商品情報・ストアヘッドホン The Headphones Park 開発者インタビュー MDR-10シリーズ 開発者インタビュー

Engineer's Interview MDR-10シリーズ開発者インタビュー

王道たるヘッドホンのスタイルを継承した、
プレミアムコンパクト

取材:岩井 喬

2012年、ソニーヘッドホンの新たな顔となるべく登場したMDR-1シリーズ。シリーズの中でもスタンダードモデルのMDR-1Rは、上級機譲りの80kHzまでというワイドレンジな周波数特性を実現した液晶ポリマー振動板採用Φ40mmHDドライバーを積み込み、時代の音楽性を考慮した低音の再現性に着目。ソニー・ミュージック エンタテインメントとの協業で、マスタリングスタジオにおける音作りを盛り込みつつ、普遍的で飽きの来ないモダンデザインを身にまとったオリジナリティあふれる"王道"を行くヘッドホンとして仕上げられた。発売から1年余りたち、世界中のミュージックラバー、ヘッドホンユーザーからサウンドやデザイン、ソフトタッチで快適な装着性も高く評価され、ワールドワイドな人気モデルへと成長している。
ポータブルユースも見越した設計を取り入れたMDR-1シリーズであったが、手にしたユーザーの多くはアウトドアだけでなく、自宅でのリスニングにも活用しているという声が多く届いた。そこでMDR-1Rは音質や装着性、デザイン性をそのままに、よりインドア環境にも適した3mコードを取り入れ、スマートフォン対応リモコン付コードを新たに採用したMDR-1RMK2へと進化を遂げたのだ。また同じようにノイズキャンセリング機能付きモデルMDR-1RNCやBluetooth搭載モデルMDR-1RBTにもスマートフォン対応リモコン付ショートコードや3mコードが新たに採用され、各々MDR-1RNCMK2、MDR-1RBTMK2へと進化。特にMDR-1RBTMK2はワイヤレス環境でさらなる高音質を期待できるコーデックapt-Xにも対応できるようになったことが大きなトピックである。
その一方、デザイン性や優れた装着感、サウンドには好意的であるものの、MDR-1シリーズよりもさらに小型で軽量なモデルを望む声もまた多く、MDR-1シリーズの進化がヘッドホン設計・開発陣の次なる課題であったという。MDR-1シリーズ発売から数カ月、この課題に応えるため、次なるモデルの開発プロジェクトが立ち上げられたのだ。そうして今ここに誕生したのがMDR-10シリーズである。ベーシックなMDR-10Rに加え、BluetoothモデルMDR-10RBT、ノイズキャンリングモデルMDR-10RNC、そして折りたたむことができる耳乗せモデルMDR-10RCと4つのラインアップが用意された。
このMDR-10シリーズのコンセプトについて、開発の統括に当たったソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 V&S事業部 サウンド1部 MDR開発課 統括課長 角田直隆氏から伺うことにした。

角田直隆氏

ソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 V&S事業部 サウンド1部 MDR開発課 角田直隆氏

