商品情報・ストア Feature 特集記事 “究極のヘッドホンリスニング”を追求した 音のためのこだわりすべてを詰め込んだ『DMP-Z1』-Engineer Interview-

“究極のヘッドホンリスニング”を追求した
音のためのこだわりすべてを詰め込んだ
『DMP-Z1』
-Engineer Interview-

据え置き型音楽プレーヤーでも、携帯音楽プレーヤーでもない、これまでにまったくなかった新コンセプトのパーソナルオーディオ機器『DMP-Z1』が登場した。その最大の特長は、バッテリー駆動による“クリーンな電源”によって、環境を問わず、究極のヘッドホンリスニングを追求したこと。そんな前代未聞の新モデル開発の道のりを、開発者たちが熱く語ります。

これまでのカテゴリーにとらわれない
まったく新しいオーディオプレーヤー

まずは『DMP-Z1』がどういった背景で登場したのかを教えてください。

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社 V&S事業部『DMP-Z1』商品企画 田中光謙

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社
V&S事業部『DMP-Z1』商品企画
田中光謙

商品企画 田中:2016年に「究極のパーソナルオーディオ」を目指して市場導入した“Signature Series(シグネチャーシリーズ)”の第2弾となる製品です。今、ヘッドホンによる音楽リスニングでは、従来のスピーカーシステムと同様に、とにかく良い音で音楽を楽しみたいというニーズがこれまで以上に高まっていると捉えています。

ヘッドホンというと、屋外で使うものというイメージが強いのですが、室内でも高品位のヘッドホンで音楽を鑑賞し、その音質を追求するという方も世界的に増えています。そこで、そうしたお客さまに向けて、今考え得る限りの最高のリスニング環境を、シンプルな形で提供することを目指して『DMP-Z1』を企画しました。

そんな『DMP-Z1』はどんな商品なのでしょうか?

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社 V&S事業部『DMP-Z1』設計プロジェクトリーダー 佐藤朝明

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社
V&S事業部『DMP-Z1』設計プロジェクトリーダー
佐藤朝明

田中:『DMP-Z1』はこれまでにない、まったく新しいカテゴリーの製品です。室内でのリスニングに向けたものでありながら、プレーヤー、アンプに加え、バッテリーもワンパッケージにすることによって、電源の品質や、信号伝達の品質も担保できるようにしたことが最大の特長になります。外部依存のない、理想的なヘッドホンリスニング環境であることを追求しています。

なお、バッテリー駆動する高音質な音楽プレーヤーということから、設計はウォークマンのハイエンドモデルを開発してきた、佐藤(朝)らのチームが担当しています。

設計プロジェクトリーダー 佐藤(朝):2016年に、Signature Seriesの再生機器第1弾としてウォークマン『NW-WM1Z / WM1A』、ヘッドホンアンプ『TA-ZH1ES』をリリースしたのですが、それをメディアや評論家の皆さん、販売店のご担当者さまたちにデモする際の経験が、『DMP-Z1』を生み出すきっかけになりました。

ヘッドホンアンプ『TA-ZH1ES』に搭載されているD.A.ハイブリッドアンプは、インピーダンスの高いヘッドホンも十分に鳴らしきる大出力と高音質を実現していますが、コンセント(AC電源)からの大きな電力供給が必要です。しかし、コンセントから供給される電気には少なからずノイズが乗っています。ほかにも、接続に使うUSBケーブルの品質、PCを音源にしている場合にはPCの電源や、PC上の再生アプリや接続されるUSBポートなど、高音質リスニングをするためにケアしなければならない要素が少なくありませんでした。

一方で、フラッグシップウォークマン『NW-WM1Z』は、バッテリーから供給されるクリーンな電源で駆動することで高音質を実現しています。また、再生装置からアンプまで、すべての要素が内蔵されているウォークマンには、電源などの音質に影響を与えかねない外部要因が一切ありませんから、充電さえしておけば、どこに持っていっても徹底的に追求した高音質をすぐに楽しむことができます。ただし、本体サイズの制限などもあり、インピーダンスの高いヘッドホンを鳴らす大出力を確保することができません。
そこで、『TA-ZH1ES』のような据置きクラスの製品に、ウォークマンのような「バッテリーによるクリーンな電源」や「外部要因を一切持たない」という特性を与えられたら、すべてのお客さまが、簡単に、ヘッドホンのポテンシャルを引き出せるような製品が作れるのではないかと考えました。

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社 V&S事業部『DMP-Z1』音質設計リーダー 佐藤浩朗

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社
V&S事業部『DMP-Z1』音質設計リーダー
佐藤浩朗

バッテリーを搭載するということが高音質化にどのように結びつくのでしょうか?

