言お願いします。 みなさんも良いカメラを持って、良い旅を。ということに尽きますね(笑)。

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