「ありがたいことにMDR-1シリーズは発売以来高い評価をいただいていたのですが、その一方で"もう少し小さいと使い勝手が良い"という声も届いておりました。多くのミュージックラバーに良い音を聴いてもらいたいというMDR-1シリーズと同じコンセプト上にありながら、さらに幅広いユーザーに使っていただくためのポータビリティの追求、そしてリーズナブルでありながら高音質、高性能、高デザイン性を体現したモデルの開発が必要であると考えたのです。まずMDR-10シリーズを作り出すために2つのことを実現したいと考えました。1つはここ10年くらいで大きく変化した音楽のトレンド、"低音を効果的に生かした音楽の作り方"に対応できるベースの再現性です。これはMDR-1シリーズ開発の際にもポイントとなったことですが、30〜40Hzの帯域に存在する超低域のリズムがいかに正確に再生できるようにするか。そしてもう1つはCDに収められたクオリティをはるかに超えるハイレゾリューション(以下、ハイレゾ)再生への対応です。2013年はソニー全社でハイレゾ再生に力を入れているのですが、なんとかMDR-10シリーズでもものにしたいと考えたのです。」
高価で扱いが難しい素材でもある液晶ポリマーを振動板に使い、80kHzまでの広帯域再生を実現しているMDR-1シリーズと同じ素材を用いるのではリーズナブルな価格設定を実現することはできない。そこでまずはハイレゾ再生の魅力を味わうために、どの程度までの帯域をカバーすればいいのか、社内で様々な研究を重ねた末、40kHzまで再生できればハイレゾの良さを実感してもらえるというデータが導き出されたという。この結果をもとに、より大量生産に向く既存の一般的な振動板素材であるPETフィルムを使いながら40kHzもの広帯域再生を可能とする振動板を作り出すため、幾多もの振動板形状シミュレーションを実施。何度も試作品をつくり、トライ・アンド・エラーを繰り返した末に誕生したのが新開発のΦ40mmHDドライバーユニットである。
このドライバーユニットやイヤーパッドなどを含め、音響設計を担当したソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 V&S事業部 サウンド1部 MDR設計2課 潮見俊輔氏だ。

潮見俊輔氏

ソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 V&S事業部 サウンド1部 MDR設計2課 潮見俊輔氏

「ハイレゾの音源が再生できること、そしてMDR-1シリーズから踏襲したプレミアムシリーズの流れを継ぐことがマスト条件でした。今回はよりコンパクトにする必要があったので、その音質を犠牲にせず、どれだけクオリティの高い音を作れるかというところが課題でしたね。MDR-1シリーズよりもサイズが小さいけれど、同じ口径のドライバーを積むため、サウンドバランスも大きく変わります。そのため設計についてはゼロベースから行いました。容積が小さくなっていくとイヤーパッドの厚みや開口の条件もシビアですし、ポートの口径が1mm変わるだけでも音への影響が大きくなります。そういうところでも機構設計と連携して空気の漏れをなるべく減らす構造にしていきましたね。ドライバーユニットの振動板については社内でシミュレーションを行う部署があり、高い周波数まで再生できる形状をシミュレーションして、その形状を実際に作り、確実に音が出ているか確認するプロセスを繰り返したんです。シミュレーションでは理想の形状でも実際に作ってみないと最終的な音質はわからないので試作品での評価もします。」
社内でシミュレーション解析まで行える体制を持つソニーならではの強みを生かした振動板開発は120kHzまでという驚異的な高域再生能力をもつQ010-MDR1をはじめ、いち早くハイレゾ再生に対応できるヘッドホン作りを後押ししてきた。10年近いHDドライバーの歩みが2万円前後のリーズナブルな価格帯の製品であるMDR-10シリーズまでハイレゾ対応できるようになった原動力に繋がったといっても過言ではないだろう。(※MDR-10RNCを除く)。
続いてMDR-1シリーズから継承されたエンフォールディングストラクチャーを採用するイヤーパッドへのこだわりを含め、潮見氏と機構設計を手掛けたソニーエンジニアリング 設計2部 1課の石垣元彦氏から小型軽量化と装着性、さらにはサウンド性の担保についてのポイントについても伺ってみた。

石垣元彦氏

ソニーエンジニアリング 設計2部 1課 石垣元彦氏

「出発点となるのは人間の耳の大きさです。当然耳の大きさはヘッドホンの大小に関わらず一定で、そこは我々が越えることができない壁なのです。したがってまず耳に対して全体の寸法、ドライバーユニットの前側の容積が決まってくる。それに合わせてドライバーユニットの後ろをどれだけ小さくするかは音響設計が担当してくれました。MDR-1シリーズより小さくするという命題があるので、ハウジング背面側の容積を小さくしながら必要な音響特性が得られるのか、せめぎ合いになります。その過程ではいくつものトライを繰り返しながらギリギリのラインを出しました。そうして出来上がったのがMDR-10Rのハウジングの大きさです。イヤーパッドの厚さや開口径も音響設計とともに色々と相談し、試作も重ねていきましたね」と石垣氏。ソニーヘッドホン・チーム伝統の"耳型職人"を襲名した潮見氏は人それぞれの耳の大きさも鑑みながらイヤーパッドの調整を行ったという。