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社 V&S事業部『DMP-Z1』音質設計リーダー 佐藤浩朗

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社
V&S事業部『DMP-Z1』音質設計リーダー
佐藤浩朗

音質設計 佐藤(浩):突き詰めていくと、オーディオ機器から再生される「音」の元って「電源」なんですよ。電源が濁っていると、どんな高音質化回路を載せても美しい音は鳴らせません。きれいな水がないと、美味しいお茶がいれられないのと同じなんです。

田中:ピュアオーディオの世界では、電源ノイズを減らすため、オーディオ専用のコンセントを設置したり、大がかりな電源ユニットを買ったり、中にはマイ電柱を立ててしまうなんて人もいらっしゃるようです。でも、バッテリー(DC電源)駆動にしてしまえば、そもそもこうした苦労や投資をすることなく、電源の悩みを解消することができます。
『DMP-Z1』は、スピーカーをドライブするために何十ワットといった大出力が必要なスピーカーアンプと違い、ヘッドホン用の機器なのでバッテリー駆動による高音質化が実現できます。品質にばらつきがあるAC電源からクリーンなDC電源を作り出すための巨大な電源ブロックを必要としないのです。さらに、本機では搭載するバッテリーを3ブロックに分けて独立させることで、各部の干渉や変換回路による音質の劣化も防いでいます。

バッテリー駆動を実現するにあたって、どういった難しさがありましたか?

佐藤(朝):バッテリー駆動それ自体は、ウォークマンなどで実現していますが、こうした製品は、室内リスニング向けのハイインピーダンスなヘッドホンをドライブするほどの出力は持っていません。ハイレゾ対応以降のウォークマンで使われているデジタルアンプ「S-Master HX」は、省電力、省スペースで高音質を実現できる極めて優秀なアンプなのですが、ホームユースのヘッドホンを使いたい、というような高出力については想定していません。そこで、『DMP-Z1』では、高出力に耐えられるアナログアンプを、大容量・高出力の充電池で動作させることで、インピーダンスの高いヘッドホンでも鳴らしきれるパワーを実現するという、これまで商品化したことのないチャレンジを行いました。

佐藤(浩):そのため、ものすごく特殊な仕様の電源回路を新規に設計しています。アンプ動作時はプラス出力とマイナス出力の大容量充電池を直列につなぐことで高い電圧を実現しているのですが、マイナス側の電源を、微小ながらノイズを発生する可能性があるDC/DCコンバーターを使うことなく実現するのが大変でした。特に、トランジスタを使って、充電時にマイナス側の電池を切り離して充電用につなぎ替える回路の設計は電源担当者が非常に苦労して実現しています。

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社 V&S事業部『DMP-Z1』電気・音質設計 松崎恵与

ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社
V&S事業部『DMP-Z1』電気・音質設計
松崎恵与

音質設計 松崎:バッテリー駆動だけで使うのであれば、シンプルな設計にできるのですが、実用上やはり、ACアダプターでも駆動できるようにしなければなりません。ほかにも、ゲイン切り替えなど、さまざまな要素が複雑に絡み合って、電源回路設計とその制御はものすごく複雑になりました。想定できる動作パターンは、大まかに言って8系統、細かく分けていくと、なんと295通りにもなります。この複雑なパターン条件の中での音質設計は、これまでにないコンセプトの製品だったこともあり、大変でしたが、誰も実現したことのないものだったのでとてもやりがいがありました。

佐藤(朝):音を良くするために、余計なものをそぎ落としてシンプルにしていくと、機能的にはどんどん不便になっていきます。しかし、本来のコンセプトは「最高の音をワンパッケージで手軽に楽しんでもいただく」ことですから、利便性の面にも妥協は許されません。良い音を実現しつつ、ユーザーの利便性も損なわないためにはどうすれば良いのか、それを長い開発期間のなかで突き詰めていきました。