耳乗せへッドホン

「人の耳というのはMDR-10RCのような耳乗せへッドホンを装着した場合、イヤーパッドの開口径が大きいと耳が入ってしまい音が安定しません。逆に開口部が小さくなると容積も小さくなって音質に対してもいい影響がないため、最適なものを探すという意味で様々なパターンのイヤーパッドを作ってその中で装着感もみながら作っていきました。またMDR-10Rでは耳覆い形で最小サイズを狙いつつも、MDR-1Rで好評だったエンフォールディングストラクチャーを採用しています。普通のイヤーパッドだとウレタンの硬さそのものがイヤーパッドの硬さになりますが、装着時にイヤーパッドが内側に倒れ込むような格好にすることで、素材の持つ柔らかさ以上のソフト感が出るんです。それによって包み込むような快適な装着感とともにきちんとした密閉感も得られるわけですね。さらにこのイヤーパッドの厚みによっても容積が変化して中低域のバランスも変わるのです。このイヤーパッドの厚みについても1mm単位で調整した試作品を作りましたね。」
MDR-1シリーズのデザイン性の高さも継承したMDR-10シリーズのデザインについて、ソニー クリエイティブセンター プロダクトデザイン統括グループ パーソナルオーディオデザインチーム1の飯嶋義宗統括課長と犬飼裕美氏にもそのこだわりを聞いた。

左:飯嶋義宗氏、右:犬飼裕美氏

ソニー クリエイティブセンター パーソナルオーディオデザインチーム1
左:飯嶋義宗氏、右:犬飼裕美氏

「装着形態には音質と密接な関係があるので、良い音を形にしやすい耳覆い型のコンストラクションからプロジェクトはスタートしました。小さくすると音にも影響するので、装着性を犠牲にせず、音を確保しながらポータビリティに特化したモデルにしたい、特にハウジングの形の削り方、MDR-1シリーズをベースにしてイメージを崩さず、どれだけ削いでいくかというところに非常に気を遣いました。携帯性に優れる軽量モデルということもあり、ハウジングとヘッドバンドの太さも細くしましたが、むやみに細くすると貧弱なイメージになるので、その辺のバランスが非常に難しかったですね。」と飯嶋氏。 MDR-1シリーズではミュージックラバーに向けたプロダクトではあったが、最高の音質を目指しつつ非常にプロ機器に近いマインドで作っていた。今回はそのすそ野をさらに広げるという意味でよりカジュアル、多くのユーザーに気に入ってもらえるような手軽な大きさであることが望ましいとデザインチームも考えていたという。そうした点からMDR-10シリーズの印象もMDR-1シリーズより柔らかい印象に仕上げたとのこと。犬飼氏にもデザインをまとめ上げる上でのこだわりや苦労したポイントについても伺った。

犬飼裕美氏

「できるだけ装着性を担保しつつ、小さくまとめるためにこだわったのはハウジングの形状です。特徴的な卵型の形状になっていますが、これは人間工学の見地も踏まえて、小さいけれども装着性も十分に担保した形としました。ただこのハウジングについてのバランスを取るのが大変で、何回も機構設計チームとやりとりを重ねていきました。さらにこの横から見た時のボリューム感もなるべく抑えるため、装着性に必要な幅をキープしつつ、ハウジングからイヤーパッドにかけてのシェイプの処理にこだわりました。そしてイヤーパッドについてはデザインサイドからもリクエストしたポイントがあるのです。MDR-1シリーズよりも縫製ラインを少なくし、よりすっきり軽やかに見えるようにしました。また縫い目が少ないことで耳当たりも快適になったんです。ここは機構設計に何回もトライ・アンド・エラーをしていただいてこだわった部分です。」
MDR-1シリーズの流れるようなフォルムはコード接続口もうまく取り込み、隙のないデザインとしてまとめていた。今回も同じく片出し・着脱式コードを採用しているが、この点についてもMDR-1シリーズと同じく人体の正面側にマネージするという手法を取り入れ、形状は違えども脱着口をセンターよりも少し前方へ傾けて配置することで、MDR-1シリーズと世界観を統一しているとのこと。そしてスタンダードモデルのMDR-10RではMDR-1シリーズで採用した黒ベースのカラーリングに加え、さらにライトな装いを感じさせる白ベースのカラーリングも用意された。実はこのカラーリングに隠されたエピソードがあるという。
「MDR-10Rの形を作っていく中で、かなり柔らかいラインを持つデザインへとまとまっていきました。そうしたときMDR-1シリーズでは採用しなかった白色が合うのではないかという話が持ち上がり、色々と独自に色バリエーションのモックアップを作成して内部で議論を深めたところから見事採用となったのです。色だけあとから当てはめて決めたわけではなく、初めから色ありきでもなく、フォルムを固める過程で決定したんです。」と飯嶋氏は語る。犬飼氏も「今回軽やかな印象にデザインのバランスを取っているので、それに対して白でより軽やかかつ優しい印象を演出してあげて女性でも手に取りやすいような仕上げにしています」と続けた。白色を好むユーザーは統計的にみて全体的に白ベースにまとめたものを求める傾向にあるそうで、黒ベースのベーシックモデルの挿し色だった赤色をやめ、白系統で統一したそうだ。また耳乗せモデルのMDR-10RCでは赤色のカラーリングも用意されているがこちらは挿し色だった赤をハウジングにあしらい、黒&赤のコミュニケーションをより強烈に体現させているという。

MDR-10R

MDR-10R 左:ホワイト、右:ブラック

ここまではMDR-10についての各セクションのこだわりについてみてきたが、続いて同じシリーズながら違った個性を見せる耳乗せタイプMDR-10RCにフォーカスを当て、ソニー ヘッドホンの中でも2013年一番のコンパクトさを誇るヘッドバンドモデルの実力に迫ってみたいと思う。

洗練されたデザインは軽量化の賜物。
ソニーがハイレゾ元年に贈る耳乗せの決定版。

MDR-10RC

MDR-10RC 左:レッド、中央:ブラック、右:ホワイト

MDR-10RCはMDR-10Rと同じ40kHzまでの高域再生を実現するΦ40mmHDドライバーユニットを搭載しながら、耳乗せ型のさらなる軽量・小型設計モデルとして開発された。よりポータブルユースを念頭に置いた小型耳乗せタイプは、現在のヘッドホン市場でも人気のカテゴリーである。ライバル機が多いジャンルの中でどのようにソニーならではのこだわりを示すことができるのか、その秘密について、まず音響設計担当の潮見氏に伺ってみた。
「MDR-10RCの音響設計するに当たって、実際のスタジオの音を聴かずして設計はできないということで、ロンドンのWhitfieldマスタリングスタジオに赴きまして、その場でチューニングも行いました。耳で合わせこんでいくという作業の基本ですね。音楽がどのように表現されなければいけないか、とても勉強になりました。"マスタリングしたこのままの音で聴いて欲しい"というマスタリングエンジニアの意図した音を初めて実際に体感して、私自身の見聞きしている世界が一気に変わりましたね。MDR-10RCになって難しかったことは耳乗せと耳覆いの違いがあります。MDR-1RMK2やMDR-10Rと同じドライバーユニット口径なので、耳の近くにドライバーユニットが来ると、近くから音が鳴る感覚になるので、どうやったら双方同じようにある程度のスペース感を持った音に仕上げられるかというところに苦労しました。このコンパクトな筺体でΦ40mmドライバーユニットを乗せるのはソニーとして初めての試みでして、たとえるなら50ccバイクのフレームに400ccのエンジンを積み込むような感覚に近いかもしれません。そこに容積の調整や空気の通り道をちゃんと正しい方向に導くという取り組みもかなり詰めてやっていきました。イヤーパッドのウレタンの厚みについても、ものすごく薄かったものから1mmずつ厚みを増やしていくことでだいぶ音も変わっていきましたね。薄いと近くで聴こえるのですが、厚くしていっても開口が狭くなると容積が少なくなって空間の広がり感が小さくなるため、ちょうど良い開口径を導き出すのに苦労しました。おそらくイヤーパッドだけで40〜50種類くらい試作しましたね。」