田中:そうした苦労の結果、『DMP-Z1』では、再生状態やバッテリー残量に合わせて自動的に駆動モードを切り替える仕組みを実現しています。「バッテリー駆動優先起動」に設定しておけば、ACアダプター接続時でもバッテリー駆動モードで起動し、使用しない状態が続いたり、バッテリー残量が少なくなると自動的にAC駆動モード(充電モード)に切り替わります。

ちなみに満充電からの音楽再生時間はFLACで約9時間、MP3で約10時間となっています(液晶ディスプレイOFF時)。また、バッテリーが空の状態からのフル充電には約4時間かかります。

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徹底的な作り込みで
「ノイズレス」を追求

そのほか、電源周りで苦心したことがありましたら教えてください。

松崎:電源回路と、電気(ノイズ)を逃がすグラウンド(アース)のつなぎも試行錯誤を繰り返したところの1つです。『DMP-Z1』は上下2枚の基板構成となっており、上の基板には電源回路があり、その隣にデジタル回路が配置されています。そしてそこからDAコンバーターを経由して、下の基板のアナログ回路に降りていって、アナログアンプで音を増幅していくということをやっているのですが、グラウンド処理を間違えると、ACアダプター駆動時にノイズが回り込んできてしまうんですよ。

それはどのようにして解決したのでしょうか?

松崎:デジタルは多点アース、アナログは1点アースという基本中の基本を徹底しました。これが1か所でも崩れてしまうと、そこからノイズが入ってきてしまいます。音質検討は実際に試作を行って試聴し、対策をしてまた試作する、という繰り返しの地道な作業がとても重要。『DMP-Z1』では、最終段階の試作の直前まで音質検討を継続していたので、かなり満足度の高い音質が実現できていると思います。

佐藤(朝):ノイズを減らす対策をすると音が良くなるように思いますが、逆に音が悪くなるということもあったりするので……一筋縄では行きませんでした。

松崎:デジタルにべたっとアナログのグラウンドをつなげてしまえば、ノイズは聞こえなくなるんですが、それをやると、そこから湧き出たエネルギーがアナログの音に混じってしまい、濁った、パワー感のない音になってしまうんです。ノイズを消しつつ、音質も損なわないようにするため、本当に細かく、ノイズを処理していきました。途中、何度、ACアダプター駆動対応を諦めてくれって思ったか分かりません(笑)。

そうした問題はバッテリー駆動時には起きないのですか?

松崎:はい。バッテリー駆動時のノーマルゲインでは電源回路構成がとてもシンプルになるので、ノイズ源となり得る電源構成が存在しません。ただ、ハイインピーダンスのヘッドホンを使うときに利用するハイゲインのモードでは昇圧処理を行うため、ACアダプター駆動時ほどではありませんが、バッテリー駆動時でも電源からのノイズ要因が多少なりとも存在します。測定機などに使われる高品位なスイッチングコントローラーを使っているので、本当にごくわずか、なんですが。

佐藤(朝):このような電源の構成から『DMP-Z1』の音質的な推奨は、ノーマルゲインのバッテリー駆動としています。このモードは、バッテリーからのノイズの無いピュアな電源を、DC/DCコンバーターを使わずにオーディオのプラス電源・マイナス電源の回路駆動ができている、という『DMP-Z1』ならではの電源回路構成からくる特別な動作モードなんです。お客様から「ノーマルゲインとハイゲインでは、どちらのモードの方が音が良いのか?」と質問されることがあるのですが、DMP-Z1はノーマルゲインの方が音質的に有利です。

ということは、『DMP-Z1』はハイインピーダンスなヘッドホンは推奨されないということですか?

佐藤(朝):そんなことはありません。そもそもノーマルゲインでも十分な出力を持っているので、大抵のヘッドホンを鳴らしきれますし、ハイインピーダンスヘッドホンの場合には、ドライバー効率が低くノイズ感度が低いので、ハイゲインにしてもらってもノイズが聞こえません。まずはお持ちのヘッドホンをノーマルゲインで試聴してもらい、音量が足りないと感じた場合にハイゲイン設定に変更する、という、お使いのヘッドホンの効率・感度特性に合わせてゲイン設定を変更してもらうという手順が、高音質な試聴をしてもらうためのポイントになると思います。

先ほど、『DMP-Z1』では2層構造の基板構成を採用しているというお話をしていただきましたが、それを格納するフレームにはどういった工夫があるのですか?