こうした音響設計への取り組みの甲斐あって、耳乗せタイプのモデルながら非常に立体的で音ヌケ良い音場感に溢れたサウンドを身に付けたMDR-10RCは手軽にハイレゾを味わえる、希少なポータブルモデルとして誕生した。しかしその魅力は機構や装着性、デザイン性にも広がりを見せており、コンパクトでありながらも妥協のない設計マインドが貫かれているのである。そのデザインのこだわりについて飯嶋氏に伺う。

「MDR-10RCはMDR-1シリーズのデザインを踏襲しながら耳乗せに初めて挑戦した新たなスタイルなので、これもスタイリッシュにまとめこむのは悩ましいところでしたね。まず大きな違いは耳乗せであるということで、ヘッドホンを見たときにも、そして触ったときにも最大限表現してあげないといけないなと感じました。そこは機構設計チームとの連携ですが、どこまで小さな耳乗せをキープし、ハウジング容量や厚みも確保しつつ、いったいどこまで削れるのか、さらにそれでハイレゾ音源も再生できないといけないというところで、課題が山のようにありました。それゆえに大きさ決めが大変でしたね。そして何よりも折り畳み機構を搭載したことが大きなポイントです。耳乗せタイプが多い中、他社と違うのは折り畳み部の複雑な機構を感じさせない非常に緩やかな曲線で全体が構成されていていることですね。余計なでっぱりのない美しいカーブを意識して作り上げました。当初はここまでスマートな機構はできなくて苦労しました。折り畳み部を折ったりアジャスターを伸ばしたり、強度に加え複雑な動きを小さな部品で達成しないといけない。そのために金属パーツを使いました。カチッとしたクリック感を担保しつつ、きれいなシェイプを保ってくれたというのが機構設計が頑張ったポイントでしょうね。できてからもずっと眺めてしまうポイントで本当に惚れ惚れしています。ここが私としては肝ですね。」
MDR-10シリーズではMDR-1シリーズで採用していたインワードアクシスストラクチャーやサイレントジョイントを用いていない。しかし細くコンパクトでありながらしっかりとした強度を保ち、接合部のきしみもほとんど感じない。この点を機構設計の石垣氏に尋ねると「嵌合精度を高めることでガタつきを抑え込んでいるからだ」と教えてくださった。何度にも分けて精度向上の努力を行い、それが装着性の高さにも結び付いている。