佐藤(朝):実は、『DMP-Z1』の開発当初は、幅の広い1枚の基板を平置きした構造を考えていました。ただ、それだとフットプリントが大きくなってしまい、持ち運びに向きません。また、シャーシの構造は、音にも大きな影響を及ぼします。

そこで、可搬性と剛性、音質をすべて実現するにはどうすれば良いのかを考え、今回、「H型アルミシャーシ」を新開発しました。アルミ削り出しによって強度を高めたH型のシャーシを2枚の基板で挟み、それを最短で直結することで、高剛性と高音質を両立させているのです。

佐藤(浩):細かい所では、脚部のビス穴が、4か所とも、どれも脚部の中央からずらして開けられています。これは、据え置き型オーディオ機器の世界では常識とも言えるテクニックです。製造上の手間は増えてしまうのですが、こうしたところにも手をかけています。

松崎:さらに脚部の内側に使っているゴム足についても、「ソルボセイン」という、医療やスポーツ向けシューズの靴底などに使われている素材を採用しました。しかもあえて2層構造にして、さらに滑り止めを重ねた3層構造で、振動が本体に伝わらないようにしています。

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長年の研究成果が結実した
アナログアンプへの語り尽くせぬこだわり

アンプについてもお話を聞かせてください。『DMP-Z1』には、ウォークマン開発チームの製品としては久しぶりとなるアナログアンプが搭載されていますが、これはどういった素性のものなのでしょうか?

佐藤(浩):これまで長らくデジタルアンプを採用してきた我々が、急にとってつけたようにアナログアンプを採用したかのように思われしまいそうですが、実は、もう5年以上前から、アナログアンプ+DACという組みあわせを研究し続けていました。

佐藤(朝):その研究は、2013年に発売した初代ハイレゾ対応ウォークマン『NW-ZX1』の開発と並行して行われており、「(アナログアンプで)音の臨場感を出そう」という目的から「臨場プロジェクト」と呼ばれていました。

松崎:今回、『DMP-Z1』で採用されたのは、「臨場プロジェクト」における8代目のプロダクト。これまで水面下でやってきたことをついに表に出すことができました。実は本機の基板には「R-∞」というプリントがされているのですが、これは臨場(Rinjyo)の∞→8番目という意味。お客さまにはまったく見えないところなのですが、基板設計の担当者に無理を言って入れてもらいました(笑)。

そのアナログアンプにはどういった特徴があるのでしょうか?

佐藤(浩):アナログアンプにはテキサス・インスツルメンツの「TPA6120A2」を採用しています。アナログアンプを検討していた時に、このほかにもディスクリートやマイナス電源を内蔵したアンプなど、いろいろな方式・デバイスのアンプの採用を検討しましたが、「TPA6120A2」は、バランス、アンバランスとも十分な性能を備えていたこと、長年検討して使い慣れていたこと、消費電力、そしてやはり聴き比べて音質の観点からもこのモデルにぴったりだったので、このICを選択しました。

その上で、セパレーション性能に優れるデジタルアンプの音質に迫るために、DACをデュアル構成にしています。ここで重要なのが、小型化も重視しているとはいえ、ある程度の大きさ、面積を使ってデュアル構成にすること。せっかくデュアル構成なのに、基板やセットを小さくしてしまうと、L/Rチャンネル間の距離が近くなってしまい、ステレオセパレーションが悪化してしまうのです。それでは本末転倒ですよね。

テキサス・インスツルメンツ社製アナログアンプIC「TPA6120A2」

旭化成エレクトロニクス製プレミアムDAC「AK4497EQ」

佐藤(朝):ウォークマンと同じようなセットサイズを想定した基板でアナログアンプを使うと、デジタルアンプの性能を超えられないんです。このサイズの製品だからこそ、アナログアンプを採用する意味があるということですね。したがって、ポータブルプレーヤーではデジタルアンプ「S-Master HX」が最良の選択肢であるという気持ちは揺らいでいません。自分たちで設計しておいてなんなのですが、ウォークマン『NW-WM1』シリーズを超える音質をあのサイズで実現するって、相当大変な事である事にいまさらですが気づいてしまいました(笑)。

松崎:また、使用しているDACについても、さまざまな製品を試し、旭化成エレクトロニクスの「AK4497EQ」に行き着きました。ハイエンドオーディオの世界ではとても評価が高く、良く知られた選択肢なのですが、濁りのない高音など、とても澄んだ音がするDACで、音作りの方向性が『DMP-Z1』とぴったり一致していました。

そのほかに、音質向上のためにこだわった点はありますか?

佐藤(浩):アンプ基板からヘッドホンジャックにつながる線材に、KIMBER KABLEを採用しています。しかも今回はオーバーヘッドバンドヘッドホン用の太いケーブルです。これによって、Signature Seriesのヘッドホン『MDR-Z1R』などで、アンプの根元から耳元まで、まったく同じケーブルでつながることになります。こういうことができるのも、プレーヤーからヘッドホンまでをやっているソニーならではの強みだと思っています。

佐藤(朝):『NW-WM1Z』を設計した時にも、この太いケーブルを使いたいって言っていましたよね。さすがにウォークマンにはそんな太いKIMBER KABLEは入らないでしょ、という事で、『NW-WM1Z』にはインイヤー用の細いKIMBER KABLEが使われています。

佐藤(浩):やっと夢がかなって太いKIMBER KABLEを内蔵ケーブルとして使う事ができましたよ(笑)。

佐藤(朝):そのほか、水晶発振器や、音質はんだなど、細かな所にも語り尽くせないほどのこだわりや工夫が込められています。

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オーディオマニアから
高い評価を受ける
アナログボリュームを
さらに改良して搭載

続いて『DMP-Z1』の外見上のアクセントにもなっている、大きなボリュームについて話を聞かせてください。ここにはどういったこだわりが込められているのでしょうか。

佐藤(朝):『DMP-Z1』の音質検討時、1つの大きな課題になっていたのが「ボリューム」です。 そもそもウォークマンのフルデジタルアンプを搭載している機種も同じ思想に基づいて設計されているのですが、デジタル処理段では極力音量を絞らず、アナログ信号になる直前で絞ることで、情報量を削ぐことなく、良い音をユーザーに届けるという設計思想があります。

フルデジタルアンプの場合にはアンプの最終段のパルスハイトボリュームという仕組みを使い、出力されるオーディオ信号の振幅を電圧変化させていますが、今回の『DMP-Z1』ではそれに代わるボリューム制御が必要になるので、使用するボリュームデバイスの性能は非常に重要でした。

通常ですと、最近は電子ボリュームを使うのですが、電子ボリュームをヘッドホンオーディオに適した低ノイズな性能で使いこなすには高い電源が必要だったりと、バッテリー駆動による高音質がコンセプトな『DMP-Z1』にそぐわないところがあります。さまざまな選択肢を検討した結果、この製品にはアナログボリュームが良いだろうという結論に達しました。

佐藤(浩):ボリュームは音声信号が直接通る部品ですから、その役割は大変重要なものとなります。今回、『DMP-Z1』のために、いくつものボリューム部品を比較試聴したのですが、ボリュームによってここまで音質に差が出るのかと、とても驚かされました。そうしてさまざまなアナログボリュームを試していく中で、選ばれたのが、オーディオマニアの間で名機と評されている、アルプス電気の「RK501」。その音質は、圧倒的なものでした。

佐藤(朝):もちろん、その存在は知っていたのですが、ご覧いただければ分かるように、かなりの大きさのあるものでしたから、まさか、これを採用することになるとは……(笑)。

佐藤(浩):アルプス電気に試作用のサンプル提供を依頼した時も、何でウォークマンの開発チームが「RK501」のような巨大なボリュームを使うのか、不思議に思われていたようですね(笑)。

『DMP-Z1』に搭載されているボリュームは、この「RK501」そのままなのでしょうか?

佐藤(朝):アルプス電気にご協力いただき、『DMP-Z1』用にカスタマイズしたものを搭載しています。まず試したのは、本体重量を軽量化するため、真鍮製のケースをアルミに置き換えたもの。理論上は音が変わらないはずだったんですが、実際に聴いてみると、音がとても軽くなってしまいました。

佐藤(浩):アルプス電気の担当者とも一緒に試聴比較しながら、どうしてボリュームのケース部分の材料が音質に変化を与えるのだろう、とボリュームの内部構造を一緒に見ながら頭を悩ませました。