「MDR-10Rの持つイメージとあまりかけ離れたものにはできないので、同じような意匠感を持たせつつ、どこまで小さな構造にできるかというところに苦心しました。重くしたくないので必要以上に複雑な機構を使わず、従来からある嵌合詰めの手法でどこまでやれるか。でもやり過ぎると動きが渋くなり逆に装着感が悪くなりますから、その辺のバランスを考えながらまとめていきました。装着性の良いヘッドホンは耳覆い型であるけれど、それと同レベルの装着性を耳乗せ型で実現しなくてはいけない。ある意味そこは大きなチャレンジでしたね。そこで多くのユーザーが好む柔らかいイヤーパッドを使い、音響的な特性、安定度と装着時の感覚などの要素を同時に実現させるため、特に重要だったのは側圧とイヤーパッドの設定でした。ヘッドホンが頭を挟み込む力=側圧は高い方が安定します。一般的にポータブルユースでは特に装着時の安定感は大事な要素ですよね。しかし強くし過ぎると疲れたり耳が痛くなったりしやすいから、それを防ぐためにイヤーパッドを柔らかくするというバランスをとったのです。今回、色々と試行錯誤したおかげで耳乗せ型のイヤーパッドとしては非常に装着性や音響特性が良くバランスの優れたものができました。折り畳みのヒンジはなるべく重量を増やさずに強度を持たせるために金属を用いましたが、形状を単純化させて部品点数も極力少なく抑えましたよ。ハウジングが小さくなったので、ヘッドバンドも全部軽くできました。板金の幅や厚みも最適化したので、その分側圧も軽くなり、かけ心地が良くなっています。重いと落ちやすくなるのでその分側圧を強めないといけませんが、今回はそうした心配もなくトータルでバランス良くまとまりました。」と石垣氏。

MDR-10R&MDR-10RCをはじめとしたMDR-10シリーズはコンパクトながらも上位のMDR-1シリーズにも引けを取らないバランスの良さを身につけている。潮見氏も「これだけ折り畳みのできるコンパクトモデルでもスタジオの音をできる限り近いものに再現できるまで仕上げることができたので、様々な場所へ持ち出してその音を楽しんでほしい」と語るように、そのサウンドはリアルで空間性溢れるものとなっており、数多ある耳乗せモデルとは一線を画す完成度だ。また角田氏は「MDR-10RCのサウンドポリシーはMDR-10Rと基本的に同じですが、方式の違いからくる結果として、音にも違いがあります。MDR-10RCの方が音像が近くよりモダンに感じられるのではないでしょうか。MDR-1Rは広いカバーレージがあり、MDR-10Rは現代のトレンドをセンターにおいてダンスミュージックにも対応するサウンドといえるでしょう。MDR-10Rはよりカジュアルに楽しめるという振り分けでしょうか。我々のヘッドホンの持つ特性を指し示すために用いている"想定音場"の観点からいくと、ステージとの距離感はありますが、どこの音場を切り取っていくかからみるとMDR-10RはMDR-1RMK2よりもミュージシャンに近い位置関係となる感じでしょうね」とそのサウンドの持ち味についても語ってくださった。MDR-10Rはスタイルこそコンパクトにはなったものの、単なるMDR-1RMK2のスケールダウンモデルではないことはここまで語られた内容からもお分かりいただけるだろう。他にはない個性と耳乗せスタイルという新たなステージを手に入れたMDR-10シリーズは、ハイレゾ時代のニーズにも応える、ハイデザインなフィット性&ポータビリティの高い戦略的高音質モデルといえるだろう。

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商品情報

  • ステレオヘッドホン

    MDR-10R

    専用設計40mmHDドライバーユニット採用による高音質と小型・軽量化を両立したステレオヘッドホン

  • ステレオヘッドホン

    MDR-10RC

    持ち運びに便利な折りたたみ機構を採用したコンパクトサイズ。ハイレゾ音源の再生に対応したステレオヘッドホン

  • ワイヤレスステレオヘッドセット

    MDR-10RBT

    ワンタッチ接続(NFC)(※)機能でスマートフォンとペアリングや接続がワンタッチで完了。ハイレゾ音源の再生に対応したBluetooth対応ワイヤレスヘッドセット

    ※ワンタッチ接続(NFC)機能を利用するにはNFC対応スマートフォン、または一部のおサイフケータイ(R)対応のAndroid(TM)スマートフォンが必要です

    ※一部のスマートフォンは「NFC簡単接続」アプリをインストールする必要があります

  • ノイズキャンセリングヘッドホン

    MDR-10RNC

    騒音低減率約99.4%(※)の卓越したノイズキャンセリング性能を実現したデジタルノイズキャンセリングヘッドホン

    ※当社測定法による。周囲からの騒音がまったく聞こえなくなるわけではありません

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