佐藤(朝):ただ、音質の検討をしているといつもそうなのですが、やはり実際に試作をして聴いてみないと詰めきれないんですよね。そこで、量産性はあまり考えず、試作で良いので、とお願いをし、いくつものパターンを試してみました。アルミのケースに金メッキをしたり、アルマイト処理を施してみたり、一部を真鍮に戻したりと、高音質化の為のカスタマイズを幾つもの仕様で試行錯誤してみました……が、どうしても元の音を越えられない。
であればオリジナルにカスタマイズをした方が音が良くなるはず、と軽量化は諦めて最終的には、ケースの母材を真鍮に戻した上で、Signature Series第1弾『NW-WM1Z』で実績のある、銅メッキ+金メッキを施した試作を行ったところ、ついにオリジナルの「RK501」の音質を越えるカスタムボリュームを生み出すことができました。

佐藤(浩):アルプス電気の担当の方には「試作で良いから」と言って作ってもらったので、量産してもらえないのではないか?と思いましたが、一緒に音質を聴き比べしてもらい、やっぱり音が変わるんですね、とご理解をいただき、なんとか量産部品として立ち上げをしてもらう事ができました。このカスタマイズによって、オリジナルの「RK501」と比較して、高音域はさらにクリアに透明感をもったものになり、低音域は重心の低いものすごく重厚で迫力のある低音が再現できています。

最後に、この記事を読んでいる読者に向けて、皆様からメッセージをいただけますか?

田中:今回、「従来の据え置き機にも劣らない、最高のヘッドホンリスニング環境の提供」を目標に掲げて製品開発を行ってきました。そして、ここまででお話ししたように、エンジニアの熱意によってそれを達成する製品に仕上がったと自負しています。皆さんが愛用されているヘッドホンから、いままで聴いたことのないような音が引き出せるようになっていると思いますので、ソニーストアなどに試聴に来られる際は、ぜひ、お手持ちのヘッドホンをお持ち込みいただきたいですね。どれほどの音の違いが出るのかを体感していただけるとうれしいです。

また、新規開発された「DSEE HX」や「バイナルプロセッサー」、「DSDリマスタリングエンジン」など、ソニーが得意とする信号処理技術もふんだんに盛りこまれています。こうした機能も合わせ、長く楽しんでいただける製品です。

佐藤(朝):『DMP-Z1』は、一見すると据え置き機っぽい見た目なのですが、作ったのはウォークマンチームです。これまでフルデジタルアンプを推してきたウォークマンチームが、アナログアンプでどういう音を追求したのか、興味を持っているお客さまは多いことと思います。

世間では、アナログアンプは、暖かい、ソフトな音質、などと言われる場合もありますが、そうした特性は電源回路やオーディオ回路の設計に大きく依存します。実は、アナログアンプの電源をしっかり作ると、暖かい、ソフトな音にはならないんです。アナログアンプで音がソフトに聴こえるのは、電源が貧弱でアナログアンプに電力供給が十分にできていない事が要因のひとつか、あえてそういう音質設計をしているからだと思われます。我々はアナログアンプだったとしても、「S-Master HX」と同じように、細かい音はすべて聴かせ、そこにデジタルアンプでは難しい、大出力による迫力などを加えたいと考えました。今回、それを実現できたことで、製品の“格”をひとつあげることができたんじゃないかと思っています。

松崎:私がウォークマンチームに加わってから、長らく積み上げてきた技術とノウハウを、すべてこのモデルに投入しました。自分の持てる力をすべて出し切ったと断言できます。ぜひ、愛用のヘッドホンで、お気に入りの楽曲を改めて聴き直してみてください。『DMP-Z1』に音質のポテンシャルが高いヘッドホンをつないで聴いてもらうと分かり易いですが、横方向への広い音場の再現だけでなく、上下方向の高さだったり、頭内の前後方向にも立体感が感じられる、というこれまでのヘッドホンリスニングでは感じた事がなかったくらいに立体感のある音の表現が実現できていると思います。必ずや、新しい発見があるはずです。

佐藤(浩):この30年、新製品が出るたびに試しているCDがあるんですが、確かに今回、新しい発見がありましたね。実はこの製品は、ハイレゾはもちろんのこと、音楽CDの音をきちんと引き出せることも大事にしています。『DMP-Z1』は、長年のマスタリング技術の向上などによって、仕様以上のものが詰め込めるようになっている音楽CDを、今、一番すごい音で聴けるポータブルなプレーヤー。繰り返しになりますが、ぜひ、店頭でその音を体験してみていただきたいです。

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デジタルミュージックプレーヤー Signature Series Product Video DMP-Z1


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